ブラックミュージックのパイオニア
Title:THE BADDEST~Hit Parade~
Musician:久保田利伸
昨年、デビューから25年を迎えた久保田利伸。最近では、日本のヒットチャートでもすっかり浸透したブラックミュージックを、まだヒットシーンではほとんど見かけない時期から歌い続けてきた彼。そんな彼の25年の歴史をまとめた2枚組のベスト盤がリリースされました。
このアルバム、彼の代表曲が、概ね発表順に並んでいます。で、通して聴いてまず感じたのが、彼の音が、その時代に応じて、フレキシブルに変化している点でした。初期の作品は、これでもかというほど80年代風の打ち込みがはいっていますし、90年代の曲は、J-POP的な要素が。そして、2000年以降の曲もまた、時代を反映したような、メロウなR&Bの曲に仕上げています。
しかし、一方では、どの時代を通じて一本筋が通ってきた点があります。それは、どの時代の曲も、ブラック・ミュージックであるという点。そのため、その時期でサウンドや曲調の雰囲気を変えていても、バラバラというイメージはほとんどありません。むしろ、流行を上手く取り入れながらも、自分のスタンスを貫いているという姿勢を強く感じます。
特に今回、一番印象に残ったのが初期の作品。「流星のサドル」は、これでもかというほどファンキーなナンバーですし、「TIMEシャワーに射たれて」は、80年代の作品でありながら、いち早くラップを取り入れたりして、かなり挑戦心あふれる作品が並んでいます。
ただ、80年代後半から90年代前半あたりの作品については、初期に比べると、ちょっと勢いが落ちているような印象を受けました。売上的には、ちょうどブレイクを果たした時期なのですが、それだけに逆に「売れること」をめざしたような作品が並んだようにも思えます。
それがまた勢いを取り戻したのは「LA・LA・LA LOVE SONG」のメガヒットからではないでしょうか?ドラマ主題歌に起用され、180万枚を超える売上を記録しましたが大ヒット曲ですが、この曲以降、デビュー直後のように、作風が自由になったように感じます。これだけのヒット曲をリリースしたため、売れることにこだわらず、自由に曲を作れるような立場になったからかな?なんてことも思ってしまいました。具体的には「AHHHHH!」や「Messengers' Rhyme~Rakushow,it's your Show!~」から、彼の曲が、さらに刺激的になってきたように感じました。
久保田利伸というミュージシャンについては、「実力派」という認識はあったのですが、このベスト盤を聴くと、単なる実力派ではなく、日本を代表するミュージシャンといってしまってもよいくらいの、実力の持ち主なのではないか、と再認識しました。なにより、日本では、ヒットしないといわれていたブラック・ミュージックを、決して単純な歌謡曲に落とし込むことなく、ファンキーやソウルの要素をそのままに、ポップにまとめあげた手法には、あらためて感嘆してしまいます。今では、数々のミュージシャンに影響を与えてきた彼ですが、その理由があらためて実感できたベスト盤でした。
評価:★★★★★
久保田利伸 過去の作品
Timeless Fly
Gold Skool
ほかに聴いたアルバム
Headache and Dub Reel Inch/黒夢
昨年2月、約14年ぶりのシングルをリリースし、復活を果たした黒夢。ご存知、その後、SADSなどで活躍している清春による、90年代後半に一世を風靡したロックバンドです。黒夢としての前作「CORKSCREW」から考えると、かなりイメージの異なるアルバムで、デジロックの要素を取り入れたヘヴィーロックは、雰囲気としてはSADSに近いタイプの曲かも。ただ、清春のボーカルにより、良くもも悪くも、清春の曲になってしまっているのはさすが。この強烈な個性が、長く続く人気の大きな要素のようにも思います。ただ、正直言うと、解散直前の黒夢や、その後の初期のSADSの時のような勢いは感じられず、「こう来るか」という驚きもあまりなかったのは残念・・・。
評価:★★★★
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