震災の影響も感じつつ
Title:UTOPIA
Musician:カーネーション
東日本大震災の後、数多くのミュージシャンたちが、直接的、あるいは間接的に、震災の影響を受けた歌をつくってきました。CARNATIONの7曲入りとなるミニアルバムからも、震災の影響を強く感じる作品になっていました。
このアルバムのハイライトとなるのが、なんといっても「女川」。タイトルそのまま、宮城の地名なのですが、タイトル通り、石巻や女川の浜辺を思い起こしながら即興演奏した曲だそうで、とても悲愴感に充ちたサックスの音色が胸を打つ名曲。言葉はなくても、震災の悲しみがストレートに表現された楽曲になっています。
その他の曲に関しても、決してストレートに震災について歌ったわけではありません。ただ、例えばタイトル曲「UTOPIA」にしても
「いつか胸の奥にしまい込んだ痛み
だれにも明かせなかったひとつの悲しみ」
「だれにも会えなくなったある日の夕暮れ」
(「UTOPIA」より 歌詞 直枝政広)
といった歌詞が、震災の影を感じさせます。
また、タイトルそのもの「Electric Company」は、タイトルがあまりにストレートなのですが、
「だれも住まぬ街へ」
「床屋の前の庭で
遊んじゃだめと言われた」
(「Electric Company」より 歌詞 直枝政広)
といった歌詞は、福島の原発事故を彷彿とさせる、よくよく聴くと、皮肉めいた内容になっています。
そんな最新作ですが、「女川」をのぞけば、メロディーとアレンジは、いつもの彼ららしい、決して派手ではないものの、しっかりとした骨太なサウンドと、ポップなメロディーラインが楽しめる曲ばかり。山本精一や梅津和時ら、豪華なゲストも話題になっていますが、山本精一が参加した「Turn」では、聴かせるバラードナンバーがらも、幻想的なバイオリンの音色が印象的な楽曲になっています。
いい意味でベテランらしい安定感がある、しっかりと聴かせる傑作でした。
評価:★★★★★
カーネーション 過去の作品
Velvet Velvet
ほかに聴いたアルバム
いい星じゃんか!/TOMOVSKY
TOMOVSKYの新作は、いい意味でいつも通り。様々な音を取り込んだ軽快なポップソングで、皮肉めいた歌詞が大きな特徴。例えば「無い!」では、「素顔のままがいいというけど、俺は無理。隠すぞ」と歌ったり、ちょっと斜めから世の中を見たようなユニークな視点が楽しい・・・と思うのですが、前作に続き、そんな一度で覚えてしまうようなインパクトのある歌詞の曲が少なめだったような。昔は、ほぼ全曲、インパクトありまくりで、一度聴いたら忘れられないような曲が並んでいたのですが・・・うーん。
評価:★★★★
言いたいことはなくなった/The Mirraz
全体的にポップなメロのラブソングが多かった今回の作品。ただ・・・正直言って、全体的に平凡でいまひとつ。確かにポップなメロディーはそれなりにインパクトはあるものの、どうも薄味で後に残らず。歌詞も、いままで強いインパクトを残す単語をちりばめてきたのに、本作に関しては、それもほとんどありません。なんとなくスランプ気味にすら感じさせる作品。タイトルは、まさか今の彼らの状況のことじゃ・・・。
評価:★★★
The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
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