情感たっぷりの歌詞に共感
中村中というミュージシャン、このサイトでも何度か取り上げていますが、そうでなくても名前を聴いたことある方は多いのではないでしょうか?性同一障害であるということ、女性として活動しているものの、戸籍上は男性であることを公表し、話題になり、2007年の紅白歌合戦でも紅組として登場しました。
そんな彼女の、ベスト盤と、セルフカバーアルバムが、同時に発売されました。
Title:若気の至り
Musician:中村中
で、まずこちらがベストアルバム。シングル曲を中心に、彼女の代表曲が並んでいます。
彼女の曲に出てくる主人公たちの恋愛は、どこかむくわれず、そして、そんな恋愛に一種の情念みたいなものを感じます。
ベスト盤に入っている曲の中で、特に印象に残り、かつ、怖さを感じたのが「AM零時」で、
「海が見えても 真っ直ぐ行きませんか
崖が見えても 真っ直ぐにしませんか
空が見えたら 後は任せてみませんか
今より 側に 行ける気がしませんか」
(「AM零時」より 作詞 中村中)
多分、主人公は、叶わぬ恋の相手とドライブしているんですよね。むくわれない恋愛の中に生きる主人公の姿に、聴いていて思わずゾクゾクしてしまいます。正直、リアリティーという観点からすると、身近な恋愛、ではないかもしれません。でも、どこか共感をおぼえ、主人公に惹かれるのではなぜでしょうか?そして、それが彼女の曲の大きな魅力なのでしょう。
楽曲自体も、「まだ熱いくちびる」のように、歌詞の世界にマッチしている歌謡曲風の曲が多いものの、ロックテイストの「私の中の『いい女』」や、ブルージーな「雨のロマンス」などバリエーションも豊富で、最後まで楽しめます。
・・・・・・と、歌詞も楽曲自体も文句なし。それだけに、もっと売れてもいいミュージシャンだと思うんですけどね~。下手に紅白に出ちゃって、名前だけ売れちゃっただけに、なかなかブレイクしきれないのかなぁ。名前は知っていても、彼女の曲を聴いたことない方は、このアルバムを、是非。
評価:★★★★★
Title:二番煎じ
Musician:中村中
で、こちらは同時にリリースされたセルフカバーアルバム。戸田恵子、ジェロ、スタレビ、そして由紀かおりに提供した曲が5曲収録されています。世界観、という観点では、他人に提供した曲であるため、中村中らしさはちょっと薄めなのですが、どの曲も魅力的で、メロディーメイカーとしての彼女の実力が発揮されています。特に、ジェロに提供した「手紙を書いてよ」は、情感たっぷりの美メロが素晴らしい!今後は、作家としての活躍もかなり期待できそう。
評価:★★★★
中村中 過去の作品
私を抱いて下さい
あしたは晴れますように
少年少女
ほかに聴いたアルバム
YELLOW FUNK/DOPING PANDA
前作「anthem」は、様々な音を取り込んだ実験的な作風でした。今回も、ちょっとアフロビートちっくな「song of my harmonics」やラテンテイストを取り入れた「de la papa」などのバリエーションが楽しめます。もっとも、アルバム全体としては、ダンスチューンがメイン。なのですが、思いっきり踊れそう・・・というよりも、熱量はちょっと控えめ。曲の中で妙に哀愁のあるメロディーが印象に残ります。このダンスチューンとメロのバランスが彼ららしさなのかなぁ。ただ、個人的には、もっと突き抜けてくれた方が、楽しそうなのですが・・・。
評価:★★★★
DOPING PANDA 過去の作品
Dopamaniacs
decadance
anthem
THE BEST OF DOPING PANDA
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2011年」カテゴリの記事
- これもくるりの最新作(2011.12.27)
- 牧歌的な暖かい作品(2011.12.24)
- 日常と非日常の間(2011.12.22)
- キリンジの意外な側面(2011.12.20)
- ソロアルバムらしいソロアルバム(2011.12.19)
コメント