沖縄出身のミュージシャンとして
Title:エメラルド
Musician:Cocco
昨日はアイヌのミュージシャンで、今日は沖縄・・・いや、単なる偶然なんですが(^^;;
で、3年ぶりのCoccoのニューアルバムを聴いた時、もっとも特筆すべきキーワードは「沖縄」ではないでしょうか。もちろん、Coccoと沖縄といえば以前から切っても切れない関係。しかし、そんな中でも、特に今回は沖縄の色が強いアルバムでした。
1曲目「三村エレジー」から琉球弁を歌詞に取り入れ、沖縄音楽の色が強い作品。続く先行シングル「ニライカナイ」も、基本的には彼女らしいハードなロックナンバーながらも、沖縄の太鼓集団、琉球國祭り太鼓のメンバーが太鼓で参加し、沖縄風の太鼓のリズムを聴かせてくれています。
特にラストの「絹ずれ~島言葉~」はタイトル通り、全編沖縄の言葉で綴ったナンバー。沖縄の言葉を噛み締めるように歌う彼女のボーカルは、彼女のアイデンティティを確かめるよう。リスナーとしては、異国情緒を感じる独特の雰囲気が、とても魅力的なナンバーになっています。
そして、この「沖縄」という点と同じくらいこのアルバムを特徴付けていたのが、彼女にとって初のセルフプロデュース作であり、曲によって、様々なミュージシャンが編曲を行っている点でした。
アレンジャーとして参加したのは、Curly Giraffeに根岸孝旨、RYUKYUDISKOに堀江博久など、豪華なメンバーがズラリ。そして、それぞれのアレンジャーがそれぞれ個性を発揮しているため、実にバラエティー豊かな作品に仕上がっています。
RYUKYUDISKOが編曲を手がける「Spring around」や「のばら」では打ち込みのリズムが導入されたダンサナブルなナンバーになっていますし、「十三夜」は、今時のR&B風のアレンジに。「あたらしいうた」はメロディアスパンク風など、いままでのCoccoにないような、幅広い作風を聴かせてくれます。
そしてどの楽曲もとても完成度が高く、しっかりと聴かせてくれる内容なのが見事。もちろんそれは、Coccoのボーカルの力があってこそなのでしょうが、楽曲の幅の広さに反して、アルバム全体にも統一感があり、最後まで耳が離せないアルバムでした。
そんな訳で間違いなく傑作のアルバム・・・なのですが、もろ手をあげて大絶賛するには、ちょっとひっかかる点もありました。なんというか、Coccoの曲を聴いてしばしば感じるような「ガツン」と来るような、そのボーカルに震えるような場面がなかった、という点でした。
Coccoの、やるせない、どうしても表現しないといけない心の叫び。そのあまりにも迫力のあるボーカルに衝撃を受けたのですが、活動再開以降の作品には、そういった衝撃をあまり感じる曲に出会えなくなったような感じがします。
ただ、その一方、アルバムとしての完成度という点では、ひょっとしたらいままでで一番、という作品かもしれません。そういう意味では、私が過去の幻想を追い求めすぎなのかもしれませんが・・・。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
KABA/UA
タイトル通りのカバーアルバム。オーガニックだったり、アコースティックだったり、ちょっと民族音楽的な要素が入ったりと、原曲とは異なるアレンジをほどこしていたりします。原曲もマニアックな選曲よりも、有名な曲が多く、原曲とのイメージの違いがおもしろいかも。ただ、そんな中でも彼女自身のボーカルは、メロディーを丁寧にたどり、曲の良さをしっかりと引き出していて、原曲に対する愛情を感じられます。もともと、学生時代から歌ってきた曲や思いいれのある曲を選んだためでしょう。原曲のイメージをほどよく崩し、かつ、原曲の良さをしっかりと残した名カバーでした。
評価:★★★★★
EXPERIENCE/RIZE
デビューから10年を迎えるRIZEの新作・・・って、もう10年も経つのか・・・。青っぽい若手バンドというイメージだったのですが、いつのまにかベテランの域に入るようなバンドになりましたね。前作「K.O.」は、やけに青さが目立っていまひとつだったのですが、今回のアルバムでは、活動年数相当の、安定感のあるヘヴィーなロックサウンドを聴かせてくれます。ある意味、昔ながらのミクスチャーロックも安心感を持って聴くことが出来ます。まあ、「昔ながら」という点は、ロックバンドとしては良し悪しといった感じなのですが・・・。評価:★★★★
RIZE 過去の作品
K.O.
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