ユーモラスとウィットと
Title:ナクナイ
Musician:たむらぱん
たむらぱんのニューアルバム。正直、最初聴いた時は、「思ったほどでは・・・」と思ってしまいました。それは、前作「ノウニウノウン」があまりの傑作だったから。今回のニューアルバムは、前作の「ちゃりんこ」のような、即効性のあるキラーチューンがなかったこと、これが最初聴いた時、すぐにはピンと来なかった理由かもしれません。
とはいえ、凡百のポップスアルバムが、及びも付かない作品、とは思っていたのですが。
しかし、2度3度聴くにつれて、やはりこのアルバムも、傑作あることは間違いない、と気がつきました。
相変わらず、ひねったメロディーラインが癖になります。「スポンジ」や「ラフ」のように、明るいポップスの中に、ちょっとだけ不純物がまじるようなメロディー。先の読めない展開がとてもユニーク。メロディーラインだけではなく、「マウンテン」のように、楽曲自体の雰囲気も次々と変化していく作風もとてもユニーク。最後までまったくリスナーを飽きさせず、終わった後、どこか耳に残るのが大きな特徴です。
そして、そんなメロディーに負けるとも劣らないのがユニークな歌詞。全体的に前向きな応援歌タイプの曲が多いのですが、昨今のヒット曲のような感じでは全くありません。どこかユーモラスでウィットの富んだ内容がとてもおもしろい仕上がりになっています。
例えば「ごめん」では
「叱られた時は素直にそっとごめんなさいと言おう
それが仲直り出来る最高の方法だよ
そして潤んだ目をして後ろを振り返ってぺろりと舌を出そう
それは騙してんじゃない 愛の表現だよ」
(「ごめん」より 作詞 田村歩美)
なぁんて、ひねくれてユニークながらも、真実をついている歌詞だと思いません??
他に最後を飾る「とんだって」も、比較的ストレートなメロディーを聴かせるバラードナンバーで、純粋にメロディーの良さも印象に残るのですが、「飛ぶ」と「富む」、「買う」と「飼う」という似たイントネーションの言葉を組み合わせた歌詞がウィットにとんでいてユニーク。メロディー以上に歌詞が印象に残りました。
正直「ノウニウノウン」ほどではなかったとは思うものの、こちらもこちらで、天才たむらぱんの実力が大いに発揮された傑作だったと思います。まじですごいよ、彼女は。ブレイクも間近・・・だと思うんだけどなぁ。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
SIGN IN TO DISOBEY/磯部正文
元HUSKING BEEのボーカルの、ソロ名義での初となるアルバム。元ビークルのヒダカトオルプロデュース。ポップでメロディアスな作風はHUSKING BEE時代と変わらず。パッと聴いた耳障りはいいのですが、あまり後には残らないのは、似たタイプの曲が多かったからか・・・?評価:★★★
SURELY SOMEDAY/菅野よう子
小栗旬が監督ということで話題になった映画のサントラ。菅野よう子が担当しています。菅野よう子というと、アニソンやゲーム音楽というイメージが強いのですが、今回は、the telephonesの石毛輝やTHE BAWDIESのROY、さらには曽我部恵一や近藤房之助といった、様々なミュージシャンたちとのコラボに挑戦しています。そして、石毛輝と組んだ曲ではダンスチューンを、ROYと組んだ曲ではファンクを、さらりと書いてきてしまうのはさすが。彼女の職人技ともいうべき才能が存分に発揮されています。・・・が、1曲1曲があまりにも短くて、まるでお試しのサンプル盤を聴いているみたい(^^;;もっとフルサイズで聴ければ、おもしろい曲もたくさんあると思うんですが。聴いた後、なんともいえない物足りなさが残ってしまう、実に惜しいアルバムでした。
評価:★★★
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