アルバムレビュー(邦楽)2011年

2011年12月27日 (火)

これもくるりの最新作

Title:奇跡 オリジナルサウンドトラック
Musician:くるり

映画のサントラ盤というのは、ここでも何度か紹介しているのですが、正直言って、アルバムとして傑作!という作品に、ほとんど出会ったことはありません。

それは、あくまでも映画でつかわれることを前提につくられた曲であるため、BGM的になっていたり、曲の断片であったり。映画の中では効果的であるかもしれないのですが、ひとつの曲としては、いまひとつ、というケースが多いからだと思います。

ただ、この是枝監督作品「奇跡」のサントラは、いままで何枚か聴いてきた映画のサントラの中では、一番楽しめたアルバムでした。

ともすれば、映画の主題歌以外は、すべて1分程度のBGM的な曲、という構成が多いサントラ盤の中で、「鹿児島おはら節」「奇跡」「最終列車」と3曲も歌付の曲があった、ということも大きかったかもしれません。

ただ、それ以外にも、くるりの歌心があふれる曲が並んでいて、しっかりくるりのアルバムとしての魅力を感じることが出来たのが大きかったように思います。

全般的に、アコースティックでカントリー風な作品が目立つのですが、それらの曲も、しんみりとしたメロディーに、くるり岸田のメロディーセンスを感じることが出来ます。また、インストながらも「それぞれの日々」ように、アコーディオンでメロディーを奏でる、5分を超える曲もあり、ちゃんとくるりの作品として楽しむことが出来ます。

他にも「ぞわぞわ」のように、三味線の音色がブルージーで、それにバンドサウンドが加わるという、非常にユニークな作品や、「軍資金のテーマ」のようにバンドサウンドを前に押し出したような曲など、なにげにサントラ盤といってもくるりファンならチェックしておきたい作品も多数。

確かに、決してポップな曲が多いわけでもないし、映画の中ではないと楽しめないような曲も少なくないため、ファン以外にはお勧めしにくいのですが、ファンにとっては、サントラ盤といってスルー不可な1枚だと思います。間違いなく、この作品もくるりの作品。要チェックな1枚です。

評価:★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2


ほかに聴いたアルバム

Second line&Acoustic collection/ACIDMAN

シングルのカップリングとして収録したセルフカバー、second lineシリーズに、あらたにセルフカバー作品を加えたアルバム。全体的にアコースティックで、ジャジーなカバーに仕上がっていて、ACIDMANのロック以外での音楽的嗜好を感じさせます。ジャズベースのおしゃれな雰囲気は、いつものACIDMANの曲の中にも垣間見れるので、意外性はあまりないような気はするのですが、それでもいつものACIDMANとは違う雰囲気で楽しめるアルバム。ただ、全体的に似たようなタイプの曲になっているのが残念なような・・・。

評価:★★★

ACIDMAN 過去の作品
LIFE
A beautiful greed
ALMA

LAST TRAIN TO EXITOWN/THE BEATNIKS

鈴木慶一と高橋幸宏によるユニットの、10年ぶり(!)となる新作。しっとりした大人のポップスといった感じで、鈴木慶一っぽいなぁ、という部分と、高橋幸宏っぽいなぁ、という部分が、それぞれ決してお互いに衝突することなく、上手く融合しているのが、実力のあるベテラン同士のユニットといった感じ。ただ、もちろんクオリティーの高いアルバムなのは間違いないのですが、聴き終わった後の印象が、ちと弱いような・・・。

評価:★★★★

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2011年12月24日 (土)

牧歌的な暖かい作品

Title:羊どろぼう
Musician:栗コーダーカルテット

栗コーダーカルテットの新作「羊どろぼう。」.。そのタイトル曲「羊どろぼう。」は、糸井重里の本「羊どろぼう。」のテーマ曲として書かれたそうです。え~その本自体は読んでいないのですが、その「羊どろぼう。」は、ちょっと牧歌的な雰囲気のする、暖かいポップソング。本のテーマ曲とはいっても、その本を読んでいないと楽しめない・・・という感じではもちろんありません。

今回の新作も、いつもと同様、笛を中心として、暖かいサウンドを奏でる曲たちが13曲。彼らの笛は、基本的にメロディーラインをなぞるカタチで演奏されるため、ボーカルのように歌っています。そのため、インストでありながらも、非常にうたごころを感じさせるアルバムになっています。

その「羊どろぼう。」もそうですが、「コカゲ鉄道」「コトバ写真館」「まどろみワルツ」・・・そのタイトルは、どこかファンタジックで、想像力がかきたてられます。シンプルなサウンドで、シンプルなメロディーラインを奏でる彼らの音は、その後ろに広がる世界を、リスナーにゆだねているよう。聴く人によって、想像する世界は違うのも、インストならでは。もっとも、おそらく誰が聴いても、思い描くのは、とても暖かく、やさしい世界でしょうが。

そんな中でも、ほっこりとしたポップな作品だけではなく、「リージェントパークの片隅で」のようなちょっとしんみりする作品があったり、「まどろみワルツ」みたいに、ちょっと不思議な感じの曲調を奏でたり。最後の「青空節」は、なんと民謡調。様々な「歌」を私たちに届けてくれます。

暖かい気持ちになる、実にステキなアルバムだと思います。それぞれの曲に特徴があって、どこかひねっている部分があるので、決してコンビニのBGMのようなイージーリスニングではありませんし、かといって、小難しくもないため、誰でもゆっくりと楽しめる音楽になっています。そういう意味では、広い方にお勧めできるバランスのとれた作品。これからの寒い季節にもピッタリです。

評価:★★★★★

栗コーダーカルテット 過去の作品
15周年ベスト
夏から秋へ渡る橋
渋栗(川口義之with栗コーダーカルテット&渋さ知らズオーケストラ)

遠くの友達
生渋栗(川口義之with栗コーダーカルテット&渋さ知らズオーケストラ)


ほかに聴いたアルバム

15年の日曜日/ホフディラン

またライブ盤ですか・・・・・・

15周年を記念して7月3日にSHIBUYA-AXで行われたライブの模様を収録したライブ盤。これで3作連続という訳ですが・・・まあ、全く何の活動もしなくなるよりはいいのでしょうが・・・。

ただ、今回、途中で、レーザーラモンRGがゲストとして登場して、あるあるネタを披露するのですが、これが鬼のようにつまらない!!つーか、はっきりいって、収録時間の無駄使いです(苦笑)。つまらないというよりも、どこが笑えるのかが、さっぱり不明・・・。CDの流れもぶちぎっているし、これをわざわざ収録した意図も不明。

それをのぞけば、あいかわらずのポップな曲の数々は、確かに魅力的なのですが。それよりも、早く新譜を!!

評価:★★★

ホフディラン 過去の作品
ブランニューピース
13年の金曜日
14年の土曜日

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2011年12月22日 (木)

日常と非日常の間

Title:幻とのつきあい方
Musician:坂本慎太郎

2010年、惜しまれつつ解散したゆらゆら帝国のフロントマン、坂本慎太郎による初のソロアルバム。

傑作アルバム「空洞です」で、「バンドとしてやれることはやりつくした」というコメントを残し解散した彼ら。それだけのアルバムをリリースして、一体、次はどんな一歩を見せてくれるのだろう、と期待半分、不安半分で聴いた今回のアルバムですが、その結果は、期待を超える傑作を聴かせてくれました。

楽曲の方向性としては、「空洞です」の延長線上にある楽曲だと思います。シンプルでミニマル、隙間の開いているような音の世界は、「空洞です」と通じるところがあります。ただ、大きく異なるのが、今回のアルバム、バンドサウンドが皆無という点。パーカッションやサックスなど、様々な音を用いており、バンドではない、ギターやドラムスの音に縛られることのないソロだからこその音を作り出しています。ただ、様々な音を用いながらも、楽曲全体の雰囲気はあくまでもシンプル。いろいろな音を上手く組み合わせて、最小限の音で、最大限の世界をつくりあげているという点も、「空洞です」と通じるところがあります。

メロディーに関しては、基本的にゆらゆら帝国と変わらず。ただ、バンドサウンドがなくなったため、よりメロディーと歌詞が前に出てきているように感じました。メロディーラインは、いわゆる一般的なヒット曲のように、フックの効いたようなわかりやすいサビがあるわけではありません。でも、妙に人なつっこいメロディーが魅力的で、聴き終わった後、ついつい口ずさんでしまうあたり、間違いなく、「ポップ」なんですよね。今回は、女性のコーラスを効果的に用いることにより、その人なつっこさが、より前に押し出されているように感じます。

今回のアルバムタイトル「幻とのつきあい方」の「幻」というのは現実社会のことだそうで、歌詞で歌われている内容も、日常をベースとした歌詞がメイン。ただ、それを「幻」と表現する彼の歌は、どこか地に足をつけない浮遊感が、日常の歌でありながらも、どこか幻想的な雰囲気を与えています。この日常と非日常の間の隙間にピッタリとはまったような感覚が、また独特で、癖になります。

「空洞です」の延長線上ながらも、「空洞です」とは全く異なる世界を見せてくれた今回のソロアルバム。まさに期待を大きく上回る傑作でした。間違いなく、今年のベスト盤候補の1枚。坂本慎太郎というミュージシャンの実力を、まじまじと感じさせてくれた作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Rock Kingdom/the telephones

高音のボーカルに、ディスコチューン。後半、ポップなメロディーを聴かせるナンバーもあるのですが、メインはやはりディスコサウンド。ワンパターンといえばワンパターンですが、ライブだと、このワンパターンさが楽しそう。アルバムの長さも40分弱と短めですが、こういうタイプの曲なら、この長さが限界だな・・・。マンネリといえばマンネリなのですが、変に路線を変えるよりも、もうこの路線で行くしかないような・・・。

評価:★★★★

the telephones 過去の作品
DANCE FLOOR MONSTER
A.B.C.D.e.p.
Oh My Telephones!!! e.p.

We Love Telephones!!!
100% DISCO HITS! SUMMER PACK

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2011年12月20日 (火)

キリンジの意外な側面

Title:SONGBOOK
Musician:キリンジ

今回、こういうアルバムがリリースされて、ちょっと意外に感じたのが、キリンジって、意外といろいろなシンガーに曲を提供しているんだなぁ、ということ。確かに、彼らみたいなクオリティーの高いポップスを、確実に提供できるようなミュージシャンって、なかなかいないですからね。

今回のアルバムでおもしろかったのが、1枚目に本人たちのセルフカバーが収録されており、2枚目に、彼らが楽曲提供した元曲が収録されている点。1対1対応ではないのがちょっと謎で、おそらく、カバーに合う曲を選んだんでしょうが・・・。2枚の聴き比べを楽しむことが出来ます。

そして、そんな聴き比べをしておもしろいなぁ、と感じるのは、カバー曲に関しては、実にキリンジっぽさを感じながらも、キリンジの曲としてはどこか違和感を覚える点。逆に、元曲に関しては、どこかキリンジっぽさを残しながらも、本人たちの曲としてキッチリとマッチしている点でした。

例えばセルフカバーでいえば、「ロマンチック」は、サビのメロは確かにキリンジっぽいものの、それ以外の部分や、リズムの早さには違和感が。「わたしの青い空」にしても、歌謡曲っぽさが強く、どこかいつもの彼らの曲とは違う部分を感じます。

一方、元曲の方で言えば、「somewhere in TOKYO」は、完全に古内東子の曲になっていますし、「プールの青は嘘の青」にしても、ノスタルジックな歌詞と曲調が、南波志帆の、かわいらしい声とピッタリマッチしています(だからこそ、この曲はセルフカバーが出来なかったのでしょうか?)

おそらく、彼らが楽曲を提供する場合、いつも自分たちのために作る曲と違ったスタンスで、かつ、提供するシンガーに合った曲を書いているのでしょう。そして、それが意外とマッチしているところに、彼ら、実はシンガーソングライターとしてではなく、職業作家的にも通用する実力の持ち主なんだ、ということを感じました。

ちなみに、今回のアルバムで一番意外な発見が、藤井隆の「わたしの青い空」で、ちょっといろっぽいボーカルが、曲にマッチしていて、お笑いタレントの余芸と思えない出来。最初、誰が歌っているかわからず、歌っている人の名前をみて、ビックリしました。

キリンジの、その音楽性の広さも感じられた2枚組。キリンジファンにとっても、十分オリジナル感覚で聴けるアルバムだと思いますし、元曲の方も、それぞれシンガーは個性的で、よかったですよ!

評価:★★★★★

キリンジ 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY


ほかに聴いたアルバム

and...Life/熊木杏里

ワーナー移籍第1弾となるミニアルバム。ピアノの音が爽やかな「Hello Goodbye&Hello」からはじまる前半は聴かせる曲が並びます。特に、死んだ人のことを思う、切ない「hotline」はピアノの音が切なく、胸がしめつけられるような名曲。ただ、後半の曲に関しては、ちょっといまひとつというか、平凡なJ-POPに。なんか、彼女って、曲によって出来不出来の差が大きいような・・・。曲単位では名曲も多いのに、いまひとつブレイクできない理由がそのあたりにありそう・・・。

評価:★★★★

熊木杏里 過去の作品
ひとヒナタ
はなよりほかに
風と凪

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2011年12月19日 (月)

ソロアルバムらしいソロアルバム

Title:退屈な男
Musician:山中さわお

the pillowsのボーカリスト、山中さわおのソロアルバム。バンドメンバーのソロアルバム、というと、どうしてもバンドとどう区別するか、難しいものがあります。特に、彼のような、バンドのボーカルであり、かつ、バンドのメインライターである場合は。

バンドと同じ曲を作れば、「それってバンドでやればいいんじゃない?」ということになりますし、バンドと全く違うタイプのソロアルバムなら、「バンドとは違う、本当にやりたいことがあるんじゃない?」と思われてしまいます。

しかし、そんな中、彼がリリースしたソロアルバムは、実にソロアルバムらしいソロアルバムでした。

楽曲のタイプは、基本的にthe pillowsと同じ、オルタナティブなギターロック。もっとも、わかりやすいフックの利いた楽曲がない点、the pillowsよりも内向きなものを感じますし、「Youth Club(Two members)」「Absurd Song」あたりの曲はソロならでは、といった感じ。ただ、ここらへんの曲をthe pillowsで演れば、ファンがとまどったり、楽曲が浮いてしまうか、と言われると、そんなことはないでしょう。

このアルバムが、ソロアルバムらしいと感じるのは、歌詞の面。全編英語詞の歌詞は、山中さわおのパーソナリティーが強くあわれています。

「talk nonsense now.
「The life is unfair」
When thinking, I'm blessed.
Though I'm a man who lacks only affection.
So everyone is leaving.」

(「Vacant House」より 作詞 山中さわお)

という歌詞はあまりにもストレートですし、

「When noticing,
I got an age a lot.
But my mind was while being childish.
'I don't change'
I thought so for a long time.
But I became weak from the day when you have left.」

(「Rehabilitation」より 作詞 山中さわお)

というのも、彼の素直な心境を感じます。また、「Youth Club(Two members)」では、ロックへの率直な愛情を語ったり、山中さわおの心をさらけだした曲が並んでいます。

思えば、the pillowsの曲でも、個人の素直な心境をさらけだしたような曲が多いのですが、それでもあくまでも広い層に向けたメッセージ。山中さわおにとっては、まださらけだしたい本音があったという訳です。また、英語詞にしたのも、日本語だと、あまりにもストレートに伝わりすぎてしまうため、というのでしたら、非常に納得がいきます。

ただ、あくまでもパーソナリティーなアルバムであるため、the pillowsのような、ポピュラリティーが薄めなのは事実。やはり英語詞だと、the pillowsのように、歌詞でガツンと来るような曲はありませんし、メロディーもインパクトが薄め。the pillowsのファンにとっては、素直に受け入れられそうな曲ですが、the pillowsのファンでない方が、いきなりこのアルバムを聴く、というのは、あまり薦められないかもしれません。

ともあれ、これだけ山中さわおのパーソナルな側面をさらしだしたというのは、実にソロアルバムらしいと思います。バンドでは絶対出来ないですし、また、逆にサウンドの面では、バンドの時から大きく離れていないという意味で、音楽的な興味が、バンドから離れてしまった訳ではない、ということもわかります。

the pillowsファンならば、とりあえずチェックしておきたいアルバムだと思います。英語詞なので、抵抗感ある方もいるかもしれませんが・・・the pillowsの世界観が好きなら、きっとこの世界観も受け入れられる、はず。

評価:★★★★

山中さわお 過去の作品
DISCHARGE


ほかに聴いたアルバム

Trick or Treat e.p./MAN WITH A MISSION

最近話題のロックバンド。謎の覆面バンドで、ライブでも終始、オオカミの面をかぶっているとか。今回、はじめて聴いたアルバムでは、1曲目にいきなりNIRVANAの「Smells Like Teen Spirit」のカバーが入っています。ラップや打ち込みなどを入れて、今風にアレンジしながらも、元曲のダイナミズムを失わない名カバーで、これは期待できる!・・・と思ったのですが・・・。

アルバム全体を聴いた感想としては、思ったよりも普通のパンクロックバンドだったなぁ、といった感じ。正直言って、一昔前からよくいるタイプの音で、あまり新鮮味がありませんでした。「お面をつけている」といった要素以外に、いまひとつ、彼らだけの個性が薄いような印象が。ライブパフォーマンスが圧倒的という評判も見かけるのですが、このアルバムに収録されているライブ音源を聴く限りだと、そこまで圧巻という印象もありません。ただ、ライブは、やはり生で見てみないと、なんとも言えないからなぁ・・・ライブを見たら、印象が大きく変わるかも。

評価:★★★

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2011年12月17日 (土)

オルタナティヴなCHARA

Title:うたかた
Musician:CHARA

前作から、わずか約7ヶ月のインターバルでリリースされたCHARAのニューアルバムは、前作「Dark Candy」と対になるアルバムだそうです。デビュー20周年を迎えた彼女が、原点に戻った作品だそうで、「Dark Candy」は、ポップでガーリッシュな側面を強調した作品である一方、「うたかた」は、オルタナティヴな女性ミュージシャンとしての側面を強く押し出した曲だそうです。

で、今回の作品は、そんなオルタナティヴな作風なだけに、わずか7曲ながらも、アレンジが非常に凝った作品が並んでいます。アコースティックギターに、シューゲイザー風なノイズギターが重なる「Feeling Feeling」、打ち込みのリズムとギターの音色が幻想的な音を作り出す「Oshiete」などなど。

かと思えば、「Magic View」「わからない」など、ピアノ主体で、CHARAの歌とメロディーを十二分に生かした曲も多く、わずか7曲というミニアルバムながらも、CHARAというミュージシャンの魅力を、様々な側面から切り取ったアルバムのように感じました。

確かに、CHARAというミュージシャンでイメージされるスタイルで、このアルバムに足りないのは、ガーリッシュでポップな側面。それは、前作「Dark Candy」で表現した世界であって、まさに前作とあわせて2枚でCHARAというミュージシャンを表現した、ということなのでしょうか?

個人的に、ここ数作のCHARAのアルバムの中では、一番気に入った作品。シューゲイザーちっくなギターロックや、CHARAのボーカルを存分に聴かせるピアノバラードが気に入ったという部分が大きいのですが・・・。デビューから20年、まだまだ全く衰えを感じさせない彼女。これからも、まだまだたくさんの名曲を世に送り出してくれそうです。

評価:★★★★★

CHARA 過去の作品
honey
kiss
CAROL
Very Special
Dark Candy


ほかに聴いたアルバム

HOW CRAZY YOUR LOVE/YUI

学生の気持ちを素直に歌ったような歌詞が、いかにも若者向けといった感じ。ただ、どこかステレオタイプという印象があって、彼女の心からの叫びというよりも、どこか「歌わされている」感が否めないんだよなぁ・・・。アップテンポで爽快な、ポップスロックのスタイルはいつも通り。メロディーの面で勢いが出てきたかな、と思った前作に比べると、勢いは引っ込んでしまった感も。

評価:★★★

YUI 過去の作品
I LOVED YESTERDAY
HOLIDAYS IN THE SUN

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2011年12月15日 (木)

強い芯を感じます。

Title:エピソード
Musician:星野源

先日、浜野謙太率いる在日ファンクのアルバムを紹介しましたが、こちらも浜野謙太と同じくSAKEROCKのメンバーで、俳優としても活躍している星野源のソロ2作目。オリコンチャートでもベスト10入りしてくるなど、高い支持を集めています。

基本的には前作「ばかのうた」と同様、暖かいアコースティックなサウンドが特徴的な作品。アコギだけではなく、ピアノやストリングスなどを取り入れていますが、至ってシンプルな曲調。派手さはないものの、そっと心に染み入るような音づくりが、とても魅力的な作品になっています。

そして、そこで歌われているのは、前作と同じく私たちの日常。暖かいサウンドなだけに、描かれているのもほっこりとした世界観・・・と言いたいところですが、そんな中に、強烈な毒が混じっていたりするのが非常にユニーク。確かに「布団」「喧嘩」など、ふとした日常を描いた暖かい作品もあるのですが、例えば「バイト」では、いきなり

「殺してやりたい 人はいるけれど
君だって同じだろ 嘘つくなよ」

(「バイト」より 作詞 星野源)

なんて強烈な歌詞が飛び込んできますし、「変わらないまま」

「さらば人気者の群れよ 僕は一人で行く
冷えた風があの校舎で
音を鳴らす 遠ざかる」

(「変わらないまま」より 作詞 星野源)

という、歌詞は、ある種「神聖かまってちゃん」的な世界とも共通しそう・・・。

そんな歌詞にひとつ流れてるメッセージは、やはり確固たる自分ということ。それが一番端的にあらわれたのが、「日常」という曲で

「みんなが嫌うものが好きでも それでもいいのよ
みんなが好きなものが好きでも それでもいいのよ」

(「日常」より 作詞 星野源)

は、ある意味、私たちに自分を持つようにという、力強いエールのようにも感じます。

そんな訳で、暖かいアコースティックでシンプルな楽曲と、ある種の力強さを秘めた歌詞のアンバランスが、ユニークな作品。非常に強い芯を感じた1枚でした。

評価:★★★★★

星野源 過去の作品
ばかのうた


ほかに聴いたアルバム

スーパースター/back number

最近、人気上昇中のバンド、back number。和風な切ないメロが特徴的なバンドで、このアルバムではオリコンチャートでもベスト10入りしてくるなど、人気を獲得しています。

そんな訳で、はじめて彼らの曲を聴いたのですが・・・哀愁あるメロが耳に残るのですが、似たタイプの曲が多く、曲も平凡。アレンジも、仰々しい感じの曲が多く、最後まで雰囲気で押していっているような。最初聴いた時は印象に残るのですが、2度3度聴くと、飽きてしまいそうに感じました。

評価:★★★

relight/androp

話題のバンドの新作。ちょっとシューゲイザーっぽさも感じる「Strobo」から、ダンスチューンの「ShowWindow」、幻想的な「HoshiDenwa」など、様々なバリエーションもあり、どの曲もバンドサウンドはなかなか凝っているのですが、どの曲も、既聴感があり、アルバム全体としては、このバンドだけが持っているような個性が薄く、普通のギターロックバンドに終わってしまっているのが残念。ポテンシャルはあるので、あとはandropだけが持っている何か、だけだとは思うのですが・・・。

評価:★★★★

androp 過去の作品
door

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2011年12月13日 (火)

ユニークな企画盤

以前、こちらでも紹介した、久保ミツロウ作「モテキ」のコンピレーションアルバム。今回は、その実写版が、映画化されたということで、3枚の企画盤がリリースされました。私自身は、原作漫画も、実写ドラマも映画も全く見ていないのですが(笑)、こちらのアルバムはとてもおもしろそうなので、3枚とも聴いてみたわけです。

Title:モテキ的音楽のススメ映画盤

まずは、映画の中で使われた曲や、「モテキ」のイメージにピッタリ来る楽曲を集めたコンピ盤。90年代のちょっと懐かしいナンバーから、最近話題の新人まで、「ちょっと情けない男」が主人公の曲が並んでいます。

個人的に壺だったのが90年代の懐かしの曲たちで、岡村ちゃんにジュディマリに大江千里に、そして、TM NETWORK「Self Control」!!サブカル畑では、なにかと無視されているTMですが、30代半ばの人なら、一度ははまった人は多いはず!なんだかんだいっても名曲ですよ~特に「Self Control」は!

そして同じく懐かしかったのは、久しぶりに聴いた橘いずみ「失格」。この曲、はじめて聴いた時は衝撃的だったなぁ・・・。いまから聴くと、音が意外と軽かったんだ、と驚いたのですが、やはりインパクトはいまでも十分感じられます。

最近の曲だと、在日ファンクはもちろんなのですが、N'夙川BOYS「物語はちと?不安定」がよかったですね。地元のFM局で、彼らの曲がよく流れているので、名前は知っていたのですが、耳に残るポップなメロと、男女ボーカルの対比がとてもユニーク。最近知ったのですが、KING BROTHERSのメンバーが参加しているバンドなんですね!一気に気になるバンドになりました。

評価:★★★★★

Title:モテキ的音楽のススメ Covers for MTK Lovers盤

個人的に、3枚の中で、企画として一番おもしろかったのがこのカバーアルバム。単純なカバーではなく、「この人がこの曲を歌うの??」みたいな、意外な組み合わせがユニーク。もちろん、成功しているのと、失敗しちゃっているのがありましたが・・・。

こちらでもN'夙川BOYS「目を閉じておいでよ」がよかったですね。原曲そのままなのですが、N'夙川BOYSのイメージにもピッタリはまっています。ピッタリはまっているといえば、フラワーカンパニーズ「失格」。これ、もともとフラカンの曲だったのでは?と思うくらいのはまり方。この手の、主張がこれでもかとつまった歌って、フラカンのイメージにも合いそう。

原曲をおもいっきりぶっつぶしていておもしろかったのが、ミドリ解散後、ソロでの初の作品ということで話題となった後藤まりことクスノキリカによる「大スキ!」。歌詞の内容だけでかわいらしさがあふれている曲も、いまさらながら秀逸なのですが、後藤まりこのボーカルがとてもキュートで曲にマッチしている・・・と思えば、サビ意外の部分では曲をおもいっきり歪ませて、一気に狂気を感じさせる曲へと変貌させています。お見事。

また、さよならポニーテール「SAY YES」も、あんな情感こめて歌われた曲が、一気に脱力ポップに変貌しているカバーで、これも非常にユニーク。ただ、その分、楽曲がもともと持っていた、ナルシスティックな部分が前に出てきてしまっていています・・・これはこれでおもしろいのですが(笑)。

これだけユニークな組み合わせが多い一方で、いまひとつな曲も少なくなかったのがこのアルバム。フジファブリック「ぼくらが旅に出る理由」、ボーカルが淡白すぎるよなぁ・・・。OKAMOTO'S「どぉなっちゃってんだよ」、岡村ちゃんに比べると、力量不足が目立ってしまった感が・・・。HIROSHI II HIROSHI Feat.小泉今日子「空洞です」・・・普通のポップスになっちゃっています・・・。

そんな訳で、当たり外れも大きいのですが、非常にユニークな企画盤になっています。ある意味、3枚の中では、最も一聴の価値あり、です。

評価:★★★★

Title:モテキ的音楽のススメ MTK PARTY MIX盤

最後の1枚は、「モテキ」をテーマとしたDJ MIX盤。J-POPで踊るクラブイベント「申し訳ないと」のDJ陣、申し訳ナイタズによる選曲になっています。ただ、曲の方は、他の2枚のような、いかにも「ちょっと情けない男」といった感じではなく、各メンバーの趣味が反映された感じで、いまひとつかな?と思ったのですが、最初の曲目から思った予想よりは、楽しめる選曲になっていました。

特に予想外におもしろかったのが、掟ポルシェ選曲による「モテキ出演者枠・アイドルMIX」で、単なるアイドルソングの選曲か・・・と思いきや、企画モノアイドルやB級アイドルソングの、ちょっとキワモノ的な曲のつめあわせで、ぶっとんじゃっていて、かなりユニーク。アイドルに興味のない方でも、要チェックです。

評価:★★★★

そんな訳で、いろいろと豪華で、ユニークな企画盤の数々。ただ、この中で、どれか1枚、といわれたら、やはりカバー盤が要チェックかなぁ。このカバーは、このアルバムでしか聴けませんしね。当たり外れもありますが、参加ミュージシャンや楽曲に興味がある方は、要チェックです。

「モテキ」コンピレーション 過去の作品
モテキ的音楽のススメ~土井亜紀・林田尚子盤
モテキ的音楽のススメ~中柴いつか・小宮山夏樹盤

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2011年12月11日 (日)

名古屋のミュージックシーン

Title:IN THE CITY THERE IS A NAGOYA MUSIC

Nagoya

ここのサイトでもよく取り上げている音楽サイトOTOTOYで、フリーでダウンロードできるコンピレーションアルバムに、またおもしろい企画が登場しました。

以前、東京のインディーバンドを取り上げた「TOKYO NEW WAVE 2010」や、京都をテーマとした「All Along Kyoto」などのコンピレーションを紹介しましたが、今回のテーマは、なんと私のふるさとでもある名古屋がテーマだそうです。

正直、名古屋という街、SEAMOやHOME MADE 家族あるいはAK-69などのHIP HOP勢や、ビジュアル系バンドはシーンを築いているものの、インディーロック、と言われるとあまりイメージが出来ません。古くは、ブランキーや、the原爆オナニーズ、最近では、Stereo Fabrication Of Youthやthe ARROWSといったバンドを思い出すのですが、シーンというほどのものは感じません。

そんな中ピックアップされた24組。名前だけは聞いたことあるバンドが数組のですが、基本的に全員、音は初耳。しかし、名古屋でもこれだけ粋のいいインディーバンドがいて、それぞれがんばっているというのは、地元民としてはうれしくなってきます。

そして、そんな名古屋のインディーバンドは、24組という数の影響もあるのですが、様々なタイプのミュージシャンが揃っています。ギターロック、フォーキーなバンド、ガレージ、シューゲイザー、パンク、ファンク・・・・・・名古屋のインディーシーンのバンドは、実に総花的と言えるかもしれません。そして、どのバンドも、勢いがあり、ハズレはありませんでした。

ただ、その一方、どのバンドも優等生的というか、平均的。東京のバンドは、新しい、とんがったものを持っていましたし、京都のバンドは暖かく、聴かせるタイプのバンドがメイン、という特徴がありました。しかし、このアルバムに参加しているミュージシャンたちは、シーン全体を通しての、名古屋のバンドだからこそ、といった特徴がありません。いや、特徴がないことこそが、ある意味、名古屋らしい、と言えるのかもしれません。

思えば、名古屋という街は、ある意味中庸的というか、堅実で優等生的。例えばドラゴンズなどが典型例なのですが、いい意味でも悪い意味でも優等生的な選手が揃っています。このコンピレーションのバンドもまさにそんな感じ。1曲1曲を取れば、むしろ東京や京都のコンピよりも曲の出来はよかったかもしれません。ただ、東京や京都にない、名古屋のバンドだからこそ、という個性は薄かったように感じました。

そんな中でもおもしろいバンドは何組かいて、個人的に気に入ったのが、男女デゥオのアコースティックでフォーキーなメロが心地よいtheSing2YOU「water」、ノイジーでハードなバンドサウンドながらも、人懐っこいメロディーがよいshort film no.9「Always Be」、さらに一番インパクトがあったのが、パンキッシュなロリータボイスと、はちゃめちゃな歌詞がインパクト満載なワッペリン「目ん玉飛び出る」あたりでしょうか。ワッペリンは、アルバムレベルでも聴いてみたいかも・・・アルバムは、大ハマリか大失敗か、どちらかのような気がするなぁ(笑)。

ダウンロードはこちらのサイトから。来年の1月末までだそうです。

評価:★★★★

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2011年12月10日 (土)

今度はエロ歌詞!

Title:爆弾こわい
Musician:在日ファンク

相変わらず、在日ファンク、サイコー!です!!

SAKEROCKのメンバーでもあり、最近は俳優といても活躍している浜野謙太率いるファンクバンドの新作。JBマナーにそった、分厚いサウンドが特徴のファンクバンド。「爆弾こわい」という、根も葉もないような歌詞を歌う曲からもわかるように、歌詞の意味よりも、言葉としてファンキーかどうかにこだわったような歌詞が特徴的・・・なのですが、この歌詞の内容がまた、妙にユニークで、ついクスリと笑ってしまう、とても楽しいバンドです。

そんな訳で、基本的な路線は、前作「在日ファンク」から大きくは変更ありません。というか、前作から彼らのスタイルを完成させていたバンドですからね。「変わらない」というよりも、その路線をさらに突き進めた、そんな感じでしょうか。

ただ、今回の作品は、「在日ファンク」での「最北端」や「ダンボール肉まん」みたいな、どこかいかがわしさを感じるような歌詞がなくなりました。その代わり、今回のアルバムに入ってきたのがエロ歌詞(笑)。それも「こまくやぶれる」「マルマルファンク」のような、ストレートではなく、隠喩の混ざった歌詞がなかなか楽しく、今後の彼らの大きな武器になりそうな予感も・・・。

今回も、とにかくファンキーで、とにかく楽しい傑作でした!まだまだ彼らの快進撃は続きそうです。

評価:★★★★★

で、このアルバムがリリースするちょっと前、彼らのベスト盤がリリースされました。

Title:ベスト・オブ・在日ファンク~覗いてごらん見てごらん~
Musician:在日ファンク

・・・・とはいってもこのアルバム、実はTSUTAYAでのレンタルオンリーの作品。リリースされたアルバムはわずか2枚ですから、あくまでも入門編といった感じ。ただ、「京都」「きず」のライブバージョンが収められているのがうれしいところ。また、アルバム「在日ファンク」で入った私にとっては、スタジオ録音の「京都」が入っているのもちょっとお得でした。

全9曲という短さもあって、とりあえず在日ファンクというバンドのつまみ食いをしたい方にはピッタリ。お手軽にレンタルできるので、興味のある方は是非。これで気に入った方は、「在日ファンク」か「爆弾こわい」か・・・どちらもお勧めです!

評価:★★★★★

在日ファンク 過去の作品
在日ファンク

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