R&Bシンガーでもソウルシンガーでもなく・・・
Title:JAPANESE SINGER
Musician:平井堅
正直言って、ここ最近、平井堅人気に、陰りが見えてきています。
このアルバムにも収録されている「いとしき日々よ」は、大ヒットしたドラマ「JIN」の主題歌+王道バラードという、鉄板の組み合わせにも関わらず、結果はドラマの人気に反比例するかのような大コケ。このアルバムも、最高位3位、初動売上は前作から10万枚以上ダウンする6万枚止まり。もちろん、まだまだ十分ベスト10ヒットをリリースできる人気は獲得しているものの、売上面ではちょっと厳しい状況になっています。
「曲の良し悪しと売上は関係ない!」・・・というのは確かに事実なのですが、往々にして、ベスト10ヒットを連発する人気ミュージシャンは、人気が落ちてくると、曲の出来も悪くなるものですが・・・・・・しかし、彼の場合、この最新アルバムを聴くと、全盛期かのような勢いを感じる名曲揃いのアルバムになっていました!
「JAPANESE SINGER」という、かなり大胆不敵なタイトルなのですが(前作のタイトル「FAKIN' POP」というのも挑戦的だったよなぁ~)、彼の音楽性は、実に雑食性。R&Bシンガーでも、ソウルシンガーでもないんですよね。そういう意味では、「JAPANESE SINGER」というタイトルは、彼にピッタリの称号かもしれません。
実際、ゴスペル風の「Sing Forever」からスタートし、「僕は君に恋をする」は、彼らしい王道バラードなのですが、R&Bテイストは薄め。かといえば、タイトルそのもの「R&B」は、クラブ系のエレクトロナンバーなのが印象的ですし、「Girls 3x」はどファンキー(笑)な作品。かと思えば「BLIND」の哀愁ただようメロは歌謡曲風ですし、続く「Miss サマータイム」はラテンチューン・・・と次々といろいろなタイプの曲が並んでいて、最後まで飽きさせません。
そして、どの曲もポップスとして実に魅力的。妙味あるメロディーラインに、男性心理を上手く読み込んだ歌詞を、彼の叙情あふれるボーカルでしっかりと歌い上げます。シングル曲も多く収録されているこのアルバムですが、どの曲もシングルカットできそうなクオリティー高い曲が並んでいて、シングル曲が決して浮いていません。
今回、久しぶりに松尾潔がトータル・プロデューサーとしてアルバムに参加していますが、彼との相性はやはりいいのでしょうか?音楽的に様々な引き出しのある平井堅というミュージシャンの魅力を見事に引き出していた傑作のように感じます。
正直、彼って、固定ファンが少なく、それだけに、一度人気が落ち始めると、一気に・・・という危険性があるのが心配なのですが・・・これだけの曲をコンスタントにリリースしていながら、なんでなかなか固定ファンがつかないのか不思議で・・・。また、近いうちに大ヒットを飛ばしてくれる、と思うんですけどね~。
評価:★★★★★
平井堅 過去の作品
FAKIN' POP
Ken's Bar II
Ken Hirai 15th Anniversary c/w Collection '95-'10 ”裏 歌バカ”
ほかに聴いたアルバム
心ノ底ニ灯火トモセ/eastern youth
約1年9ヶ月ぶりとなるニューアルバム。2009年にはボーカル吉野寿が心筋梗塞で倒れ、緊急手術を受ける事態になるなど、心配されましたが、見事に復活。やはりその病気の影響でしょうか?力強く今を生きる人々を描いた歌詞が印象的。もともとから前向きな力強さを感じるバンドでしたが、それをさらに強く印象に受けた作品に。東日本大震災後の日本にもエールを送るようなアルバムでした。評価:★★★★
eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006
歩幅と太陽
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