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2011年11月17日 (木)

美しき、ラストアルバム

Title:THE END
Musician:毛皮のマリーズ

THE END【通常盤】

衝撃の解散を発表した、ロックバンド毛皮のマリーズの、文字通りのラストアルバム。

つーか、前作「ティン・パン・アレイ」も、バンドの要素を排除した、志磨遼平の事実上のソロアルバムだったわけで、セオリーで行けば、バンド解散というのは、予想していた通り、と言えるのかもしれません。

今回のアルバムも、音的には「ティン・パン・アレイ」の延長。バンドサウンドこそ入っていますが、おそらく、志磨遼平にとっては、既に自分のやりたい音楽に、毛皮のマリーズというバンドが不要になってしまった、ということでしょう。

そして志磨のやりたい音楽はおそらくロックではなく、ポップス。もともと、以前から、様々なポップスの要素をアルバムに入れていましたし、メロディーラインもいたってメロディアス。その以前からやりたかったことを、「ティン・パン・アレイ」で、そしてこのアルバムで、ようやく演ることが出来たのではないでしょうか?

以前からのファンにとっては、ポップ路線に振り切ったこのアルバムに関しては、かなり否定的な意見も少なくないみたいです。また、ポップスに求められるのは、ロックのような先駆性よりも、普遍性。そういう意味で、このアルバムには新しさは感じられませんし、そういう観点からも、否定的な見方も少なくないようです。

ただ、それ以上にこのアルバムで感じられたのは、好きなポップスを、好きに奏でられるという志磨遼平の、音楽に対する純粋な愛情でした。そのため、どの曲も、とてもメロディアスでキュート。なによりもまず第一に、純粋にポップな音楽を楽しめたアルバムで、個人的には、このアルバム、傑作だと思っています。

解散を意識してか、全体的に悲しい内容の歌詞が並んでいて、「陽」の「ティン・パン・アレイ」に対して「陰」のアルバム、と位置づけられることもあります。ただ、聴いていて、身につまされる悲しさ、というのは感じられません。ある種、劇場で演じられる悲劇のように、一歩下がって客観的に、「毛皮のマリーズの解散劇」というのを見ているような、そんな感触のあるアルバムだったような気がします。

それもまた、このアルバムがロックではなく、ポップスのアルバムだから。甘いキュートなサウンドが、コーティングのように、アルバムの悲劇性を包み込んで、ポップなアルバムに仕上げていています。激しいバンドサウンドで感情をむき出しにするロックはノンフィクションの世界だとすると、甘いサウンドとメロディーで覆い隠すポップの世界は、いわばフィクションの世界ということでしょう。

そういう意味で、ラストの「THE END」がガレージロックの作品になっている、というのは、原点回帰的な意味もある一方、感情的なバンドサウンドを前に押し出すことによって、毛皮のマリーズの本音を、最後に覗かせたエンディングと言えるのかもしれません。

解散への流れも納得な上に、非常によく出来たラストアルバムだと思います。いろいろな意見があるみたいですが、バンドの締めくくりとしては、最高のエンディングだったのではないでしょうか?美しく最後を締めくくった、傑作アルバムです。

評価:★★★★★

毛皮のマリーズ 過去の作品
毛皮のマリーズ
ティン・パン・アレイ


ほかに聴いたアルバム

WHITE/アンジェラ・アキ

WHITE

正直なところ、アルバムの中に妙にカバー曲が多いんですよね。それが、アルバム全体の流れをぶっちぎっているというか・・・。ユニクロのCMで歌った「津軽海峡・冬景色」が、まさかアルバムの3曲目に入ってくるとは思いませんでした。アルバムの中で浮きまくっています(^^;;全体的には、ピアノをメインに押し出して、彼女の歌を前に出してくるスタイルで、楽曲の良さは安定しています。特に、車をテーマに人生を歌った、「目撃車」は、ビリー・ジョエルばりのピアノが心地よい傑作。ただ、アルバムを通して聴くと、少々チグハグな印象を持ってしまう構成が惜しいところです。

評価:★★★★

アンジェラ・アキ 過去の作品
ANSWER
LIFE

LIFE WORKS JOURNEY/FLYING KIDS

LIFE WORKS JOURNEY

再結成後、2作目となるFLYING KIDSの新作。ファンキーなリズムと、メロウでポップなメロディーラインは相変わらず健在。再結成後、きちんと2作目をつくってくるあたり、今後の恒常的な活動も期待できます。ただ、楽曲全体は、悪い意味でこなれた感が否めず、FLYING KIDSらしさは出ている反面、少々マンネリ気味では?と思ってしまうあたりも。もうちょっとインパクトのある曲が欲しかったかも。

評価:★★★

FLYING KIDS 過去の作品
EVOLUTION

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