邦楽ロックの黎明期
以前、紹介した、徳間ジャパンが管理するレーベルが昭和期にリリースした作品を集めたオムニバスアルバム「Groovin' 昭和」。今回はその第3弾。11月に発売された最後の2枚です。
Title:GROOVIN'昭和!6~東京ディスコ・ナイト
こちらはディスコソングやニューウェーヴ系の曲を集めたオムニバス。正直言うと、全7枚の中で、一番インパクトは薄かったかもしれません(^^;;全体的に80年代の歌謡曲風といった感じ。ちょっと懐かしさを感じられますが、無難な感じにまとめあげられたポップスが多く、強力なインパクトを持った曲が少ないのがちと残念。平均点はほどよくクリアしているのですが、圧倒的な名曲もなければ、珍曲もない、といった感じでしょうか?
ただ、その中でも注目したい曲もあって、13曲目「Tu Tu」を歌っているポータブル・ロックは、あの元ピチカート・ファイヴの野宮真貴が、ピチカートの前に所属していたバンド。ちょっとアイドルポップスっぽいのですが、かわいらしいボーカルが印象的な軽快なポップチューンになっています。
他にも、「You Really Got Me」「Star Man」を、不気味なインストでカバーしたGateballは、あの近田春夫のバンドですし、ちょっと佐野元春っぽい「Young Boy Blues」を歌う篠原太郎は、THE BREAKERSというバンドで、元ブルーハーツ、現ザ・クロマニヨンズの真島昌利と組んでいたメンバーだそうです。
ああ、なんだかんだ言っても聴き所は多いや(笑)。ただ、他の6枚のインパクトが強すぎるわけでして(笑)。
で、ラストはこの1枚。
Title:GROOVIN'昭和!7~ロマンチスト
前にも書いたのですが、なぜか最近、妙に邦楽ロックを売り出そうとする媒体が増えていて、タワレコなんかも「日本革命ロックガイド」なる本も出して、邦楽ロックのキャンペーンなんかはじめちゃったりしています。
そんな中、素直にキャンペーンに乗っかって、邦楽ロックを聴いてみましたってのも悪くはないと思うのですが、そんな時に圧倒的にお勧めしたいオムニバスだと思います。とにかく面子がめちゃくちゃ豪華。タイトル曲「ロマンチスト」を歌っているザ・スターリンをはじめ、あぶらだこにFriction、突然段ボールにP-MODEL、ボアダムスにヒカシューなどなど、70年代80年代あたりの、邦楽ロックシーンの、いわゆるオルタナティヴシーンを代表するバンドの曲が詰め込まれています。
ここらへんの70年代80年代の「オルタナティヴ」的なこれらのバンドの曲を聴くと、邦楽ロックバンドも、決して洋楽に比べて劣っていたわけじゃないよなぁ、ということを感じます。確かに、先駆性だったり、リズム感、グルーヴ感という面では、ちょっと物足りなさを感じる部分もありますが、メロディーやなによりも曲にかけるパッション、また、やはり日本語だからこそ私たちにもダイレクトに伝わる歌詞など、曲全体で比較した場合、邦楽ロックも洋楽に比べて決して負けていない。「日本のロックは聴かない」なんて人がいまだにいたとしたら、かなりもったいないことをしているなぁ・・・ということを感じました。
ただ一方で、一応「昭和」で括ってあるのだから、面影ラッキーホールみたいなあくまでも昭和歌謡「風」の曲を入れるのはどうかと・・・。他にも山本精一&Phewとか、哀秘謡とか、もちろん曲のクオリティーに関しては文句のつけようがないのですが、やはり昭和の曲と昭和「風」とは違うと思うんですよね。曲のネタが足りなかったのかなぁ?
いや、しかし邦楽ロックのカッコよさを再認識できるオムニバスだったと思います。ある意味、最近のロックバンドには薄くなってしまったある種のアングラ感、危険な雰囲気もたまりません。ロックリスナーは、この1枚だけでも聴くべし。
評価:
GROOVIN'昭和6 ★★★★
GROOVIN'昭和7 ★★★★★
ほかに聴いたアルバム
COLOR/オレスカバンド
軽快なスカ、なのですが、スカバンドにありがちな、勢いだけで押して行くという感じではなく、メロディーをしっかりと聴かせている印象。「街を出るよ」や「アイマイユーミーマイン」など、切ないメロも後に残りますし、「自転車」などヒットポテンシャルもありそうな、メロディアスなナンバーも。いままで気になっていた曲のバリエーションもグッと広がり、一気に成長を感じられたアルバムでした。
評価:★★★★★
オレスカバンド 過去の作品
What a Wonderful World! vol.1
What a Wonderful World! vol.2
BAD TIMES 2000-2010 URA-BAN BEST/RIP SLYME
「GOOD TIMES」に続く、こちらはいわばカップリング曲に、アルバム収録曲の隠れた名曲の中から、ファンの人気投票で選ばれた曲を収録した企画盤。楽しくダンサナブルなシングル曲に比べると、どちらかというと実験的な要素を感じる曲も多く、若干とっつきにくい印象も。ただ、シングルで一般的にイメージされるRIP SLYMEの単純なポップではない一面も見られます。「GOOD TIMES」でRIPを気に入った方は、次に聴いて欲しいアルバムかと。
評価:★★★★
RIP SLYME 過去の作品
FUNFAIR
JOURNEY
GOOD TIMES
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