統一感のあるアルバム
Title:8EIGHT8
Musician:木村カエラ
結婚・出産を経て、2年4ヶ月ぶりにリリースされた、木村カエラのニューアルバム。
いままで、木村カエラのアルバムといえば、豪華なミュージシャンたちが多数参加し、話題になる、ということがいつものパターンだったのですが、今回のアルバムは、ASPARAGUSの渡邊忍が全曲を作曲・プロデュースしたアルバムになっています。
そのため、いままでのアルバムに比べると、アルバム全体のバランスは、非常によくなっていたものとなっています。
同一人物が作曲を手がけたとはいえ、それなりにバリエーションのある展開になっていて、序盤の「Make my day!」から「8EIGHT8」は、ギターロック。先行シングルにもなっている「Ring a Ding Dong」や「A winter fairy is melting a snowman」はかわいらしいポップソングに仕上がっていますし、「ホシノタネ」ではシンセを導入したポップソングを聴かせてくれ、最後の「チョコレート」は、アコースティックなポップチューンで締めくくっています。
統一感を持ちながらも、バリエーションのある展開で飽きさせない点、渡邊忍の実力を感じます。ただ、一方で、サブカル系ミュージシャンたちが彼女をつかって伸び伸びと楽曲を提供できる、いわばサブカル系ミュージシャンたちの「おもちゃ」的な位置付けがなくなり、意外なミュージシャンによるポップソングを聴けるという、意外性は薄れました。
そして、そういう「おもちゃ」的な位置付けがなくなっただけに、もっと木村カエラ本人のボーカリストとしての実力が試された作品だったと思います。そんな中でも、彼女はいい意味でも悪い意味でもいつも通り。明るくかわいらしいボーカルを聴かせてくれています。
それはまた、彼女の良さでもあると思う一方、例えば結婚・出産を経ても、そんな体験が楽曲にはほとんど反映されていませんでしたし、木村カエラならではの個性がちょっと薄かったようにも感じました。
アルバム全体としては良くできたポップスアルバムだと思います。ただ、アルバム全体を1人のミュージシャンに任せ、次の一歩に進もうとしているのですが、ボーカリスト木村カエラが、その一歩をいまひとつ踏み出せていないかなぁ・・・とも感じてしまったアルバムでした。
評価:★★★★
木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
ほかに聴いたアルバム
TOXIC/the GazettE
今年のサマソニではじめてステージを見た、the GazettEの新作。以前に比べて、打ち込みを導入したり、より音楽的な幅を増やしてきているような印象を受けます。「RED」あたりは、いかにもヴィジュアル系っぽいメロなのですが、ポップでインパクトもあり、その一方、そのウラではきちんとハードなバンドサウンドを鳴らしています。さらなる成長を感じさせる作品。ちょっと耽美的な、いわばヴィジュアル系っぽい雰囲気は好き嫌いが残りますが、次回作も楽しみになってきます。評価:★★★★
the GazettE 過去の作品
TRACES BEST OF 2005-2009
DIM
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