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2010年7月 6日 (火)

かめばかむほど味が出るような

Title:
Musician:キセル

凪

既にインディーデビューから10年。そろそろベテランバンドの域に達している2人組兄弟バンド、キセル。アコースティックでフォーキーなメロは、ちょっと地味というイメージなのか、いまひとつ、音専誌にも大きく取り上げられるケースは少ないのですが、その独特な世界観で、着実に固定ファンを獲得しています。

そんな彼らの約2年ぶりとなるニューアルバム。前作「magic hour」も彼らの最高傑作ともいえる出来だったのですが、それに負けるとも劣らない傑作をリリースしてくれました。

前作同様、以前に比べて、メロディーラインによりはっきりとした輪郭を感じられるポップなメロディーを持つ作品が増えたような印象を受けます。例えば「夜の名前」あたりもそうでしょうか?メロディーのポピュラリティーが鮮明になった感がありますし、フォーキーな「ひみつ」も、リスナーの心にダイレクトに響くようなメロディーを書いてきています。

後半の「星のない夜に」「夕凪」あたりも、フォーキーでシンプルなメロディーに聴きほれます。叙情的な歌詞もメロディーに実にマッチし、とても心に残る名曲でした。

一方で、インタビューでは「曲が普通などで、アレンジで冒険している」とコメントしていますが、シンプルなメロディーを引き立てるアレンジが、とてもユニークだったように感じました。

その中でも一番印象的だったのが、「とおい友達」でしょうか?エレクトロサウンドを取り入れたユニークなアレンジが耳を惹きます。しかし、それにも関わらず無機質さを感じさせず、独特の浮遊感と、そして暖かみを感じさせるのが、彼らの実力であり、かつ、強力な個性を感じます。また、「はなむけ」もシンプルなメロディーながらも、次々に変化するリズムが複雑で、楽曲に独特の浮遊感を与えています。

例えば言うならば、「かめばかむほど味が出るような」アルバム、とでも言うべきでしょうか?シンプルでポップなメロがとっつきやすい一方、聴けば聴くほど新たな魅力が見つかる、そんな傑作だったように思いました。

評価:★★★★★

キセル 過去の作品
magic hour

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