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2010年11月18日 (木)

昭和のレア・グルーヴ

今回、紹介するのは、徳間ジャパンが管理するレーベル、ミノルフォン、バーボン、ワックスの、タイトル通り、昭和期にリリースされた、名曲・珍曲を収録したアルバム。いわゆるヒット曲はほとんどなく、知る人ぞ知る的なB級歌謡曲ばかり。まさに「昭和のレア・グルーヴ」ともいえる楽曲がつまったコンピレーションアルバムになっています。

9月から11月にかけて、全7枚がリリースされるそうですが、今回は、9月に発売された3作品を聴いてみました。

Title:GROOVIN' 昭和!1~こまっちゃうナ

GROOVIN’昭和!1~こまっちゃうナ

タイトル曲は、スタンダードナンバー的に知名度の高い大ヒットナンバーですが、その他は、曲によっては「なんだこれは」と思ってしまう珍曲も多数(笑)。いかにも「昭和歌謡曲」といった感じの曲が多いのですが、ある種B級的な洗練されなさぐあいが、妙な色合いを出していて、聴きおわった後、妙に耳に残ります。

以下、印象に残った曲としては・・・

「こちらディスクジョッキー」あたりは時代を感じさせるようなコミックソング。「あなたっていいわ」は、ちょっと吐息まじりのボーカルが艶かしく、昭和のエロティシズムといった感じ。「雪子のロック」は、「ロック」のロの字も感じさせないムード歌謡曲。「○○のブルース」のように、そのジャンルの雰囲気だけを利用して、そのジャンルとは全く関係ない曲のタイトルにしてしまう歌謡曲の王道手法が、まだ黎明期だったロックでも使われた、という例でしょうか?「キッス・モーション」もいかにも昭和的な女性デゥオ。ちょっとうぶな恋愛描写が、今の時代にはないかわいらしさを感じます。

1曲1曲が個性があふれていて、楽曲としては確かに「よく出来ている」とか「時代の先端を走っている」みたいな感じではないのに、やけに印象に残ります。かなり濃ゆい内容なだけに、万人にお勧めといった感じではないのですが・・・妙にはまってしまいアルバムでした。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和!2~ベッドにばかりいるの

GROOVIN’昭和!2~ベッドにばかりいるの

インパクトの強さでいえば、「1」に勝るとも劣らないのがこちら。こちらのアルバムは、カバー曲を多く収録されていたのですが、「え?こんなカバーが??」というような、珍カバーも多く楽しめました。

千昌夫の元妻、ジョーン・シェパードによる、ビージーズの「ステイン・アライヴ」も、なかなかユニークな選曲ながらも、なにげによく出来た仕上がりに。そして、その千昌夫は、なんと岡林信康の「山谷ブルース」をカバー!かなり社会派のメッセージ性の強い曲なのですが、千昌夫がカバーすると、単なる工事現場のおっちゃんの歌みたいになってしまっています(笑)。

他にも珍曲が盛りだくさん。「トルコ行進曲」はメロディーはモーツアルトのそれなのですが、「トルコ」と「トルコ風呂(=ソープランド)」をかけた、下らない(笑)内容に。「消えた三億円」は「三億円事件」を題材としたコミックソング。東てる美「Lesbian」はムーディーなインストにのって、レズビアンの女性同士のエロティックな会話が繰り広げられる、めちゃくちゃエロいナンバー。極めつけの「ディスコ笑大夢」はディスコサウンドにのせて、ただ単に笑い声が流れるだけ、という「誰が思いついたの?」というような曲(??)。インパクト満載(インパクトだけ?)という曲が並んでいます。

「1」以上にインパクト満載のアルバムだったのですが、それだけに、こちらも微妙に聴いていて癖になってくるような内容に。ある意味、エロ曲も含めて、珍曲が許されるというのは、時代的にいろいろな意味で余裕みたいなものがあったのかなぁ。

評価:★★★★

Title:GROOVIN'昭和!3~恋のサイケデリック

GROOVIN’昭和!3~恋のサイケデリック

こちらは、グループサウンズの曲。それもカルトGSみたいに言われるような曲と、洋楽テイストの強い女性ボーカルナンバーを中心に収録した曲。3枚の中では、一般的には一番聴きやすい作品かも。

で、こちらに収録されたグループサウンズの曲が、めちゃくちゃカッコいいんです!もともと、グループサウンズのバンドというのは、ビートルズをはじめとする欧米のギターロックバンドの影響を強く受けていたものの、売れるに従って、日本的な歌謡曲を歌った(歌わされた)という話を聞いたことがあるのですが、こちらに収録されたバンドは、残念ながらあまり売れていなかったためか、逆に本格的なロックを奏でている曲が多く収録されていました。

ラ・シャロレーズ「うわさの二人」はメロと歌詞はおもいっきり歌謡曲ながら、ガレージなバンドサウンドが魅力的。そのままキノコホテルあたりが演奏しても不思議じゃない感じ。タイトル曲でもあるザ・デビィーズ「恋のサイケデリック」は、こちらもメロこそ歌謡曲風ながらも、サウンドはしっかりとサイケデリックロック。タイトルに偽りなしです。そして一番印象に残ったのがストーンズ「恋のシンガリング」。ジェイムス・ブラウンばりのファンキーなシャウトを聴かせてくれます。

ある意味、欧米の音楽と比べても遜色がなくなってきた最近のバンドに比べると、まだ手さぐり状態で、本場の音楽の真似をしている、ということが伝わってくるような曲ばかり。ただ、本格的ではない、手探り状態というサウンドが、逆にほほえましくて、独特な魅力を出していました。

評価:★★★★

3枚とも、癖のある曲ばかりなので、手放しでお勧めといった感じではないのですが、一度はまったら、癖になりそうな作品ばかり・・・。こちらを聴いてみたら、最近、妙に「B級歌謡曲」みたいなものが気になりだしちゃいまして(笑)。まさに「昭和のレア・グルーヴ」ともいえる楽曲ばかり。楽曲を聴いて、ちょっと気になる方にはお勧めです。

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