私たちに出来ること
3月11日、東北関東を突然襲った東日本大震災。多くの犠牲者を出し、多くの方が、いまなお先の見えない避難生活を続けています。そんな中、少しでもそんな被災者の力になろうと、チャリティーアルバムが多く発売されています。その先陣を切ったのが、このサイトでもよく紹介している音楽配信サイトOTOTOYでした。
なんと全112組ものミュージシャンが参加。全6枚組となる東日本大震災への被災支援コンピレーションアルバムが「Play for Japan」。基本的には既発表曲によるコンピなのですが、その112組112曲というボリュームの多さも驚きなのですが、それ以上に驚かされたのは、このアルバムのリリースが3月17日。実質、5日間の作業で完成した、という点でしょう。この企画を1日も早く世に出して、少しでも早く多くの義援金を集めようとがんばったスタッフのみなさんにも頭が下がりますが、ネット配信というスタイルだったからこそ、こういう短いスパンでのリリースが可能となったのでしょう。
今回の大震災では、よくも悪くもネットの力というのを強く感じました。様々な情報提供が即時にネットを通じて行われ、ネットのメリットを多く感じる一方、あまりにも多くの情報量に困惑してしまったり、デマや無責任な情報も垂れ流されたり、ネットのデメリットも多く感じました。その中で、こういうチャリティーアルバムをすばやくリリースできた、というのは、ネットの大きな力を感じる出来事でした。
また、音楽ファンにとっても、こういう形でコンピレーションアルバムを購入することによって、被災者の力になれるというのはうれしい話。これを機会に新しいミュージシャンに出会えるきっかけにもなります。ここ最近、下手すれば自粛自粛のムードで、日本全体が停滞しかねない事態となっていますが、音楽ファンは、こういうアルバムを買うことによって、微力なりとも被災者の力になる一方、素直に音楽を楽しめばいいんじゃないか、それが私たちに出来ることではないか、そう思います。
で、例によって感想なのですが、全6枚112曲というボリュームなので、2回にわけて・・・。
Title:Play for Japan Vol.1
まず1枚目。クラムボン、MONO、world's end girlfriendが参加しているこのコンピレーションは、全体的に、ポストロックとかエレクトロニカとかいう言葉でカテゴライズされそうなミュージシャンの曲が多く並んでいました。
このコンピレーションの冒頭を飾るのは4人組バンドnumber0の「cyclorama」。シガーロスを彷彿とさせるクリアで幻想的なサウンドとボイスが素晴らしく印象的でした。他にも大阪の4人組バンドclamsの「Sundae Bird」は、ジザメリ直系のノイジーでポップなギターロックが個人的には壺!(笑)MONOの「Follow The Map」で魅せてくれたあまりにも美しい音の世界も良かった。また、これらの曲とタイプは異なりますが、黒田晃太郎のソロユニット、フラバルスの「We」もアコギとピアノで奏でるフォーキーなメロディーが、どこかノスタルジーを感じさせ、強い印象に残りました。
評価:★★★★
Title:Play for Japan Vol.2
こちらには、ハリー細野こと細野晴臣や菊地成孔、沖仁などが参加したアルバム。全体的には、フォーキーな曲がメインとなる構成になっています。
さて、この中で注目なのは2曲目。ショピンというユニークなミュージシャンの声、どこかで聴き覚えありませんか??ショピンのボーカル野々歩は、最近すっかりおなじみACのCM「あいさつの魔法」、そうあの「ぽぽぽぽ~ん!」を歌っている本人!このコンピに提供している「くじらが浮かぶ日」も、たま、キセルあたりからの直系の浮遊感あるアコースティックポップで、なかなか良かったです。
他には、ダブ・バンドsuperdumbのダビーで空を飛んでいるような「trafficlight」や、爽やかなギターの音色と、それに重なる畠山美由紀(今回、甚大な被害を受けた気仙沼出身らしいです・・・)のボーカルが美しい、沖仁の「Will I ever see your face again」、レトロなガールズポップが楽しい(個人的には、ディズニー映画を思い出しました)コシミハルの「トロリー・ソング」が良かったです。
その他にも、タイトル通りユーモラスでインパクトのある楽しいポップチューンDODDODO「猫がニャ~て犬がワンッ」や、スペーシーな音が重なるだけで、独特の世界を構築していたShinji Masukoの「Inner Structure」もインパクト大のコンピでした。
評価:★★★★★
Title:Play for Japan Vol.3
Vol.3には、audio activeが参加。audio activeの「Freeeeeze」も素晴らしかったのですが、他にももちろん多くの良曲が。全体的に打ち込みや実験的な音使いをしているものの、ポップにまとめあげているミュージシャンの曲が多かった、印象がありました。
中でも一番印象に残ったのは(このコンピレーション全体でも一番印象に残りました)男性ラッパー不可思議/wonderboyの「生きる」。谷川俊太郎の詩にラップをつけた内容なのですが、歌詞の内容も、震災で生き残った被災者の方へのエールとも受け取れる内容。一言一言噛み締めるような彼のラップも強く心に響きました。
他にもアコギのみでちょっとジャジーなポップを聴かせるイケガミキヨシのソロプロジェクトJAZZIDA GRANDEの「Free」や静かなリズムが美しいPawn,Geskiaのエレクトロニカチューン「Oven Sink Perfect Remix」、女性2人組ユニットJB(ある意味、すごいユニット名だな・・・)のほっこりとしたフォークソング「at home」、アメリカのアンダーグラウンドシーンのジャズミュージシャンKip Hanrahanの「A Small Map of Heaven」あたりが良かったです。
評価:★★★★
Vol.4~6の感想は明日のチャート評をはさんで土曜日に。ちなみにダウンロードはこちらのサイトから。1枚1,000円で、クレジット決済手数料などをのぞいて全額寄付されるそうです。OTOTOYでは、既にVol.7~10までの販売もスタート。こちらも近いうちに聴いてみる予定です。
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