それでも僕らは歩き続ける
Title:kikUUiki
Musician:サカナクション
ちょっと変わったタイトルのサカナクションの新作。タイトルとなった「キクウイキ」について、公式サイトで以下の説明がなされています。
“kikUUiki(キクウイキ)”とは漢字で書くと「汽空域」であり、海水と淡水が交わる水域「汽水域」から創られた造語である。淡水と海水、田舎と都 会、ロックとクラブミュージックなど本来相容れないものが、混ざり合うところという意味が込められている。
薄い青と濃い青が混ざり合ったジャケットも印象的ですが、このアルバムに収録されている楽曲自体、「青」という色を感じる作品が多いように思いました。
「目が明く藍色」など、ストレートに藍色という言葉が出てきていますし、「潮」や「シーラカンスと僕」のように、歌詞の中に「青」という言葉が出てくる作品も目立ちます。
そして、この「青」という色は、都会の中に住みながらも、その都会の現実に、どこかなじめない、このアルバムの主人公の心の色にも感じました。
ただ、そんな現実に対して否定とか絶望しているわけでもなく、それを受け入れて、前に進んでいく・・・先行シングルであり、ヒットも記録した「アルクアラウンド」は、まさにこのアルバムを象徴する1曲ではないでしょうか?
「嘆いて 嘆いて 僕らは今うねりの中を歩き回る
疲れを忘れて
この地で この地で 終わらせる意味を探し求め
また歩き始める」
(「アルクアラウンド」より 作詞 Ichiro Yamaguchi)
楽曲は、全体的に、どこか哀愁ただよう雰囲気の、マイナーコード主体の曲が並んでいます。「アルクアラウンド」などもそうなのですが、どこか歌謡曲的。それだけに、日本人の琴線に触れるようなメロディーを書いていました。
前作「シンシロ」は、2000年代初頭のバンド群の影響を露骨に感じる曲が多く収録されていました。今回の作品も、正直「壁」あたりは、ちょっとくるりっぽいなぁ、と感じてしまいました。ただ、歌詞の世界観も含め、メロディーも、エレクトロ主体のサウンドも、サカナクションとしての個性を確立してきており、このアルバムでは、前作で感じたような、他のバンドからの露骨な影響というのは、ほとんど気になりませんでした。
ただ、一方、メロディーにしろサウンドにしろ、ちょっとパターンが少なかったかな?後半、ちょっと飽きてきてしまった、というのが正直な感想(^^;;そういう意味では、惜しいなぁ・・・と感じるアルバムでもありました。
とはいえ、前作からの大きな成長も感じられ、次回作が楽しみになってくるアルバムだったと思います。人気も順調に伸びてきているようで、これからの活躍も楽しみです。
評価:★★★★★
サカナクション 過去の作品
シンシロ
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