明日の希望を歌い上げる
Title:Ray Of Hope
Musician:山下達郎
3月11日の震災の後、多くのミュージシャンが震災からの影響を口にしました。ある人はストレートにこの震災について歌い、ある人は、被災者へのエールを歌にしました。
山下達郎の6年ぶりとなる新作は、もともと1年前にリリースが予定していたそうです。しかし、その後のコンサートツアーで延期となり、さらに、その後の3月11日の件が大きな影響を受けてのリリースとなりました。
そして、リリースされた今回のアルバムは、タイトルの通り、未来への希望にあふれた作品になっています。
もともと、山下達郎の曲は、未来に対しての希望を歌っているというイメージが強いのですが、今回のアルバムに関しては、そのイメージが、さらに強くなっているように感じました。
しかし、それは必ずしも震災の影響をストレートに受けての作品、ではないそうです。例えば「希望という名の光」。これは、もともと先行シングルとして、昨年リリースされていましたが、まさに震災後の今の日本にとって、奇しくもピッタリとあてはまるエールのような作品になっています。
逆に「MY MORNING PRAYER」は東日本大震災と、それに伴う原発事故を受けて、あらためて歌詞を書き直した曲だそうで、まさに震災からの影響をストレートに受けた歌詞が印象的。前向きに希望を感じさせる歌詞は、胸をうちます。個人的に印象的だったのが
「あふれるその悲しみ
僕には消せないけど
せめてこのメロディー
あなたをはげませたら」
(「MY MORNING PRAYER」より 作詞 山下達郎)
という一節。まさにミュージシャンだからこそ書ける一節ですし、また、ミュージシャンだからこそ、書かなければいけない一節。感動しました。
アルバム全体としては、本人曰く「人生のアルバム」だそうですが、全体的に前向きの希望があふれていて、聴いていて無条件で楽しくなってくるようなアルバムでした。そして、この「無条件で楽しめる」というのが、最高のポップスアルバムの条件ですよね。クオリティーの高さはいまさら言うまでもありませんが、今の時代だからこそ、楽しみたい傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
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