さらに多くのミュージシャンたちが参加
先日、ここのサイトでも紹介した、音楽配信サイトOTOTOYからリリースされた、東日本大震災の被災者へのチャリティーアルバム「Play for Japan」。3月17日にはVol.1からVol.6までリリースされましたが、続いて4月1日から、Vol.7からVol.10がリリースされました。今回リリースされた作品は、全曲、新曲or未発表or新録だとか。あくまでも即時性を重視したVol.6まで。そして、単なる寄せ集めではなく、リスナーを喜ばせることも重視したVol.7以降。数多くのチャリティーアルバムがリリースされる中、しっかりリスナーの側のことも考えられた、ある意味、理想的なチャリティーアルバムかもしれません。
Title:Play for Japan Vol.7
まずVol.7。目玉はやはりラストを飾るソウル・フラワー・ユニオンの中川敬。提供された「ひかり」は、今度リリースされる、ソロでのアコースティックアルバムに収録された曲の、デモヴァージョンらしいです。ソウル・フラワー・ユニオンといえば、阪神淡路大震災の時、いち早く現場にかけつけ、昔のヒット曲を歌い、現地の人たちを勇気付けて話題となりました。今回提供された「ひかり」も、力強い中川敬のボーカルが、アコースティックギターに載せて歌われる聴かせるナンバー。この企画にもピッタリの名曲です。
そして、それ以上にこのアルバムで注目したいのは、このアルバムの1曲目を飾るMOROHAの「今、偽善者の先頭で」でしょう。「出れんの!?サマソニ!?」で曽我部恵一賞を受賞した2人組のHIP HOPユニット。この曲は、まさに東日本大震災について歌われた歌で、ラップというよりもポエトリーリーディング。「偽りで救える本物の命」というフレーズが、非常に心につきささります。この1曲のためだけでもこのアルバムは買い!MOROHAというユニット、要注目。アルバムも買おうかなぁ・・・。
このアルバムは、MOROHAもある意味そうなのですが、アコースティックなサウンドで、力強い歌を聴かせるミュージシャンがメイン。その中で、他には、シューゲイザーなポップサウンドが思いっきり壺にはまったPLASTIC GIRL IN CLOSETの「Collage Flowers」、ミニマル風なアコギの音と打ち込みのリズムのバランスがおもしろいswimmingpoo1の「心呼吸」、浮遊感あふれるダビーなポップを聴かせるacari「窓の向こう側」、リバーブをかけまくったギターポップに、切ないメロが良いカナタトクラス「東京」、ちょっとエキゾチックな雰囲気のギターに、浮遊感のある音づくりが独特の雰囲気を奏でるツチヤニボンド「通りすがり」がよかったなぁ。
評価:★★★★
Title:Play for Japan Vol.8
Vol.8は、全体的にHIP HOPやエレクトロの曲を中心とした構成。MACKA-CHINやjoseph nothingなども参加しています。joseph nothingの「Shambhala antii-HAARP orchestra」は、どこか流れるメロディーに和風なものを感じて、妙に耳に残る印象的なエレクトロチューンでした。
ラップでは、HAIIRO DE ROSSIの「PRAY FOR JAPAN」のように、ストレートに東日本大震災のことを歌ったような曲もありました(正直、この曲は個人的にはちょっとストレートすぎるように感じて、いまひとつだったのですが・・・)。個人的に良かったのがBUPPONの「帰路」。別れと新たな旅立ちを、普通の街並みを舞台に歌い上げるこのナンバーは、心に響くナンバーでした。
他には・・・ちょっとレイハラカミっぽいのですが、暖かみを帯びたようなエレクトロサウンドが印象的だったTREMORELAの「Inner Song」、爽やかなピアノのリフが印象的なメロコアの楽曲が、エレクトロ風にリミックスされていたthe SHUWAの「LET ME BE YOUR LIFE(DJ PSYCHE SAY BOOM Re-Mix)」、牧歌的な雰囲気に暖かさを感じるFLOWER TRIANGLE feat.佐立努の「tamayura」、ダイナミックなバンドとピアノの音が印象的な(名前も印象的な(笑))ときめき☆ジャンボジャンボの「Nina」、典型的な宅録のインディーポップといった感じで、ポップで楽しいJUICEBOXXX「NEVER SURRENDER FOREVER(DEMO)」が良かったです。
評価:★★★★
Title:Play for Japan Vol.9
Vol.9は、ロックやフォークを中心とした構成。Vol.5でも参加した柳原陽一郎が本作でも参加しています。
このVol.9の中では、白波多カミンの「size」が良かったなぁ。ちょっと懐かしさを感じる和風なメロディーに、かわいらしくも切ない感じのボーカルが良かったです。切なさを感じる歌詞も良い!
ちょっと変わったところでは、民謡風のメロに、パーカッションのリズムがおもしろいキツネの嫁入りという一風変わった名前のミュージシャンによる「koe」。独特な雰囲気を醸し出しているミュージシャンでした。
他には、USインディーの影響を強く受けたような、骨太のロックサウンドを聴かせてくれるBALLOONSの「a black rectangle(Tsubame Version)」、女性ボーカルのオルタナ系ギターロックを聴かせてくれるBEAT CARAVAN「Time has come」、壮大さを感じる美しいメロディーが印象的な、ピアノとストリングス中心のインスト曲Vampiliaの「scene」がなかなか良かったです。
評価:★★★★
Title:Play for Japan Vol.10
そしてラストを飾るVol.10。坂本美雨や綾戸智恵も参加し、ラストを盛り上げます。アルバム全体としては、エレクトロニカやポストロックにカテゴライズされそうな曲を中心に構成されていました。
このアルバムに収録されている曲では・・・ちょっとフォーキーなメロと、リズミカルなアレンジの対比がおもしろいPADOKの「直江津」、爽やかなギターサウンドが心地よいShinsaku Moriyama from PETSETの「One Light Blues」、どこか明日への希望を感じるラップが印象的なimaginion+Tyme.の「Ten to Sen」、ドリーミーなシューゲイザーサウンドが、完全に好みな(笑)monocismの「Kokuu」あたりがなかなか良かったです。
そして、最後を飾るのが綾戸智恵の「Amazing Grace」。日本人にもおなじみの、ゴスペルのスタンダードナンバーですね。綾戸智恵のボーカルは、非常にパワフルで、感情のこもったボーカルは、聴いていて涙腺がゆるんでしまうほど。最後を飾るにふさわしい楽曲になっていました。
評価:★★★★
Vol.1から6までふくめて、おなかいっぱいといった感じのコンピレーションアルバム。しかし、おかげで様々な素晴らしいミュージシャンたちに出会うことも出来ました。ただひとつ非常に残念なのは、このアルバムの配信が、今年の6月いっぱいまで、という点。いまの状況を考えると、6月以降も、様々な支援が必要だと思うのですが・・・。せめて1年(これでも短いと思うのですが)くらいに、期間を延長してくれないかなぁ。
このアルバムを、1人でも多くの方に聴いてもらって、少しでも、被災地の方の力になればいいと思うのですが。Vol.10全部とはいいません。気になる曲があれば、是非!
OTOTOYの配信サイトはこちら→Vol.1~Vol.6 Vol.7~Vol.10
Vol.6以前の感想
Play for Japan Vol.1~Vol.3
Play for Japan Vol.4~Vol.6
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