幅のあるボーカルが魅力
Title:にじみ
Musician:二階堂和美
先日、TOYOTA ROCK FESTIVALで二階堂和美を見てきました。
もっとも、二階堂和美のライブを見るのはこれがはじめてではなく、昨年の「京都音博」でもステージを見ましたし、もっと前にも1度だけ見たことがあります。昨年の「京都音博」で、その魅力を再認識したのですが、先日のトヨロックで、すっかり二階堂和美のステージにはまってしまいました。
そんな訳で、ちょっとおくればせながら、二階堂和美の最新作を聴いてみました。
ライブでも感じたのですが、このアルバムでも、ひとつ大きな印象に残ったのは、「説教節」や「いつのまにやら現在でした」みたいなナンバー。こぶしが効いたボーカルに、和風のメロディーは、完全に演歌風。ただ、氷川きよしも水森かおりも、最近の演歌歌手の曲には、全く心に響くものを感じられないのですが、彼女の曲は、思わず聴き入ってしまいました。
彼女の曲は、演歌といっても、パターン化されたものではなく、歌詞も女性の心境を素直に描いたもの。様式化されてしまった今の演歌とは、雰囲気は似ているかもしれないものの、似て非なるもの。演歌は日本人の心なる論調はよく耳にしますが、それを言うのなら、二階堂和美の曲こそ、人の(あえて日本人とは言いません)心を見事に歌いきった作品と言えるように思います。
その他にも、基本的に、日本人の琴線に触れそうな、しっかりと歌詞とメロディーをベースとした「歌」が並んでいます。ただ、そんな中で、もうひとつ、大きく印象に残ったのが、彼女のボーカリストとしての幅の広さでした。
基本的に、前述の曲や「女はつらいよ」みたいな、歌謡曲風な曲が多いのですが、同じ和風でも「蝉にたくして」では、ちょっとジャジーな雰囲気ですし、「Blue Moon」は、スティールパンが爽やかな、海辺を思わせるようナンバー。「お別れの時」は、軽快なラテン風のナンバーになっています。
「PUSH DOWN」は、どこかチャイルディッシュに愛嬌たっぷりに歌い上げたかと思えば、続く「ネコとアタシの門出のブルース」では、大人の女性の雰囲気を醸し出しています。かと思えば、「あなたと歩くの」は、恋を知ったばかりの高校生あたりの子のよう。実に多彩なボーカルが魅力的。いろいろなミュージシャンにゲストで参加したりしている彼女ですが、その理由がよくわかります。
ただ、どの曲にも共通しているのが、女性の素直な感情が歌われていること。それも、どこかかわいらしさがどの曲にも感じられます。実際に、ステージで、歌っている彼女は、すごくかわいらしい!思わず彼女に惚れてしまいそうになるアルバムです(笑)。
それだけの名盤なのですが・・・ただ、正直言って、ライブはもっとよかったなぁ(笑)。もっと、楽曲に感情がこもっていましたし、彼女のかわいらしさがもっと伝わってくるようでした。彼女のステージを、是非ともまた見たい!!もちろん、このアルバムも十分お勧めできる1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
勇気/岡村孝子
逆に、岡村孝子のボーカルは幅が狭いなぁ。それでも、これだけ人気を持続できるのは、やはりメロディーメイカーとしての実力と、50歳近くなっても全く衰えをしらないクリアボイスを持っているからなんでしょうが・・・。あみんとしてのアルバムを経て、5年ぶりになる新作。大いなるマンネリは相変わらずで、いい意味でも悪い意味でも安心して聴ける作品。ただ、最後の「夢をあきらめないで2011」は、いまだにこの曲頼みか、と思うのと同時に、他の曲との差が歴然で、勢いのなさを実感してしまいました。
評価:★★★
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