東京に近からず 遠からず
Title:SAITAMA LOCAL MUSIC RECONSTRUCTION
音楽配信サイトOTOTOYでリリースされる、ある都市のインディーズシーンをテーマにまとめた「OTOTOYローカル・コンピレーション・シリーズ」の第3弾は埼玉。今回は、埼玉のインディーシーンで活躍するミュージシャンたち27組の楽曲を収録したコンピレーションアルバムが4月16日まで無料で配信される、ということでさっそくダウンロードして聴いてみました。
いままで、このシリーズは京都、名古屋と続き、また、それとは別に、東京を中心に活躍するミュージシャンたちの楽曲をまとめた「TOKYO NEW WAVE 2010」というを聴いたりしたのですが、それに加えて今回のアルバムを聴いて感じたのは、狭い日本なのに、街によって、それぞれ個性があるんだなぁ、ということでした。
東京は、さすが時代の先端を行くような意気込みのあるミュージシャンが目立ちましたし、京都はほんわかとした中に、時代に流されない空気を感じます。また、名古屋は無難な優等生バンドが多く感じました。
そして埼玉のバンドは、ある種、東京に近いものを感じます。独特の音を作り出し、時代の先端を行こうとする意気込みを感じます。ただ、その一方で、どこか垢抜けなさというか、突き抜けなさを感じてしまいます。東京に近いけど、東京になりきれない・・・そんな雰囲気を感じてしまいました。
そんな中、様々なバリエーションのある個性豊かなミュージシャンが並んでいるのですが、特におもしろかったのはHIP HOPやエレクトロミュージシャンが並んだ前半。特におもしろかったのは、k-overというラッパーによる「ネガポジション[改]」で、独特なラップはどこか80年代あたりのインディーズシーンを彷彿とさせるような感じでユーモラスがあり、それにからむエレクトロのトラックもユニーク。非常に印象に残りました。
他には語りからスタートし、その後はミニマル風なサウンドとパーカッションのリズムが独特のEMDEE1の「INFERNO」も次々と展開していくサウンドがユニークで耳が離せませんでした。そんな中、このコンピの目玉なのが、中盤の突然段ボール!1970年代から活躍する、日本のアングラシーンを代表するミュージシャンなのですが、若手主体のコンピの中でも、強烈な個性を放つ音で、独特な異彩を放っています。どこかサイケな雰囲気で、聴いているだけで妙な感覚に陥るような音の世界。このコンピの中でも圧倒でした。
一方、後半はギターロックバンドが続くのですが、正直言うと、ちょっといまひとつ。曲によっては、「おっ!」と思う瞬間はあるのですが、全体的に目新しさが薄く、勢いはありません。音楽シーン全体として、ギターロックバンドに勢いがなく、HIP HOP系の勢いが続いていますが、そんなシーン全体の流れを、そのまま反映したようなコンピになっていたような印象があります。
そんな訳で、尖ったミュージシャンも少なくない中、東京ほど突き抜けられなく、どこか垢抜けないのが、マイナスといえばマイナスだし、逆にそれが大きな魅力とも思えなくもないのがこのコンピ盤。突然段ボールとk-overは、もうちょっといろいろな曲を聴いてみたいかな。ただ、その他は、良い曲も少なくなかったけど、アルバム単位まで聴きたい、と思えるミュージシャンは少なかったかも。その街の空気がわかるユニークな企画。これからも、続けてほしいなぁ。
ちなみにダウンロードはこちらから。4月16日までだそうですので、お早めに。
評価:★★★★
OTOTOYローカル・コンピレーション・シリーズ 過去の作品
All Along Kyoto(京都タワーからずっと)
IN THE CITY THERE IS A NAGOYA MUSIC
Next Music From Tokyo
TOKYO NEW WAVE 2010
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