かめばかむほど味が出るような
Title:凪
Musician:キセル
既にインディーデビューから10年。そろそろベテランバンドの域に達している2人組兄弟バンド、キセル。アコースティックでフォーキーなメロは、ちょっと地味というイメージなのか、いまひとつ、音専誌にも大きく取り上げられるケースは少ないのですが、その独特な世界観で、着実に固定ファンを獲得しています。
そんな彼らの約2年ぶりとなるニューアルバム。前作「magic hour」も彼らの最高傑作ともいえる出来だったのですが、それに負けるとも劣らない傑作をリリースしてくれました。
前作同様、以前に比べて、メロディーラインによりはっきりとした輪郭を感じられるポップなメロディーを持つ作品が増えたような印象を受けます。例えば「夜の名前」あたりもそうでしょうか?メロディーのポピュラリティーが鮮明になった感がありますし、フォーキーな「ひみつ」も、リスナーの心にダイレクトに響くようなメロディーを書いてきています。
後半の「星のない夜に」「夕凪」あたりも、フォーキーでシンプルなメロディーに聴きほれます。叙情的な歌詞もメロディーに実にマッチし、とても心に残る名曲でした。
一方で、インタビューでは「曲が普通などで、アレンジで冒険している」とコメントしていますが、シンプルなメロディーを引き立てるアレンジが、とてもユニークだったように感じました。
その中でも一番印象的だったのが、「とおい友達」でしょうか?エレクトロサウンドを取り入れたユニークなアレンジが耳を惹きます。しかし、それにも関わらず無機質さを感じさせず、独特の浮遊感と、そして暖かみを感じさせるのが、彼らの実力であり、かつ、強力な個性を感じます。また、「はなむけ」もシンプルなメロディーながらも、次々に変化するリズムが複雑で、楽曲に独特の浮遊感を与えています。
例えば言うならば、「かめばかむほど味が出るような」アルバム、とでも言うべきでしょうか?シンプルでポップなメロがとっつきやすい一方、聴けば聴くほど新たな魅力が見つかる、そんな傑作だったように思いました。
評価:★★★★★
キセル 過去の作品
magic hour
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