多彩な音楽性に多彩な世界
Title:JAPANESE POP
Musician:安藤裕子
個人的に、安藤裕子は、今、もっとも勢いのある女性シンガーの一人だと思います。
彼女にとっての最高傑作(と思う)、前作「クロニクル」を経ての最新アルバム。いままでの彼女のスタイルをベースにしながらも、音楽的にも歌詞の面でも、より多彩な世界観が広がっていたアルバムだったと思います。
前半に関しては、前作「クロニクル」同様、ファンタジックで、どこか童話的というか。音楽的にも歌詞の世界も、軽快な世界を描きながらも、一癖も二癖もある楽曲が並んでいます。
「私は雨の日の夕暮れみたいだ」も「健忘症」も、フリージャズ的な、軽快だけど自由なピアノの音色が、独特の世界を作り出していますし、歌詞も、「マミーオーケストラ」にしろ「Dreams in the dark」にしろ、どこか影の部分を感じる内容になっています。
一方、後半になるともっと雰囲気がかわり、ストレートな作風の曲が増えてきました。
個人的に、そんな中で印象に残ったのが、ピアノバラードの「court」。恋人の別れを、物語性たっぷりに描いた歌詞は実に印象的。シンプルなピアノのアレンジに、彼女の美しいボーカルが、とてもマッチしたナンバーでした。
また、妖艶で、歌謡曲風な雰囲気がアルバムの中でちょっと独特な「アネモネ」や、宮川弾が作曲を手がけた、シティーポップ「摩天楼トゥナイト」など、音楽の世界も一気に広がりを見せてくれるのがこの後半でした。
正直、個人的には、最高傑作の前作「クロニクル」には及ばなかったかな、とは思います。とはいえ本作も、次から次へと展開する多彩な音楽性に、最後まで耳を離せなかったアルバム。前作に引き続き、文句なしの傑作だったと思います。安藤裕子の活躍からは、まだまだ目を離せません。
評価:★★★★★
安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
ほかに聴いたアルバム
dreaming pupa/pupa
高橋幸宏を中心に、原田知世や高野寛など、層々たるメンバーが集まったエレクトロ・ユニットpupaの2枚目となるアルバム。「Circadian Rhythm」あたりが典型的だと思うのですが、アレンジは今風のエレクトロ路線だけど、メロディーは70年代風という、ある種、時代を超えた組み合わせが、エレクトロだけどもどこか懐かしい暖かさを感じるポップスアルバムになっています。
評価:★★★★
pupa 過去の作品
floating pupa
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