惰性のアルバム
Title:Serendipity
Musician:渡辺美里
オリジナルアルバムとしては、4年ぶりのニューアルバムとなる渡辺美里。かつては、夏の代名詞として、毎年7月にアルバムをリリースしていましたが、最近は、オリジナルアルバムのリリース間隔も、すっかり開くようになってしまいました・・・。
そんな久しぶりのニューアルバムなのですが、感想は?と言われると、正直、困ってしまいます。一言で言うと、特に感想がない(苦笑)。
ちょっと厳しいことを言ってしまうと、完全に惰性のアルバムといった感じがします。一応、活動を続けている以上、何かつくらなければいけないのでつくった。そんな感じ。
全く聴けない駄作か、と言われると、そうでもありません。佐橋佳幸が作曲、編曲を手がけた「ロマンティック・ボヘミアン」なんかは、美里らしいポップスロックのナンバーといった感じがしますし、盟友の大江千里も何曲か提供しています。一方では、作曲陣には、100sの山口寛雄や、SUEMITSU&THE SUEMITHこと末光篤も参加したりもしています。
1曲1曲に関しては、決して悪い曲ではありません。ただ、一方では、これといったキラーチューンもなく、また楽曲に関しても勢い不足。大江千里には、正直、かつてのような勢いは感じられず、山口寛雄や末光篤も、もちろん才能あるミュージシャンなのですが、残念ながら、80年代の小室哲哉や岡村靖幸には及びません。
あと、歌詞もなぁ・・・。かつての美里の歌詞は、同年代の若者の心情を見事に捕らえた歌詞が非常に魅力的なのですが、残念ながら、このアルバムの歌詞の世界は、あの時代、中高生だった・・・いまはおそらく30代後半から40代の人たちの心情を描いた、とはいえません。
もうひとつ気になるのが肝心のボーカル。悪い意味でこなれた感があって、平坦な感じがするんですよね。もちろん、声量は安定していて、安心して聴けるんですが、昔のボーカルの方が、ちょっと危うかった反面、感情がもっとこもっていたように感じるんですよね・・・。
新たなものに挑戦するわけではなく、原点回帰をする訳でもなく、なんとなく、4年も間があいちゃったので、とりあえず作りました、的な印象がぬぐえない、そういう意味で、惰性のアルバムといった感想を持ってしまいました。まあ、無理に背伸びしたり、無理に今風を気取ったりして、痛い作品をつくってしまうよりは、よっぽどいいとは思うのですが。
評価:★★★
渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
ほかに聴いたアルバム
Choice/NONA REEVES
アメリカでもっとも権威のあるヒットチャート、Billboard。2007年には日本にも進出に、ヒットチャートを公表していますが、今回、なんと「Billboard Records」というレーベルを立ち上げました。その第1弾が、NONA REEVESによるカバーアルバム。ヒットチャートが、もっとも輝いていた80年代のヒット曲をカバーした今回のアルバム。まさに、「Billboard Records」第1弾としてはうってつけのアルバムでしょう。
カバーに関しては、必要以上に独自の味付けをしないで、元曲の良さそのままに歌い上げています。その中でも、もっとも力が入っているのは、やはりマイケル・ジャクソンのカバー「Smooth Criminal」でしょう。NONA REEVESの西寺郷太は、マイケルを敬愛してやまず、マイケル・ジャクソンの研究家としておなじみですが、このカバーでは、完全にマイケルになりきっています(笑)。そのうち、まるごとマイケル・ジャクソンのカバー曲でまとめられたカバーアルバムを出しそうだな(笑)。
他もプリンスやビリージョエル、イーグルスなどのカバーに対しても、愛情の感じられるカバーにまとめています。本当にポップミュージシャンを愛しているのカバーなんだなぁ、ということが、強く感じられる1枚でした。
評価:★★★★★
NONA REEVES 過去の作品
GO
OUTTA HERE/COMEBACK MY DAUGHTERS
約2年9ヶ月ぶりのニューアルバム。フォーキーなメロディーラインが魅力的。その美メロにしんみり聴きほれちゃう一方、もう一歩、キラーチューンがなく、アルバム全体としてインパクトが薄めなのがちょっと気になるかも。
評価:★★★★
COME BACK MY DAUGHTERS 過去の作品
EXPerience
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