愛情あふれる素晴らしい「コピー」
Title:TWISTIN' THE NIGHT AWAY
Musician:トータス松本
60年代のソウルミュージックのスターとして、数多くのヒットを出し、その後のミュージシャンたちに多大な影響を与えたシンガー、サム・クック。彼に憧れ、影響を受けたシンガーは数多くいますが、ここにも、ひとり、サム・クックを尊敬するシンガーが。トータス松本。今回のアルバムは、サム・クックが1962年にリリースしたアルバムを、そのまままるごとカバーした作品になっています。
もともと、このアルバムをリリースしようとしたきっかけは、このアルバムが、CD化されておらず、現状、気軽に聴ける状況ではない、ということを知ったから、だそうです。これだけの名盤を埋もらせておくのは惜しすぎる。CD化されていないのなら、自分がそのアルバムをカバーして、このアルバムの素晴らしさを世の中に紹介したい、ということだからだそうです。
そのため、このアルバム、カバーアルバムというよりも完全にコピー。歌い方もサム・クックそのままなら、アレンジもそのまま。なんでも、サム・クックを詳しくしらないバンドメンバーに勉強会までひらいたり、さらにミックス・ダウンは、わざわざサム・クックと同様、ロサンゼルスで行ったとか。さらにレコードノイズまで入っているこだわりよう。
細かいこだわりは音楽だけじゃなく、ジャケットにもあらわれています。↓こちらが、もともとのサム・クックのジャケットなのですが
みての通り、そのまんま(笑)。ボーズは指の先まで完全に再現しています。
ただ、唯一の違うのは、オリジナルのジャケットではビクターのおなじみニッパー犬が蓄音機を覗き込んでいるロゴが入っているのですが(上は復刻版なので、入っていませんが・・・)、さすがにビクターのロゴは使えなく、代わりに、猫がパソコンを覗き込んでいるイラストが入っています(笑)。
このサム・クックの「TWISTIN' THE NIGHT AWAY」ですが、トータス松本が企画制作した段階では、確かにCDで入手できませんでした。しかし、このアルバムが発売した直後にオリジナルのCDでのリイシューが決定。この企画の当初の目的が、オリジナルの復刻という形で実現してしまいました(^^;;
ただ、だからといってこのアルバムの価値がなくなった、という訳ではありません。むしろ、誰でも気軽にオリジナルとトータス松本盤の聴き比べが出来るようになったのが大きなポイント。聴き比べてみると、あらためて細かい部分までのこだわりを感じられる一方で、それでも色濃く残る、トータス松本らしさを発見することが出来ます。
特にトータス松本は、このアルバムでは、いつもの彼と違って、こぶしは抑え目。サム・クックの節回しを忠実に再現しています。それでも、ところどころに感じられるトータス松本らしい、サム・クックとはちょっと違う節回しがユニーク。さらっと甘く歌うサム・クックに比べて、よりソウルフルなトータス松本といった感じがまた、いくらコピーしてもにじみでてくるトータス松本の個性を強く感じます。
オリジナルが文句なしの名盤なだけに、トータス松本盤も悪いわけがありません。忠実なカバーに、トータス松本のサム・クックに対する愛情を存分に感じるアルバムです。あ、もちろん、このアルバムを買う時は、オリジナルもご一緒に(オリジナルのCD化は、限定生産みたいなので、お早めに・・・)。
評価:★★★★★
トータス松本 過去の作品
FIRST
マイウェイ ハイウェイ
ほかに聴いたアルバム
ロックンロール・ラブレター/ザ50回転ズ
「ロックンロール・マジック」「ロックンロール・世界旅行」に続くロックンロールシリーズ第3弾にして完結編。今回は、タイトル通りの「ラブソング」にこだわったミニアルバム。どれもストレートなラブソングなのですが、曲自体も歌詞の雰囲気にあわせて、青春パンク風からサーフ・ロックの雰囲気が入った曲やハードロックなど、あくまでもロックをベースとしながら雑多な雰囲気。相変わらずアルバム全体を貫かれている、いい意味でもB級っぽさが、彼ららしくていいなぁ。
評価:★★★★
ザ50回転ズ 過去の作品
50回転ズのビックリ!!
ロックンロール世界旅行
SEBULBA/踊ってばかりの国
「世界が見たい」を先に紹介しちゃったのですが、アルバムとしては、こちらの方が先・・・って、「世界が見たい」よりこちらの方がいいじゃないですか!独特の浮遊感と、ちょっと怖かったり、皮肉めいた歌詞という彼らの個性はしっかりとこの段階で確立されています。さらに、メロがポップなために、妙な人なつっこさがあって、でも、よくよく聴くと、非常に個性的な音を出していたり・・・で、ついついはまってしまいます。個人的に、いままで聴いた彼らのアルバムの中ではベスト。次回作もこれくらいの傑作を期待したいところです。
評価:★★★★★
踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2012年」カテゴリの記事
- 私たちの身に染み付いたサウンド(2013.02.12)
- まだまだ現役!(2012.12.27)
- 素朴な曲が心に響く(2013.01.04)
- 懐かしい名前の復帰作(2013.01.05)
- 沖縄発世界一周?(2012.12.20)
コメント