カバー曲に要注目!
Title:おるたな
Musician:スピッツ
スピッツの今回のニューアルバムは「花鳥風月」「色色衣」に続く、いわゆる「B面ベスト」。シングルのカップリング曲や、カバー曲を中心に、いままでのアルバムに収録されなかった曲をまとめたアルバムになっています。
アルバムにはいらなかったカップリング曲・・・とはいえ、楽曲の出来は、アルバム収録曲どころか、シングルに比べても遜色ありません。「三日月ロック その3」のような、王道のオルタナ系ギターロックから、「らくがき王国」のような、ハードロック、郷愁感あふれる「夕焼け」、アコーディオンの音が、哀愁を誘う「テクテク」など、バリエーションは豊富。ただ、そんな曲は、どれもスピッツらしい美メロが流れていて、草野正宗が歌うと、しっかりとスピッツの曲になっちゃうのはさすが。カップリングとはいえども、どの曲もはずれなしなのはさすがです。
一方、このアルバムで注目なのは、やはりカバー曲でしょう。今回のアルバムでは、既発表と、このアルバムのためのカバーを含め、6曲のカバーが収録されています。その中で、初恋の嵐の「初恋に捧ぐ」は、「これ、もともとスピッツの曲だったのでは?」と思うほど、ある意味、このアルバムの中で、一番王道のスピッツといった感じの曲調(笑)。花*花の「さよなら大好きな人」もそうでしたが、このアルバムのためにカバーされた2曲は、いずれも、他の人の曲なのに、非常にスピッツらしい曲を選んでカバーしていました。
逆に、草野正宗が歌っても、全く原作者の色が消えなかったのは、奥田民生の「さすらい」。もともと、奥田民生のトリビュートアルバムでカバーした曲を収録したのですが、草野正宗が歌っても、頭の中で奥田民生の声が流れてくるほど。これほど個性の強いミュージシャンも珍しいよなぁ・・・。
そんな訳で、カバーもオリジナルも、様々な曲が楽しめるアルバムで、スピッツのシングルまですべて網羅、という熱狂的なファン以外にとっては、これが新作のオリジナルアルバムのように楽しめる作品だと思います。いい意味で、カップリング曲まで含めて、スピッツの曲って、高水準で安定しているよなぁ。オリジナルじゃないから、と聴いていないのなら、もったいないですよ~。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
SPECIAL OTHERS/SPECIAL OTHERS
スペアザの新作は、他のミュージシャンとのコラボレート作品をまとめた企画盤的ミニアルバム。セルフタイトルのアルバムを、こういう企画盤にするのかぁ・・・とちょっと意外に思ったのですが、SPECIAL OTHERSという名前は、要するに「特別な他人」。そういう意味では、このタイトルをつけるのにこれほどピッタリの作品はない、ということでしょう。
Dragon Ashのkjや、MONGOL 800のキヨサクなどが参加している楽曲は、それぞれのシンガーの個性を生かしつつ、SPECIAL OTHERSの色もいれつつ、折衷的な内容になっています。そんな中でおもしろかったのが、マレウレウという、女性グループ。アイヌの伝統的な歌の再生と継承をテーマに活動している女性ミュージシャンらしいのですが、民謡的な伸びやかで静かなボーカルと、SPECIAL OTHERSの演奏のマッチが絶妙で、独特の作品に仕上がっていました。
なかなかおもしろい企画なのですが、ギターロック系のボーカリストに関して、特に独特の面白みもなく、いまひとつに感じたのがちょっと残念・・・。ただ、いろいろなタイプのシンガーが参加していておもしろいですね。この企画、第2弾、第3弾も期待しています!
評価:★★★★
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