ボーダーライン
ケツメイシが、4枚組みからなるベスト盤をリリースしました。
Title:ケツの嵐~春BEST~
Musician:ケツメイシ
Title:ケツの嵐~夏BEST~
Musician:ケツメイシ
Title:ケツの嵐~秋BEST
Musician:ケツメイシ
Title:ケツの嵐~冬BEST
Musician:ケツメイシ
シングル30曲に、アルバムなどからの人気曲22曲を加えた、全55曲という、ケツメイシの代表曲を網羅するボリューム満点のベストとなっています。
さて、最近の売れ線のJ-POPを聴くと、よくありがちなパターンというのが耳につきます。
典型的なのが・・・
「抽象的な前向きの応援歌」
「抽象的な言葉を並べただけのラブソング」
「仲間を大切にしよう、的な歌」
「ラップを入れているけど、なぜかサビは普通のメロディー」
あたりでしょうか?こう並べると、具体的なミュージシャンや曲も思い浮かびそうな。ここらへんのパターンの歌詞は、特に売れ線のJ-POPを批判的に見る人からは、嘲笑と共に語られることの多いパターンだったりします。
で、よくよく考えると、ケツメイシって、このパターンの歌詞をしっかりと歌っちゃっているんですよね。「ラップを入れているけど、サビはポップなメロディー」というのは、下手したら彼らからはじまったような感じもありますし、「仲間」あたりは、文字通り、典型的なパターンですね。正直、ラブソングあたりも、「こだま」や「聖なる夜に」みたいな、万人受け狙いの平凡な歌詞もチラホラ・・・。その上、大ヒットした彼らの代表曲「さくら」は、まさに売れ線狙いJ-POPの典型例みたいなタイトルですし。
そんな感じで、正直、ケツメイシは、典型的な売れ線狙いのJ-POPシンガーと見る向きもあるかもしれません。ただ、一方では、非常に魅力的でユニークな歌詞や曲を多く書いているところもまた、事実。そこらへんが、また、とてもおもしろかったりします。
例えば「三十路ボンバイエ」は、30代の哀愁をユニークに描いていますし、「東京」は、同じく上京してきた人にとっては、心に響きそうな内容ですし、「S/S」は、かなりどぎついエロ歌詞がユニークです。
曲にしても、特に初期の作品は、レゲエのリズムをポップに仕上げているバランス感覚は見事ですし、「海」は、ちょっとファンキーな雰囲気のシティーポップを聴かせてくれたり、四つ打ちのリズムが軽快な「お二人Summer」など、ライブで盛り上がりそうな、ダンサナブルな作品もたくさん。「花鳥風月」のような和風のバラードからもしっとりと聴かせてくれます。なにより、このベスト盤のように、春夏秋冬、どの時期にもピッタリ合うような曲を様々書いているという意味で、楽曲のバリエーションの多さも耳を惹き付けます。
そういう意味では、彼らは、「良くありがちな売れ線」と取るか、「様々なおもしろい曲を書ける実力派」と取るか、そのちょうどボーダーラインあたりにいるミュージシャンのように感じます。ただ、往々にして、そういうミュージシャンが、いろいろなリスナーを惹き付けることにより、シーンを活性化し、様々なヒット曲を世に送り出してくれるもの。そして、ケツメイシの全盛期の活躍を見ると、まさにその通りだったといっていいかと思います。
ただ・・・正直、ここ最近は、ちょっとパターン化された、平凡な曲が多くなっているような気がするのが、気にかかるところなのですが・・・。
4枚のベスト盤の中では、「春BEST」は、勢いのあるヒット曲や代表曲が多く、「夏BEST」は、曲的にも歌詞的にもユニークな曲が多かったように思います。一方、「秋」と「冬」は、名曲もあったものの、ありがちな平凡な曲も多く、玉石混合と言った感じだったかも・・・。
あと、もう1点。
どう考えても、4枚同時発売という企画は失敗だよなぁ。
ケツメイシのファン層からすれば、やはり学生や若者がメインでしょうし、かつターゲットとなるのは、ケツメイシの曲は好きだけど、普段アルバムを買うほどではない、という人たち。4枚あわせると、1万円オーバーとなると、ちょっと躊躇してしまう人も多いのでは?実際、ベスト盤としては、売れゆきがいまひとつな感じでしたし・・・。代表曲を、さらに選曲した、1枚のみのベスト盤の販売、求む!
評価:
春BEST ★★★★★
夏BEST ★★★★★
秋BEST ★★★★
冬BEST ★★★★
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