様々な邦楽を調理
Title:沿志奏逢3
Musician:Bank Band
ap bankのために、ミスチルの桜井和寿や、プロデューサー小林武史が組んでいるバンドの、これが既に3枚目となるアルバム。毎回、邦楽を中心に、若手からベテラン、サブカル系からヒットチャートの王道系まで、様々なタイプのミュージシャンのカバーに挑戦しています。
ボーカルの桜井和寿は、ミスチルの大ヒットでもわかるように、ある種の華があるボーカリスト。一方で、サブカル系ミュージシャンの曲は、楽曲自体は素晴らしくても、ミュージシャン自体に華がなくて、地味に聴こえてしまうケースも少なくありません(まあ、その地味さが逆に良い、と言えるかもしれないのですが)。
そのため、特にサブカル系ミュージシャンの曲に関しては、桜井のボーカルによって、その曲の本来持つヒットポテンシャルにハッと気がつかされるカバーが少なくありません。
今回のアルバムで一番それに気がつかされたのがフジファブリックの「若者のすべて」。いや、フジファブのボーカリスト志村正彦も個性的なボーカリストだったんですけどね(過去形で書かなくてはいけないところが非常に悲しい・・・)。でも、桜井のボーカルで、より曲自体の魅力が引き出されたような感がありました。
同様に印象が大きく異なったのが、キリンジの「Drifter」。いや、キリンジの場合は、彼らのボーカルも売りのひとつなんですけどね。でも、この曲を桜井がカバーすると、あら不思議。ヒットチャートで何万枚も売れていそうなポップスに変身(笑)。まあ、このカバーに関しては、原曲の良さを引き出している反面、別の良さが失われているような感じもするんどえすが。
ただ、そんな桜井のボーカルに加えて、もうひとつ大きく気になったのが、小林武史のアレンジ。彼のアレンジって、こんなに大味だったっけ?レミオロメンのアレンジの時も感じたのですが、安直にストリングスを入れて曲を盛り上げる手法も目立ち、平面的に感じました。
一番残念だったのが、RCサクセションの「ステップ!」のカバー。桜井のボーカルも単なるキヨシローの真似に終わっていたし、小林武史のアレンジもいまひとつ。原曲の持つファンキーな良さもなければ、Bank Bandとしての新たな魅力を付け加えることもなく、いまひとつなカバーに終わっていました。
全体的には、ある意味、癖のない「売れ線」的なカバーが多かったので、原曲に思いいれのある方には、ちょっと厳しいカバーも少なくなかったかも。逆に、原曲を知らないリスナーが、これを機に、そのミュージシャンに興味を持つには、ちょうどよい「入り口」だったかもしれません。
個人的に、小林武史の手からはなれて、桜井和寿が他のプロデューサーと組んでのカバーを聴いてみたいかも・・なんて思ってしまったのですが(^^;;
評価:★★★★
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