日本風ロックを目指して
Title:よっちゃばれ
Musician:THE BOOM
THE BOOM約2年ぶりとなるニューアルバム。THE BOOMといえば、初期はスカのリズムを取り入れ、その後は「風になりたい」のようにラテン風の曲だったり、さらには、大ヒットした「島唄」のように沖縄音楽だったり、いままで、ワールドミュージックの様々なエッセンスを、その音楽に取り入れてきました。
そんな彼らのニューアルバムのテーマは「新しい日本の歌」。このアルバム、1曲目「赤春~せきしゅん~」こそ彼ららしいラテンのナンバーですが、続く「流れ流されて」はいきなり尺八が流れてきますし、続く「情ションガイネ」は、盆踊りで流れそうな、民謡風なナンバーになっています。さらに「暁月夜~あかつきづくよ~」は、なんと石川さゆりとデゥエットの、演歌風のナンバーに仕上がっていました。
ここらへん、まさに「日本のロック」を目指したという、彼らの意図は非常に強く感じられる作品だったと思います。ただ、正直言って、いかにも和風な民謡調のメロディーとロックの融合という観点からすると、こなれていないなぁ、という感想を抱きました。
ストレートに言ってしまうと、彼らが取り入れた日本の歌のイメージは、ある種非常に様式的。「情ションガイネ」なんかは、いかにも夏の町内の盆踊り会場で流れていそうな曲ですし、「暁月夜~あかつきづくよ~」も、ありふれた演歌調。正直なところ、おもしろみは感じませんでした。
例えば、日本の歌をロックと融合させた、といえば、ご存知ソウルフラワーユニオンというバンドがいるわけです。先日発売されたミニアルバム「キセキの渚」でも、岐阜県の郡上踊りで有名な「郡上節」をカバーしていますが、このカバーは非常にダイナミック。民衆が本来持っているパワーを存分に感じられ、日本の民衆が、昔から持っていた底力を感じられます。
残念ながら、彼らのこのアルバムからは、いかにも和風なメロディーは流れていますが、そういう日本のうたが本来持っている躍動感みたいなものは感じられませんでした。ただ、それは彼らが実力の面で劣るから、という訳ではないと思います。実際、彼らの王道ともいえる沖縄音楽を取り入れた「忘んなよ島ぬくとぅ」や、ラテン風の「赤春~せきしゅん~」などは、曲の良さが存分に出ているナンバーになっていました。だからこそ、上にも書いた通り、まだ、彼らは日本の民謡を、ロック風にアレンジすることに、こなれていない、そういう印象を強く受けました。
ただ、もっとも方向性としてはおもしろいわけで、今後、この方向にチャレンジし続ければ、徐々に傑作も産まれてくるかも・・・。結成から25年が経てなお、新たなチャレンジを続ける彼らには、とてもたくましいものも感じます。それだけに、次回作は期待したいところです!
評価:★★★★
THE BOOM 過去の作品
89-09 THE BOOM COLLECTION 1989-2009
四重奏
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