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2012年4月29日 (日)

戦前のジャズの名曲たち

戦前の日本のジャズを復刻する企画「ニッポン・モダンタイムス」。最初は、いろいろな曲が入っているオムニバスを聴き、興味を持った二村定一を聴いたら、予想以上によかったので、他のアルバムも一気に聴いてみました。で、その感想を一気に・・・。

Title:Empire Of Jazz
Musician:ディック・ミネ

「ディック・ミネ」という名前自体は、私も聞いたことがあるのですが、曲を聴くのはこれがはじめて。二村定一の「青空」は、彼も歌っているのですが、歌の中にフェイクを入れてきたりして、技術的な高さを感じます。この曲に限らず、歌い方によりスウィング感を感じ、歌手としての実力を存分に感じます。それ以上に、色っぽいボーカルが魅力的で、当時の人気の高さは、今聴いても納得。後半は、当時としてはバタ臭かったのかもしれませんが、今聴くと、ムード歌謡曲色が強くて、ちょっと楽しめなかった部分もありましたが・・・。

評価:★★★★

Title:ジャズを歌う
Musician:藤山一郎

藤山一郎といえば、国民栄誉賞も受賞した、昭和を代表する歌手・・・なのですが、もちろん、歌はほとんど聴いたことなく。ただ、イメージ的には、直立不動できれいなアクセントで歌う正統派歌手という印象。ある意味、現在の歌が下手な「アイドル歌手」の対極にいる正統派歌手として、「昔の歌手は・・・」的な流れで語られるケースもありますが、ただ、他の歌手と比べても、彼の歌い方というのは、飛び抜けて「堅い」歌い方をしています。

ただ、そんな彼が歌ったジャズをメインとしたこのアルバムは、ともすればお堅いイメージからほど遠い、軽快な曲が多く、ヘレン隅田という女性シンガーとのデゥオ「公園で」では、男女の会話を軽快に歌にした、楽しいポップソング、「僕の失恋」は、タイトル通り、女の子を好きになってはふとしたきっかけで失恋する悲しくもユーモラスな、ノヴェルティソング風の曲で、どちらもとても身近に感じられるポップソングです。

あと、ちょっと興味深いのが、「ミッキイ・マウスの結婚」という曲が!まぎれもなく、あのディズニーの人気キャラクター、ミッキー・マウスを題材にした曲で、1934年の作品だとか。Wikipediaによると、戦前から「都市部ではかなり知名度が高かったと思われる」と記載されており、ディズニーというと、戦後、日本に入ってきたようなイメージがあっただけに、ちょっとビックリでした。

評価:★★★★

Title:La Tanguista
Musician:松島詩子

彼女も戦前から戦後を代表する歌手で、一番初期の紅白歌合戦には何度も出場していた人気歌手だったそうですが、すいません、名前も歌も、今回はじめて聴きました(^^;;タンゴの色合いが強い、ムーディーな曲がメイン。確かに、当時では洋楽色が強い曲だったのですが、今の耳からすると、ちょっとムード歌謡曲色が強かったかなぁ。これはこれで、違う魅力はあるのでしょうが、個人的には、いまひとつピンと来ず・・・。

評価:★★★

Title:唄の世の中~岸井明ジャズ・ソングス
Musician:岸井明

個人的に、この4枚の中で、一番良かったのが、彼。戦前から戦後にかけて活躍した、巨漢のコメディアンで歌手だった岸井明。名前も歌も今回はじめて聴いたのですが、軽快なジャズ風のサウンドにのせて歌い上げるのは、ノヴェルティ・ソングの色合いが多いユーモアたっぷりのポップス。いわゆす庶民の生活を本音ベースでユーモラスに描いた歌詞が特徴的でした。

自分は一家の主だと息巻きながらも、実際には奥さんに頭のあがらない亭主を歌う「家になんか帰るかい」、恋人同士のささいな喧嘩を描く「ほんとに困りもの」などなどのユニークな曲。戦前の歌詞なのですが、そこで歌われている男女の関係は、今でも通用しそうな話。戦前でも、なんだかんだいっても恋人や夫婦って、あまり今と変っていないんだなぁ、ということを感じます。

後半には、いわゆる戦時歌謡も収録されていますが、「代用品時代」など、ウィットに富んだ皮肉をきかせる歌詞がとてもユーモラスで、時代は変れど、暗い時代の戦時歌謡曲なのに、聴いていて楽しくなる感じがします。

コミカルで親しみやすい彼のボーカルも楽曲にとても生かされていて、軽快なポップソングを最後まで楽しめたアルバムでした。ノヴェルティ・ソングって、特に日本では、評価が非常に低いのですが、時代を超えて聴くと、ある意味庶民の本音が描かれていて、その時代の空気を如実に反映している印象を受けました。そして、そのどれも、ともすれば暗い時代の描かれがちな戦前も、多くの日本人は楽しく、明るく、その日々の生活を送っていたんだなぁ、ということを実感できました。こういう発見もまた、昔の曲を聴く楽しみのひとつなんでしょうね~。

評価:★★★★★

ニッポン・スウィングタイム
Swing Time 1928-1941
SWING GIRLS 1935-1940
Sweet Voices~ニッポンのスウィング・エラ~KING&TAIHEI collection 1934-1942

私の青空~二村定一ジャズ・ソングス

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