好き嫌いはわかれそう・・・。
Title:billion voices
Musician:七尾旅人
七尾旅人というと、デビュー当初から非常に評論家筋の評価が高く、話題になっているシンガーソングライター。今回の新作も、音楽雑誌等では、とても高い評価を受けています。
ただ、正直言ってしまうと、個人的にデビュー当初から、どうもいまひとつ、アルバムを聴いても好きになれないミュージシャンだったりします。その理由は彼の即興性の高い音楽性。特に奇声なども混じる即興性の高いボーカルが、どうも好きになれず、アルバムを聴いてもいまひとつピンと来ません。
すいません。基本的に整ったポップミュージックが好みの、ミーハーな耳の持ち主なんで・・・(^^;;
それでもアルバムが出ると聴いてしまうのは、音楽誌などで高い評価を得ているから・・・というのも否定しないのですが、例えばシングルになったりする曲などに関しては、聴き入ってしまう名曲が多いんですよ。
つまり、その即興性の高い音楽性が彼の大きな魅力である一方、類まれなるメロディーセンスを持っているからこそ、ついついアルバムも期待して聴いてしまうんです。
まあ、この類まれなるメロディーセンスを持っているからこそ、即興性の高い音楽を聴かせることが出来るのでしょうが・・・。
今回の作品に関しても、その場で産み出した音楽をそのまま録音したような曲が多く収録されています。そういう意味では、正直言うと、いまひとつはまりきれない部分のある作品でした。
ただ、一方で、いままでのアルバムに比べると、このアルバムは即興性の高くない、ポップスソングとしてしっかりとまとまった作品も多かったような印象を受けました。
例えば「どんどん季節が流れて」や「Rollin' Rollin'」など、ポップスソングとしてしっかりとリスナー層を選ばないポピュラリティーを持った作品に感じました。
また、ソウルやジャズ、テクノポップやロックなど、様々な音楽性を取り入れた幅の広さも大きな魅力。彼のポピュラーセンスと、ミュージシャンとしての包容力の大きさを感じさせるアルバムでした。
ただし、中盤「シャッター商店街のマイルスデイビス」のように即興性の高い曲も少なくなく、それがまた彼の大きな魅力なんでしょうが、結構リスナーは選びそうな感じ・・・。正直言ってしまうと、個人的にはちょっと苦手、かも・・・・・・。
評価:★★★★
余談。
七尾旅人といえば、最近、積極的にネット配信を活用している点が話題になっています。
DIY STARSというネット配信サイトを立ち上げたり、U-Streamでライブ動画を配信したりしています。このアルバムも、ジャケット写真が「You Tube」をモチーフにしたり(M.I.A.のニューアルバムのジャケットも同様に「You Tube」をモチーフにしているところが偶然とはいえおもしろいですね。意味合いは全く違うと思いますが)、1曲目(?)の「MIDNIGHT TUBE」で「ネット動画」という言葉を登場させたりと、ネット配信を積極的に捉えて活用しています。
個人的には、彼のようにネット配信を積極的に活用する動きは全面的に賛同します。CDがなくなり、ネット配信が主流になるという流れは、確かに問題点も少なくないし、物理的な所有欲が満たされないという意味でも「寂しい」という意見はわかりますし、個人的にもそういう感情を持っていますが、ある意味、避けられない流れ。それならば逆にネット配信の利点を多いに活用し、積極的に音楽を世に広めていこう、という姿勢の方が、頼もしく感じられ、また、リスナー層の裾野も広がっていくのではないでしょうか?ネット配信という局面でも、七尾旅人の今後の動向から目が離せません。
ほかに聴いたアルバム
SINGLES/DOES
アニメ「銀魂」の主題歌になった曲はベスト10ヒットを記録するものの、それ以外の曲については、ベスト50にもランクインされない彼ら。アニメタイアップ頼みが極端で、ここまで「曲」のファンがミュージシャンのファンに意向しないケースも珍しいような・・・。ただ、ちょっと厳しいことを言ってしまうと、このベスト盤を聴いて、その理由もわからないではないような。確かに1曲1曲は決して悪くなく、ポピュラリティーもあるのですが、「よくありがち」という印象もいなめず、DOESだけの個性というのも薄いような印象を受けました。ただ、最近の曲の出来はどんどん上がり調子で勢いもついてきているようにも感じるため、徐々に「曲」のファンがミュージシャンのファンに意向しはじめる、かも。
評価:★★★
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