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2012年3月15日 (木)

超ベテランバンドのラスト

Title:Ciao!
Musician:ムーンライダーズ

昨年いっぱいで、無期限の活動休止に入ったムーンライダーズの、現時点でのラストアルバム。1975年の結成以来、コンスタントに活動を続けてきた、超ベテランバンドの突然の活動休止には、多くの音楽ファンが驚かされました。

・・・・・・とはいっても、実はムーンライダーズのアルバムは、名盤と誉れ高い、あの「火の玉ボーイズ」しか聴いたことなかったりして(^^;;リアルタイムで聴くのはこれがはじめて。鈴木慶一のソロは聴いていましたし、ムーンライダーズのステージは、2度ほど見たことあるのですが・・・。

これがはじめてのムーンライダーズになってしまったのは、漠然としたイメージなのですが、良質なポップスを書くものの、全体として地味な、通向けのベテランバンドというイメージがあったから。ただ、そのイメージは、このアルバムで打ち砕かれました。

バンドサウンドをベースに、ホーンなど様々な音を取り混ぜてにぎやかな「who's gonna be reborn first?」や、メロは人なつっこいものの、ヴォコーダーを使ったボーカルがユニークな「ハローマーニャ小母さん」、サイケちっくな「折れた矢」、妖艶なストリングスのメロも含めて、ちょっと怪しげなハードロックテイストの「弱気な不良 Part-2」など、バラエティー豊かで、かつ、実にアグレッシヴ。ベテランならではの安定感が、良くも悪くも作用している部分はあるものの、マンネリとは無縁の現役感がしっかりとあふれだしていました。

で、一応のラストアルバム、ながらもそこに悲愴感みたいなものは皆無。また、ラストアルバムにありがちな、妙な気負いだったり、逆に、バンドの内部がバラバラ、といった感じもなく、他のアルバムを聴いていないのでなんともいえないのですが、「いつも通り」といった印象を、はじめて聴いた私でも受けるアルバムだったと思います。

また、最後も、壮大に聴かせる「ラスト・ファンファーレ」という、いかにもなナンバーで締めくくり・・・と思わせておいて、ラストは、軽快で楽しいギターロックナンバー「蒸気でできたプレイグランド劇場で」で終わるというのもいい感じ。ただ、

「この劇場 取り壊されて
どこかに 移転することはないです」

「このステージは
終わるんだ これで」

(「蒸気でできたプレイグランド劇場で」より 作詞 鈴木慶一)

という最後の締めくくりの歌詞は、無期限の「活動休止」とはいえ、これでムーンライダーズがおしまい、といっているような感じもあり、寂しい感が強く残ります・・・。

ともかく。一応のラストアルバムとはいえ、「終わった」感はほとんどなく、はじめて聴いた私でも十分に魅力を味わえるアルバムでした。30年以上続けたバンドを、なぜいまさら活動休止とするのか、その理由は不明ですが、残念な限り。これを機に、過去のアルバムも聴いてみようかなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

SONGBOOK/アンジェラ・アキ

NHKで放送中の「アンジェラ・アキのSONG BOOK in English」。洋楽の有名曲の歌詞を翻訳し、かつ、自分たちの言葉で日本語カバーをする、という番組だそうです。この番組の中で、彼女が披露した曲6曲と、これまでにカバーした洋楽の日本語カバーを収録したカバーアルバムです。

誰もが一度は聴いたことあるような有名曲を、日本語でカバーしていますが、歌詞は、彼女の解釈による意訳。で、意訳は決して悪くはないのですが・・・なんとなく、元の曲のリズムに乗っていないような印象が。オリジナルのイメージが強いためかもしれないのですが、歌詞のイメージにひっぱられすぎていて、それを曲に乗せるという面が、後手にまわってしまっているような印象を受けてしまいます。

彼女の歌自体もしっかりと聴かせてくれますが、良くも悪くも万人が聴いて楽しめるような感じ。歌の上手さには文句ないのですが、癖のないカバーは、こちらも良くも悪くもNHK向きといった感じ。アルバム自体は楽しめたのですが、特に新しい発見というのもなく、楽しめたのも、彼女のカバーだから、というよりも、オリジナルがもともと持っていた魅力による点が強いような・・・。

洋楽の有名曲を日本語でカバーというスタンスは非常におもしろく感じたのですが、正直それだけで終わってしまっていたような感じがします。そういう意味では、NHKの番組のサントラ的な役割を出なかったなぁ。個人的には、歌詞だけではなく、曲自体にも、彼女なりの解釈が欲しかったのですが。

評価:★★★

アンジェラ・アキ 過去の作品
ANSWER
LIFE
WHITE

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