ふるさとへの思い
Title:わが美しき故郷よ
Musician:畠山美由紀
東日本大震災から、早くも1年以上の時間が流れました。今なお、行方不明者が多数残っている状況であり、また、多くの方が避難生活を余儀なくされています。また、原発事故の影響はいまなお続いており、復興作業は、まだまだ中途の状況であるというニュースが流されています。
この1年間、数多くのミュージシャンたちが、東日本大震災に向けての曲をつくってきました。そんな中、このアルバムはもっとも心に響いたアルバムかもしれません。畠山美由紀。宮城県気仙沼市出身。彼女自身も、地震の後、両親と1週間以上連絡が取れなかったそうです。タイトル通り、そんな彼女が、震災と向き合い、美しい故郷を思いながら歌ったこの曲。どんな曲よりもストレートに胸に響いてきます。
しかし、震災に向き合った曲なのですが、このアルバムで歌われているのは、決して人々の絆とか、未来への希望とか、あるいは原発事故や政府の対応への怒りだとか、そういうことではありません。ただ、淡々と、故郷気仙沼の美しい風景や思いを曲に込め、歌い上げています。そこにあるのは、津波の被害を受け、変わり果ててしまった美しいふるさとに対する限りない愛情。それだけに、より心に染みるものがあります。
特に「わが美しき故郷よ」では、ふるさとへの思いを、具体的な地名をまじえながら朗読しています。おそらく、地元の方なら、彼女の詞を聴いて、情景が思い浮かぶのではないでしょうか。思いいれ一杯で読まれる詞には、気仙沼という地を知らない私でも、その情景が思い浮かぶようで、涙が出てきました。
このアルバムには、オリジナル曲の他に、「What A Wonderful World」や「Over The Rainbow」などのスタンダードナンバーのカバーが多く収録されています。インタビューによると、実際に被災地に訪れた時、まず歌ったのは、自分の持ち歌ではなく、誰もが知っているような曲をみんなで歌ったそうです。今回多く収録されたカバー曲は、そういう被災地での体験が反映された選曲なのでしょうか?まとても優しく歌われたこれらの楽曲からは、彼女の被災地への思いが、痛いほど伝わってきます。多くの方に歌い継がれたスタンダードナンバーだからこそ、そこにボーカリストとして多くの思いを載せることが出来たのでしょうか?
震災に向き合ったとはいえ、ダイレクトに震災を歌ったというよりも、故郷への愛情を歌った曲が多く収録されています。それだけに、震災直後の今だから、ではなく、今後長く、私たちの心を捉えそうなアルバムだったと思います。ただ、今だからこそ聴いて欲しいとも言えるアルバムです。
評価:★★★★★
畠山美由紀 過去の作品
わたしのうた(畠山美由紀withASA-CHANG&ブルーハッツ)
ほかに聴いたアルバム
The Beginning/絢香
2009年の紅白を最後に活動を休止し、昨年末の紅白で復帰した絢香の3年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。うーん、正直いっていまひとつ。以前に感じた勢いがなくなっちゃったなぁ。もともと絢香は、「ポップスシンガー」で、ロックも歌えばポップスも歌う、いまひとつ主軸がはっきりしない部分がありました。勢いがある時は、それが曲の幅としてプラスになっていたのですが、今回のアルバムでは、いまひとつ、そのために彼女の顔が見えてこなかったような感じが。
評価:★★★
絢香 過去の作品
Sing to the Sky
ayaka's History 2006-2009
ACIDMAN THE BEST 2002-2012/ACIDMAN
今年でメジャーデビュー10周年を迎える彼らの初となるオールタイムベスト。デビュー時はカッコいいと思っていたのですが、最近はあまりピンと来ないな・・・と、彼らのことは思っていたのですが、あらためて聴くと、やはりデビュー直後の作品は、今聴いても、重厚なサウンドにゾクゾクっと来るカッコよさがあります。ただ、一方で、ただでさえ仰々しいアレンジに、ボーカルも感情たっぷりに歌い上げ、さらに似たようなタイプの曲も多いため、聴きすすめていくうちに飽きが・・・。おそらく、1曲1曲別々に聴けば、それなりに楽しめると思うのですが、あまりのトゥーマッチさに、胸焼けしそう。
評価:★★★★
ACIDMAN 過去の作品
LIFE
A beautiful greed
ALMA
Second line&Acoustic collection
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