最後のグループサウンズ
Title:THE CAPTAINS ANTHOLOGY
Musician:ザ・キャプテンズ
ひとつのキャラクターを作り上げて、そのキャラクターを演じるミュージシャンって、少なくありませんよね。邦楽で、典型例として、悪魔を演じる(「演じる」といったら「信者」に怒られそうですが(笑))聖飢魔IIなんかが典型例だと思うのですが、ザ・キャプテンズなども、そのキャラクターを演じているバンドのひとつ。自称「最後のグループサウンズ」と名乗る彼らは、その姿かたちから、60年代後半に一世を風靡したGSバンドそのものを演じています。
今回発売されたのは、結成10周年を総括する意味合いでリリースされたベスト盤。曲名を見てみると、いかにもなタイトルの曲が並んでいます。ただ、グループサウンズからの影響という意味では、本格的なグループサウンズバンドにダイレクトに影響を受けた、というよりもあくまでも「いかにもグループサウンズ」というイメージを取り入れている感じかな、と思いました。
実際、「ハートにピットイン」とか「恋のゼロハン」などは、60年代の歌謡曲を強く意識されるのですが、「黄昏流星群」や「月影ロマンス」あたりは、60年代というよりもむしろ80年代のアイドル歌謡曲を思い出す作品になっていますし、「ひまわりの丘」はフォーク、「フユノホタル」はアレンジが大滝詠一風ですし、「薔薇の檻」はむしろ演歌の香りすら・・・(笑)。
ただ、逆に言えば、それだけ楽曲のバリエーションも多かったですし、グループサウンズをそのまま取り入れるのではなく、あくまでも2011年の音としてアップデートしているとも解釈できるのかも。
その一方で、グループサウンズは、ブリティッシュビートやガレージ、サイケなどの影響を強く感じる曲も少なくないのですが、そこらへんの影響を感じられなかったのはちょっと残念。良くも悪くも、メロディーと歌詞がメインで、ロックバンドとしての要素はちょっと薄めだったかなぁ、と感じました。
実はザ・キャプテンズ、ボーカルの傷彦が、昨年11月、突然の意識不明となり入院。検査の結果、脳腫瘍と判明し、現在、活動を休止しています。手術は成功し、現在、回復に向かっているようで、Twitterなどでも元気な書き込みを続けているみたいで一安心ですが、まだまだ心配なところ。はやく元気な姿でステージに復活して、その華麗なパフォーマンスを再び魅せてほしいところです。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
COLORS/清水翔太
清水翔太の3枚目となるニューアルバム。全編、しっとりとしたボーカルを聴かせるミディアムテンポのナンバーがメイン。一方で、「GOODBYE」ではエレクトロテイストを入れてきたり、「Winter Love Song」でははやりの(・・・というのは終わったか?)いわゆる「ロボ声」を入れてきたりと、バリエーションが多く、最後まで楽しめます。尾崎豊のカバー「Forget-me-not」も、切ない歌い方がなかなか良い感じ。「君が暮らす街」は、別れた彼女を思い出す、切なく、ドラマ性ある歌詞が、ちょっと槇原敬之っぽくて、個人的には好きな曲です。ただ、ちょっとボーカルの線が細い感じがするのが残念な感じ。まあ、切ない雰囲気を出しているという意味では、長所にもなりうるといえば、なりうるのですが・・・。
評価:★★★★
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