「日常」を描いた作品、だけど。
Title:POP LIFE
Musician:RHYMESTER
前作「マニフェスト」は、4年のインターバルをあけての久しぶりの新譜だったのですが、続く本作「POP LIFE」は、前作からわずか1年弱という期間でのリリースとなりました。冒頭のイントロは、「マニフェスト」の最後「ラストヴァース」のトラックがそのまま用いられていて、いわば、前作の「続編」的な位置付けになるのでしょうか?
「POP LIFE」というタイトルのためでしょうか?アルバム全体としてはアップテンポでポップ。いい意味で聴きやすい楽曲が並んでいます。表題曲「POP LIFE」のように、メロウに聴かせるナンバーもありますが、テンポのよいサウンドに、軽快なラップがのる楽曲は、いい意味でポピュラリティーがあり、ラップを普段聴かないような層を含む、広いリスナー層が楽しめそうな作風になっています。
ただ、今回の「POP LIFE」というタイトルは、決してポップな楽曲という意味ではありません(まあ、そういう意味も含んでいるのかもしれませんが)。今回のテーマは「生活レベルの喜怒哀楽」だそうで、日常的な描写が多く含まれる内容になっている
・・・・・・
・・・と思ったら、必ずしもそうとは限らないのが彼ららしいんだよな(笑)。
ユニークなのは「ザ・ネイバーズ」。たんなるお隣さんとのいざこざの話し・・・かと思いきや、誰がどう聴いても日中関係を皮肉った歌詞が非常にユニーク。かなり際どいリリックもあり、思わず「ニヤリ」としてしまいそうな内容です。
また、「Hands」なども、社会の中で孤立しがちな子育てママを取り上げつつ、児童虐待の問題まで踏み込んだリリックが見事。児童虐待をテーマにした曲にありがちな、単純に親を責めるのではなく、その母親も含めて被害者という視点を、この短い曲の中できちんと織り込むところはさすがです。
ユーモラスで、ウィットがあって、そしてポリティカリーコレクトに縛られない皮肉さもある歌詞がとてもユニーク。「POP LIFE」という聴きやすい楽曲の中に、強烈に毒の要素も感じられるのがさすがといった感じです。
ラストの「余計なお世話だバカヤロウ」も、ある意味、一億総評論家みたいになってしまったネット社会の皮肉ったような内容がとても楽しい内容・・・って、このサイトのことを言われているみたいなんですが(^^;;まさにうちのサイトも「余計なお世話だバカヤロウ」って感じですもんね(笑)。
前作に引き続きの傑作に、あらためて彼らの実力を感じさせてくれる作品でした。HIP HOPを普段聴かない方でも楽しめるポピュラリティーがあり、かつ、リリックにサウンドに、奥の深さも感じさせてくれる1枚。前作と一緒にどうぞ。
評価:★★★★★
RHYMESTER 過去の作品
マニフェスト
ほかに聴いたアルバム
TOKYO CONNECTION/HALCALI
前作「TOKYO GROOVE」に続くTOKYOシリーズの第2弾。YOUR SONG IS GOODのメンバーによる演奏の、米米CLUBの大ヒット曲のカバー「浪漫飛行」をはじめ、ダンスでポップでキュートなナンバーが続きます。3曲目「ギリチョコ」など、かわいらしい内容がまた彼女たちらしい感じで。事実上、わずか5曲のミニアルバムで、そういう意味でちょっと物足りなさもあるものの、彼女たちらしさが出ていたポップなアルバムになっていました。
評価:★★★★
HALCALI 過去の作品
TOKYO GROOVE
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