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2012年3月 1日 (木)

良質な短編映画のような1枚

Title:undun
Musician:THE ROOTS

HIP HOPユニットTHE ROOTSの今回の作品は、レッドフォード・スティーブンスという、生粋の悪ではないものの、犯罪に走ってしまった男の、わずか27年の生涯を描いた、コンセプチャルな作品。最初に流れるインストナンバー「DUN」から、彼の心臓がとまる音を模しており、コンセプチュアルなアルバムの内容をより印象づけています。

そんなコンセプチュアルなアルバムですが、アルバムは全編通じて40分という、HIP HOPのアルバムとしては非常に短く、くり返し聴きやすい内容になっています。リリックも、これでもか、というほど詰め込んだ感じではなく、比較的にシンプルに、彼の生涯が描かれているのが印象的。ただ、シンプルながらも、しっかりとブラック・コミュニティーの現実が描かれ(・・・って偉そうに書いていますが、事実はもちろん知らないわけで、もちろん、印象論ね。)、かつ、彼自信の心境も綴られた印象深いものになっています。

そして、わずか40分という短い内容ながらも、バラエティーあるトラックも、とても印象に残ります。ミニマル風のピアノが印象的な「One Time」や、ヘヴィーなドラムスやギターの音が迫力のある「Stomp」など、生音らしい、迫力のある演奏をベースに、曲ごとに、いろいろなアイディアを感じられます。

ただ、全体的には、メロディーを聴かせるナンバーが多く、それもどの曲もどこか悲しげなのが印象に残りました。それは、厳しい現実の中を生きるしかなかったレッドフォード・スティーブンスの哀しい心境が物語られているよう。そして、終盤「Redford」から先は、インストの曲が続き、アルバムは終わります。これもおもしろいのは、最初、ピアノとストリングスで優しいフレーズを奏でながらも、「Will To Power」で、それを壊すようなドラムの音が入り、ピアノも狂乱的に、そして最後は静かに終わるという、レッドフォードの生涯をなぞったのでしょうか?そうだとすれば、最後、不協和音で終わるというのは、あきらかに彼の「死」を象徴しているんでしょうね。

このアルバムの感想を読んでいると、「一編の短編映画のよう」という感想が多く見受けられましたが、バラエティーある展開に、凝った構成、そしてどこかしんみりとする物語の内容は、確かに、良質な映画を見ているようにも感じました。40分という短さもあり、また、音楽的にも凝っていることから、歌詞がダイレクトにわからない私たちでも、くり返し聴けて楽しめる作品。お勧めです。

評価:★★★★★

THE ROOTS 過去の作品
WAKE UP!(John Legend&The Roots)

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