自分たちのスタイルで
Title:ファンファーレと熱狂
Musician:andymori
自分は、大学時代、はじめて東京に出てきたのですが、その時に都会の現実にショックを感じたのは、電車の人身事故の多さでした。
地元だと(最近はそうでもなくなってきてしまいましたが・・・)人身事故で電車が止まったら、翌日の新聞に、それなりにニュースになって報じられたりします。私も、東京で最初に人身事故に出会った時、翌日の新聞で、その記事を探しましたが・・・どこにも出ていませんでした。
東京では、人身事故があまりにも多すぎて、ニュースにならない・・・
andymoriのこのアルバムで印象的だったのは、普通、歌詞であまり用いられない「人身事故」というワードが、3箇所も使われているということ。「オレンジトレイン」というタイトル通り、おそらく、人身事故のメッカとして有名な、中央線沿線に住んでいた経験からかもしれませんが、ひょっとしたら彼らも、人身事故の多さに、都会の冷たさと、現実を感じ、それが歌詞にあらわれたのかな・・・ふと、そんなことを考えてしまいました。
さて、先日、最近、おもしろいインディーバンドが増えてきている、という話題をしましたが、彼らandymoriもまた、今注目の新人バンドの一組です。
彼らでおもしろいのは、楽曲の随所から、ソウルだとか、オールドスタイルのロックンロールの臭いを感じます。ただ、例えばTHE BAWDIESのように、その影響を躊躇なく楽曲に押し出すのではなく、一度、自分の楽曲の中で消化し、楽曲の要素のひとつとして、上手く取り込んでいます。
そのため、彼らの楽曲からは、オールドスタイルのロックやソウルだけではなく、オルタナ系のギターロックやらフォークやらの影響も感じます。また、歌詞にしろメロディーにしろ、どこか叙情的な雰囲気を感じる、いわば日本的なものを感じるのも、彼らの大きな魅力かもしれません。
歌詞は、上でも書いた通り、「人身事故」なんていうキーワードを用いながら描く、都会のリアリティーが印象的。また、「Transit in Thailand」や「バクダッドのボディーカウント」のような、皮肉な視点を感じる社会派の歌詞も聴かせてくれます。
正直なところ、ちょっと地味な印象もあるのですが、聴きこめば聴きこむほどおもしろいバンドだなぁ、と思いました。まだまだ荒削りな部分もあり、今後が楽しみなバンドです。おもしろいバンド、本当に最近は多いですね。次回作以降、期待です。
評価:★★★★★
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