被災者とともに。
Title:キセキの渚
Musician:ソウル・フラワー・ユニオン
早くも発生から10ヶ月が過ぎようとしている東日本大震災。そして、その後に起こり、今なお終息が見えない福島原発事故。その地震や事故の後、多くのミュージシャンがそれぞれのスタンスから、様々な言葉を発しました。
震災直後に、生き残った人たちへのメッセージを発した佐野元春、原発事故への怒りを表明した斉藤和義、「死にたくない」と叫んだ神聖かまってちゃん・・・他にも、様々なミュージシャンが震災に対しての想いを語り、そのスタンスの違いにも興味深いものがありました。
そんな中でソウル・フラワー・ユニオン。彼らは、17年前の阪神淡路大震災の際にも、一早く現場へボランティアでかけつけ、現地でライブを実施し、被災者を音楽で元気づける活動を行ってきました。そこでうまれた「満月の夕」は今でも、彼らの代表曲として聴く人の心を揺さぶります。
今回も彼らは現場にボランティアやライブなどでかけつけたそうです。そして、そんな彼らが大震災を受けリリースしたアルバムが今回のアルバムです。彼らは、Twitterなどでは、いつも反原発を訴え、原発に対する政府や東電の対応を批判しています。しかし、楽曲で歌われているのは、被災者の視点で、被災者とともに元気になろうという歌でした。
タイトル曲「キセキの渚」は、彼らがボランティアでやってきた女川の瓦礫の中から見つけたターンテーブルをTwitterにアップしたところ、偶然、ソウルフラワーのファンの持ち物だと判明したことからつけられたタイトル。彼ららしいアップテンポなダンスナンバーなのですが、その中で印象的だったフレーズが
「何度もやり直す しつこく巻き返す」
(「キセキの渚」より 作詞 中川敬)
という一文。よくありがちな単純な前向き応援歌ではなく、無責任に「がんばろう」と叫ぶのではなく、東北の人たちの力を信じ、それを力強く歌い上げるフレーズが、非常に印象に残ります。
他にも、遠洋漁業の漁師さんたちの間でよく歌われている「おいらの船は300とん」や、「斎太郎節」「郡上節」など、地元のお年寄りが一緒になって歌えるような曲が並んでいるのが彼ららしいところ。時として押し付けがましさすらある「東北、がんばろう」というメッセージではなく、あくまでも地元の人たちの目線で、一緒に楽しもうとしているのが彼ららしいですし、また、震災を反映したアルバムの中では、もっとも共感を受けた作品でした。
今回の震災に限らず、常に庶民の視点にたって、おしつけがましい応援歌ではなく、一緒に楽しめる曲を歌い続ける彼ら。震災を受けての曲でもそのスタンスは一貫しており、そういう意味では、他の「がんばろう」ソングとは、ある意味、格の違いすら感じた1枚でした。間違いなく、2011年という年を代表する作品だと思います。
評価:★★★★★
ソウル・フラワー・ユニオン 過去の作品
満月の夕~90's シングルズ
カンテ・ディアスポラ
アーリー・ソウル・フラワー・シングルズ(ニューエスト・モデル&メスカリン・ドライブ)
エグザイル・オン・メイン・ビーチ
キャンプ・バンゲア
ほかに聴いたアルバム
Deliver/磯部正文
元HUSKING BEEの磯部正文による2枚目となるソロアルバム。前作はヒダカトオルがプロデュースを手がけたものの、2作目はセルフプロデュースとなった本作。ただ、「find」とか、ビークルっぽくて、なかなか磯部正文のオリジナルの音にはなりきれていない模様。メロディアスな曲調はHUSKING BEEらしさを感じるものの、全体的には平坦な感じがして、6曲入りのミニアルバムながらも、最後は少々飽きも来てしまいました・・・。
評価:★★★
磯部正文 過去の作品
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