今も心は郊外に・・・。
Title:THE SUBURBS
Musician:ARCADE FIRE
私が生まれ育った街は、名古屋郊外の新興住宅地でした。高度経済成長期に出来たその街は、私が小学生の頃は、多くの子供たちで賑わい、たくさんの店が軒を連ね、街全体に活気があふれていました。
それから約25年。街からはすっかり活気が失せ・・・・・・というほどではないのですが、やはり子供たちの数は減り、あれだけたくさんあった店の多くはつぶれてしまい、私が小学生の頃に比べると、かなり寂しい街並みになってしまいました。おそらく、こういうかつての新興住宅街が少なくないのではないでしょうか。
カナダのモントリオールに拠点を置く、7人組大所帯インディーロックバンド、ARCADE FIREの3年ぶりとなる新作。タイトルは「THE SUBURBS」=「郊外」。アルバムは、おそらく彼らが生まれ育ったであろう、郊外に、自らの少年期を重ね合わせたような内容になっています。
日本の新興住宅地が寂れている、という現状は、日本の少子高齢化という社会現象によるところが大きいため、彼らのふるさとが、同じような状況になっているかどうかはわかりません。ただ、このアルバム全体から感じられるのは、寂寥感。私たちが少年時代をすごした街並みが変わっていく。その中で、心のどこか、まだふるさとをよりどころにしているところがある。そんな微妙なノスタルジックな感触が、心に染みる作品でした。
7人組の大所帯バンドということで、様々なサウンドを楽曲にも織り込んでいます。しかし、決して大味になることはなく、時にはにぎやかに、時にはシンプルに、時にはダイナミックに展開するサウンドを聴かせてくれます。
そしてあくまでも主軸になるのはメロディー。決してひねくれすぎず、かといって平坦になるわけでもないメロディーラインは見事。派手さはなく、聴けば聴くほど味があるようなメロディーは、インディーバンドならでは、といった感じでしょうか?
切なさも感じられるメロディーが、心にしみこんでくるような傑作。3作目にして、ビルボードチャートでも見事1位を獲得したそうですが、その理由は、2度3度聴くうちに納得してくるかも。歌詞ともども、日本人の心にも、どこか響いてくるような傑作でした。
評価:★★★★★
余談。
「We Used to Wait」のPVがちょっとした話題となっています。こちらのサイト(http://thewildernessdowntown.com/)にアップされているのですが、Googleのストリートビューとリンクしていて、最初に、自分の生まれ育った街をインプットすると、なんとPV上、自分のなじみの街の映像がPVとリンクされてあらわれます(!)。Google Chromeじゃないと上手くいかないみたいですが・・・最初、見た時は軽く感動しました。ストリートビューが既に見れる街ではないといけないのですが、一見の価値あり!です。
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