シンプルなだけに奥が深い
Title:うたびこ
Musician:青葉市子
若干22歳。現在、一部で大きな話題となっている、女性シンガーソングライター青葉市子。以前から名前は知っていたのですが、今回、はじめて音源を聴いてみました。
演奏は、クラッシックギター1本のみ。それに彼女の歌が重なるだけ、という非常にシンプルなもの。ただ、クラシックギターの演奏は、アルペジオがメインながらも、とても複雑なメロを奏でていて、シンプルながらも、音の世界の広がりを感じます。今回、「裸足の庭」というインストナンバーもありましたが、決して派手さなく、高度なテクニックをみせつけるという感じではないものの、その演奏にはグイグイと惹かれるものがあります。
一方のメロディーもとてもシンプル。淡々としたメロを、彼女の美しくも細いボーカルで歌われると、ギターの奏でるメロと一緒に溶けてしまいそうなそんな印象があります。こちらも、美メロというようなポップスではないものの、決して複雑でも難解でもない、シンプルなメロが大きな魅力に感じました。
そして、一番印象に残ったのが歌詞の世界。ラブソングでは、時としてエロティシズムな内容をさらりと歌い上げ、あまり歌詞では取り上げないような言葉も、さらっとその世界の中に加えてしまうバランス感覚もとてもユニーク。さらに、若干22歳とは思えないような、独特の視点からの歌詞も印象に残ります。例えば、「奇跡はいつでも」の
「失うものは さよならの代わりに
あなたの好きな 世界を連れてくる
そうだとしたら 素敵な事でしょう」
(「奇跡はいつでも」より 作詞 青葉市子)
という歌詞は、とても印象に残りました。
メロ、歌詞、アレンジ、いずれも強いインパクトのある歌手ではありませんし、決して「売れ筋」の音を出しているわけでもありません。かといって、難解で、マニア向けかといわれると、それも違います。非常にシンプルな楽曲は、わかりやすそうでもあれば、実は複雑で奥が深い。一度聴くだけでは、なかなか味わえないものの、2度3度聴くうちにはまっていってしまう、それが彼女なのではないでしょうか。
広い層に薦められるシンガーだとは思うのですが、とっかかりは正直、あまり良くないかも。とにかく、2度3度聴いて、ゆっくり味わいたいなぁ・・・そう感じる傑作でした。
評価:★★★★★
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