アバンギャルド(?)なポップスバンド
Title:少女の証明
Musician:アーバンギャルド
ちょっと(かなり?)不気味なジャケットと、意味深なタイトルが、なんともいえない想像力をかきたてられますが(笑)。アーバンギャルドは、最近、徐々に話題となっているミュージシャン。このアルバムが3rdアルバムらしいのですが、このたび、はじめて聴いてみました。
楽曲は、メロディアスなテクノポップ。チップチューン的な要素を組み込みつつ、ちょっとチープな感じのアレンジになっていますが、これが歌詞の世界に妙にマッチしていて効果的。メロディーラインも、歌謡曲風で、耳なじみやすいメロディー。ただ、そんなメロディーもアレンジも、どこか妙な毒をはらんでいるようで、聴き終わった後に、耳に残ります。
そして、それ以上にインパクトがあったのが歌詞の世界。タイトル通りの少女(女子高生)を主人公にして、現在の消費社会の中で生き、消費されていく彼女たちの言葉を、シニカルに描いています。
ただ、彼らの音楽を聴いていると、とてもクレバーなものを感じました。つまり、感性を楽曲にぶつけているというよりも、実によく考えられてつくられているなぁ、ということ。
楽曲は、いわゆるアングラ風につくられているのですが、そもそも、資本主義的な社会に対するアンチ資本主義的なスタンスという作り方自体が、よくありがちなパターン。固有名詞なども上手く用いて、楽曲の雰囲気作りに成功しています。主人公を女子高生(風)にして、どことなくエロティシズムを醸し出しているのも、上手いなぁ、と思います。
そんなある意味狙いすぎな部分がありながらも、それが決して嫌味になっていないのは、あくまでもユーモラスにまとめあげられているからではないでしょうか。タイトルからしてユーモラスな「あたま山荘事件」だったり、「保健室で会った人なの」みたいに数え歌にしていたり。
ただ、これだけアングラ風味を醸し出していながら、ボーカル浜崎容子の、無機質なクリアボイスのため、楽曲から勢いというか、ある種の熱量を感じさせません。そういう意味で、本気でアングラで行こうとしているというよりも、あくまでも「アングラ風」を目指しているだけなのでしょう。このどこか醒めた感覚は、実に今時のバンドならではだなぁ、という感じを受けました。
好き嫌いはありそうですが、実に個性的で、とてもおもしろいバンドだと思います。クレバーさを感じる楽曲作りといい、熱量のない楽曲の雰囲気といい、どこか相対性理論に似たようなものも感じるのですが・・・。彼らもまた、これから、まだまだ注目を集めそうです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
ZOOMANITY/a flood of circle
1曲目。ガツンと来るブルージーなインストに、文句なくカッコいい!と思うのですが・・・ボーカルとメロディーが入ると、途端に淡白な感じになるんだよなぁ。バンドサウンドに関しては文句なしと思うんだけども。ただ、デビュー当初に感じた「若いなぁ」という感じは薄くなっています。いい意味でいえば、バンドとして成熟してきたのですが、逆に、デビュー当初のような勢いもなくなってきた、という感じもなきにしもあらず・・・。
評価:★★★
a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
Whistle/HY
今年の紅白、初出場が決まり話題のHY。ミディアムテンポのナンバーやバラードナンバーが多く、メロディーをしっかりと聴かせる曲がメイン。HYといえば、メロディーの良さには定評がある・・・はずなのですが、正直、今回のアルバムに関してはいまひとつ。インパクトが薄めで、アルバムを聴いているうちにちょっと飽きてしまったかも。評価:★★★
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