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2011年1月23日 (日)

海の上で飛び跳ねるように

Title:SENSE
Musician:Mr.Children

SENSE

ミスチルの最新作について話題になったのは、まずその「売り方」でした。事前のシングルカットは配信シングルをのぞいてなし。収録曲もジャケット写真も明かされず、タイトルすら、発売日まで未定というスタイル。シングルをリリースしまくって、アルバムは、まるでベスト盤のよう、という、最近の潮流から逆らうように、あくまでも「オリジナルアルバム」を聴かせようというスタンスを感じさせます。

前作「SUPERMARKET FANTASY」が、このアルバムとは逆に、ヒットシングルを詰め込んだ、まるでベスト盤のようなアルバムになっていました。彼らがかつて、コンセプトアルバム「深海」のあとに、ヒットシングルをつめこんだ「BOLERO」を発売したように、ヒット曲の詰め合わせだった「SUPERMARKET FANTASY」の後は、「深海」のように、アルバム単位で売って来る作品がリリースされるのかなぁ・・・と思っていただけに、先行シングルが収録されていないこのアルバムのスタイルは、ある意味、予想通りでした。

ただ、アルバムの内容としては、タイトル通り、暗い海の底をイメージさせるような「深海」と異なり、アルバム全体として前向きの希望を感じるアルバムになっていたように感じました。

楽曲としてユニークだなぁ、と感じたのは、「ロックンロールは生きている」。とかく音楽雑誌などがやたらと「殺したがる」ロックという音楽のジャンルですが、

「ロックンロールは生きている 君のそばに
自由と希望を意味している」

(「ロックンロールは生きている」より 作詞 桜井和寿)

と高らかに歌い上げる彼らには、まだまだロックという音楽は人々を救うという力強い主張と未来への希望を感じます。偶然でしょうが、昨年話題となった神聖かまってちゃんの代表曲にも「ロックンロールは鳴り止まないっ」という曲がありました。グローバリゼーションという名前の下に、より過酷な競争を強いられようとしている現在、再びロックンロールという音楽が、その効力を増しているのでしょうか?

他にも

「今にも手を差し出しそうに優しげな笑顔を見せて
水平線の彼方に希望は浮かんでる」

(「擬態」より 作詞 桜井和寿)

「夢見なくちゃつまんねぇ 淡々と死んでいきたくはない
振り返りながらも目指す未来
少し痛いとしてもダイブ!
そしてバタフライ」

(「HOWL」より 作詞 桜井和寿)

など、未来への希望を感じられる曲が並んでいます。なんといっても、希望に満ち溢れているのは、映画「ONEPIECE」のテーマ曲になり、配信シングルとしてリリースされた「fanfare」でしょう。爽やかでアップテンポなメロと、軽快なギターリフが心地よい曲ですが、「ONEPIECE」の世界観ともマッチする前向きな歌詞は、このアルバムのイメージにもピッタリ来る名曲に仕上がっています。

閉塞感が漂い、未来への希望が失いかけている現在だからこそ、力強く未来への希望を歌おうとしている、そんなアルバムに感じました。ある意味、「深海」とは対照的な、海の上でくじらが飛び跳ねているジャケット写真も、そんな彼らのメッセージを感じることが出来ます。

一方で、メロディーやアレンジに関しては、ミスチルらしさという壺を押さえた感じがします。そういう意味では、多くのファンにとっては、納得いく内容になっているのではないでしょうか。ミスチルというバンドがどう見られているのか、きちんとわかった上でのつくりになっている点、ベテランバンドとしての実力を感じます。

反面、悪く言ってしまうと、少々無難といった印象を受けてしまいます。先行シングルなし、アルバムで聴かせる内容の割りには、「アルバムならでは」といった感じのとっつき難い曲が少なかったような印象も受けます。そういう意味では、安心して聴ける内容ではあるのですが、新たな驚きみたいなものは少なかった感がありました。

とはいえ、「365日」のような、今後彼らのスタンダードになりそうな名バラードもあり、基本的には文句なしの名作だと思います。ミスチルにしては売上がちょっと苦戦しているのは残念。とはいえ、最初のブレイクから15年以上経って、いまだにこれだけ売れるのは驚異的ではあるのですが・・・。

評価:★★★★★

Mr.Children 過去の作品
SUPERMARKET FANTASY

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