シングルとは別の”表情”に、いつもと印象の違う”横顔”
Title:表情
Musician:チャットモンチー
チャットモンチーの今回のアルバムは、「表情」と「横顔」と名づけられた2枚組となる作品。「表情」は、いわゆるカップリング集となっており、「横顔」は、彼女たちの楽曲をアコースティックでカバーした作品となっています。
シングルのカップリング曲というと、シングルみたいにインパクトがあるわけでもなく、アルバムの中に入れるとちょっと浮いてしまう、実験的・・・というとポジティブな言い方になりますが、ちょっとそのミュージシャンにおいては一風変わった作品が収録される、という場合が少なくありません。
ただ、彼女たちは、インタビューの中でカップリング曲についても「シングルとは区別していない」というような回答をしています。それを裏付けるかのように、「表情」に収録されている曲に関しても、楽曲の感じはほとんどシングルやアルバム収録曲と同じに仕上がっています。
どの曲も、基本的にはストレートなオルタナ系のギターロック。元気いっぱいのサウンドに、ポップなメロディーラインがとても魅力的。また、等身大の恋愛を歌った歌詞もちょっと切なくて、女性ならずとも聴き入ってしまいます。
とはいえ、「リアル」とか「コスモタウン」あたりは、シングルともアルバム収録曲ともちょっと変わった雰囲気で、いかにもカップリング曲ならでは、といった感じかな?ただ、ポップなギターロック作品「迷迷ひつじ」あたりは、シングルとしてリリースしていても遜色なさそうだし、入浴剤みたいなタイトルがユニークな「バスロマンス」など、かわいらしい歌詞が、チャットモンチーらしい、名曲だと思います。
まあ、そんな感じで、チャットモンチーらしさ、はこのカップリング集でも十分に発揮されていました。
一方、そんな「チャットモンチーらしさ」と違う側面を見せてくれたのが、アコースティックカバーアルバムである「横顔」でしょう。
アコースティックなサウンドで奏でられるチャットモンチーの楽曲の数々。もともとから、メロディーと歌詞をしっかりと聴かせる曲が多いだけに、「新たにチャットモンチーのメロディーの素晴らしさがわかりました」というのはさすがに言いすぎかもしれませんが、チャットモンチーのメロディーの良さが、より前面に出ている、名カバーになっていたと思います。
特に素晴らしかったのが最後の「サラバ青春」。タイトル通り、卒業に伴う別れを切なく歌い上げたナンバーなのですが、誰もがその学校生活を彷彿とさせる、あのピアニカの音が切なく鳴り響き、楽曲から感じるノスタルジーを増幅させていました。
「表情」も「横顔」も、それぞれ1枚のアルバムとして成立していて、かつ、どちらもチャットモンチーの世界を存分に楽しめる、いい企画盤だったと思います。熱心なファンの方意外でも十分に楽しめる作品でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Shipahead/冨田ラボ
冨田ラボの「Shipシリーズ3部作」の完結編。佐野元春や秦基博、CHEMISTRYにキリンジ、吉田美奈子という豪華なミュージシャンとのコラボレーションが魅力。どの曲もさわやかなポップチューンに仕上がっていて楽しめる一方、佐野元春やキリンジなど、佐野元春らしさやキリンジらしさもさりげなく曲から感じられるのもおもしろいかも。最後の吉田美奈子とのコラボレートは、力強いソウルフルなボーカルが楽しめ、吉田美奈子の実力を感じさせる作品になっていました。評価:★★★★
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