歌詞が印象に残る、弱冠20歳のSSW
Title:WORLD
Musician:清竜人
これが、2枚目のアルバムとなる、弱冠20歳のシンガーソングライター、清竜人。ちょっと読み方を迷ってしまいそうですが、これで「きよし りゅうじん」と読むそうです。
ポップなメロディーを軸として、ヘヴィーなバンドサウンドから、ストリングスやピアノなども取り込んだ、スタイルにこだわらない自由な曲づくりは、ある意味、シンガーソングライターならでは、といった感じでしょうか?ギターロック、ジャズなどの要素も取り込みつつも、あくまでも、メロディーと歌詞を重視した、ポップス路線が特徴となっています。
まあ、そんなメロディーやサウンドも、インパクトもあって、十分楽しめるのですが・・・
清竜人の、やはり一番の魅力は、弱冠20歳という年齢を感じさせない、達観した視点の歌詞の世界でしょう。
タイトル曲にもなった「ワールド」は、2人の人格による会話を軸とした歌詞。現実主義的で、世の中を悲観的にみている人格と、前向きに、世の中を変えていこうとする人格のやりとりにより、希望を伝える手法は、単純な応援歌風ポップソングとは異なるリアリティーを感じさせます。
シングルにもなった「痛いよ」は、彼女の過去に悩む男の姿を歌った歌。その悩みが、ある種のエゴとわかっていながらも悩む姿も、思い当たる節のある男性も多いのではないでしょうか?
また、個人的に印象的だったのが、「ヘルプミーヘルプミーヘルプミー」。社会は満たされていることがわかっていながらも、どこかやりきれない不満を歌うその姿は、20歳という、まさに今の若者の彼ならでは。先日紹介した、神聖かまってちゃんにも通じる、現代の若者像を描写した作品といえるかもしれません。
歌われている題材自体については、決して真新しいとはいえないものの、取り上げ方にリアリティーがあり、心に残る歌詞が多くありました。しかし、彼はまだ弱冠20歳。今後、年齢と同時に経験を重ねることにより、歌詞の深みがよりまし、もっともっと傑作が世に生み出されるかも?
ただし、一方ではちょっといろいろな題材を取り上げすぎて、全体的に統一感に薄く、清竜人が本当に訴えたいことが少々ぼやけてしまった部分もあるかな?と思いました。
とにかく、これからの活躍が楽しみなシンガーソングライター。前々回に話題に出した、「最近のインディーバンドがおもしろい」とはちょっと違った枠組みですが、彼もまた、今後のシーンの活性化の重要な役割を担いそうな予感がします。
評価:★★★★★
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