2000年代バンドとして
Title:マジックディスク
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION
ここ最近、ポップス路線が続いているASIAN KUNG-FU GENERATIONですが、約1年8ヶ月ぶりとなるニューアルバムは、ここ最近のアルバムと同様、バンドサウンドを聴かせるよりも、ポップなメロディーを聴かせる路線が続いていました。
そして、同じポップス路線として、さらに音楽性の広がりを感じたのが今回のアルバム。先行シングルとなった「迷い犬と雨のビート」では、いままでにないホーンアレンジを取り入れた作品になっていましたが、3拍子のリズムがグルーヴィーな「双子葉」や、ダンサナブルなパーカッションを聴かせる「ラストダンスは悲しみを乗せて」など、多様な音楽性の広がりを感じます。
一方では、「イエス」や「橙」あたりは、彼らの王道ともいえるパワーポップ路線。力強いバンドサウンドと、ポップなメロディーラインが楽しめるナンバーです。
音楽性の幅もグッと広がり、1曲目の「新世紀のラブソング」からミディアムテンポのナンバーではじまるなど、メロディーにも自信を感じさせます。前作「サーフ ブンガク カマクラ」あたりから勢いにのってきたように感じたのですが、今、バンドとして最も脂ののっているように感じました。彼らの今のパワーを感じる作品でした。
一方、歌詞で印象的だったのが「さよならロストジェネレイション」。作詞を担当している後藤正文は1976年産まれで、いわゆる「ロスト・ジェネレーション」を呼ばれる世代。しかし、その世代が一括りに「失われた世代」と呼ばれることに反発し、外へ飛び出そうと歌ったこのナンバー。個人的に同世代なだけに、共感できる歌詞でした。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONは、いわば2000年代を代表するバンドのひとつ。00年代の代表格として、「新世紀のラブソング」では、新しい世紀を力強く生きていこうとしている姿を感じますし、タイトル曲「マジックディスク」の内容は、CDの時代からダウンロードの時代への移り変わりを歌詞に読み込んでいるよう。
「さよならロスト・ジェネレイション」とあわせて、2000年代のバンドとしての同時代性を歌詞に読み取り、その世代の人間として前に進んでいこうとする意思を感じました。
そしてもうひとつ歌詞で印象に残ったのが「青空と黒い猫」。ピアノやストリングスを取り入れたアレンジも印象的だったのですが、青空を通じて、様々な人とのつながりを歌った内容が心に残ります。美しい青空が目に浮かぶような歌詞も印象的でした。
個人的に、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの代表作のひとつになりそうなアルバムだったと思います。2000年代のバンドの代表格として、2010年代という時代を進んでいくための重要な1枚。まだまだアジカンの勢いは続きそうです。
評価:★★★★★
ASIAN KUNG-FU GENERATION 過去の作品
ワールドワールドワールド
未だ見ぬ明日に
サーフ ブンガク カマクラ
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2010年」カテゴリの記事
- ネット配信の可能性と疑念(2011.01.05)
- 歌詞はひいてしまう人もいるかも・・・。(2011.01.03)
- 2人の主人公を軸に進む物語(2011.01.02)
- アメリカの香りが(2010.12.30)
- アバンギャルド(?)なポップスバンド(2010.12.28)
コメント