新生フジファブリックの第1歩
Title:STAR
Musician:フジファブリック
バンドのボーカリストであり、多くの曲の作詞作曲を手がけていた、志村正彦の急逝。バンドにとって存続の危機となる事態を乗り越え、残されたメンバーがとった道は、「フジファブリック」というバンドそのままで、残されたメンバーでバンド活動を続けていく、という道でした。
前作「MUSIC」は、基本的に志村正彦が残したデモ音源を、他のメンバーが完成させた内容でした。しかし、最新作は、残されたメンバーが作詞作曲から演奏、録音まですべて手がけたアルバム。まさに新生フジファブリックの第1歩と言うべき作品と言えるでしょう。
そして、このアルバムに対して、リスナーが抱く感想はそれぞれかもしれません。
「これなら、これからのフジファブリックも大丈夫だ!」
と積極的に評価する方や
「残されたメンバーで、これなら悪くないかも」
と評価しても消極的な方、あるいは
「やはり、志村正彦がいなければダメなんだ・・・」
と否定的な方、様々かと思います。
そういう私は、「思ったより悪くないじゃん」という消極的に評価しつつも、「やはり志村正彦の曲と比べてしまうと・・・」と思ってしまったのが正直な感想です。
残されたメンバーが、フジファブリックというバンドを次に繋げるため、必死にがんばった。その姿勢は痛いほど伝わってきます。「Splash!」など、あきらかに志村正彦の曲を模倣しようとしていますし、その一方で、アイリッシュテイストの「君は炎天下」や、80年代テイストの打ち込みが、逆に新鮮さを感じる「アンダルシア」など、バンドとしての可能性も広げようとがんばっています。
ただ、やはりシンプルながらも妙に耳に残る、志村正彦の書くメロディーラインと比べると、どうしても、「普通のポップス」という印象は否めません。パッと聴いた感じ、インパクトもあり悪くないな、と思うのですが、アルバムを聴き終わった後、どうも後に残る曲が少ないように感じました。
また、ボーカル山内総一郎の声も、どうも淡白で、癖がないというのも、ある種のマイナスポイントかも。メロディーの要素と相まって、爽やかさは増しているものの、さらりと聴き流せてしまう曲が多かったように感じました。
メインライターの突然の死から、メンバーががんばって書いた最初のアルバムなんだから!という意味では、厳しい見方なのかもしれないのですが・・・ただやはり、志村正彦不在の大きさを感じてしまったアルバムでした。もっとも、これから可能性は大きいバンド。次回作以降に期待したいです!
評価:★★★
フジファブリック 過去の作品
TEENAGER
CHRONICLE
MUSIC
SINGLES 2004-2009
ほかに聴いたアルバム
Crossover And Over/BBQ CHICKENS
Ken Yokoyama率いるパンクロックバンド、BBQ CHICKENSまさかの復活!そして約8年ぶりとなるニューアルバムリリース!ただ、そのスタイルは前作からほとんど変わりません。全18曲ながらも、19分強というアルバムの短さ!(1曲あたり平均1分にも満たない!)前作に比べて、もっとハードに、ややメタリックになったのですが、基本的な路線は以前と同じ。ある意味、非常にシンプルで、わかりやすく、割り切りの良さが魅力的です。評価:★★★★
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