幽霊たちの音楽?
Title:Shambhala Number Two&Three
Musician:Joseph Nothing
現代美術家で漫画家のタカノ綾による、不気味かわいい(?)ジャケットが印象的な、Joseph Nothingによるニューアルバム。前作「Shambhala Number One」に続く、2年半ぶりのニューアルバムです。
Joseph Nothingといえば、「日本のAphex Twin」とも呼ばれているそうで、無機質な雰囲気の電子音を並べ、一種独特の音楽の世界を表現しているミュージシャン。「Shambhala」とは、チベット仏教で桃源郷を指すそうで、彼なりに「桃源郷」をイメージした3部作になっているそうです。
今回は、そのうち2作目と3作目が同時にリリースされたのですが、そのうち「Two」は、ある意味、彼らしい作品という感じでしょうか?「桃源郷」からイメージされる美しい音や、フレーズなどをちりばめながらも、突如入る、強烈なノイズが、不気味さを感じさせます。夢の世界の「桃源郷」には、どこか毒の部分が混じりこんでいる・・・そんなイメージなのでしょうか?
しかし、さらにユニークなのは「Three」の方。こちらは全曲フィールドレコーディングを決行。この中で使われている音はすべて、廃墟の中で、扉などをつかって出した様々な音をサンプリング。その音だけで曲をつくりあげているそうです。
それって、「桃源郷」っていうよりも「ホーンデッドマンション」なんじゃない?(笑)
それだけに、いままでに聴いたことないような、新しい音を想像していたのですが・・・
そう意気込んで聴くと、思ったよりも、リズミカルでポップな作品が並んでいました。
いや、もちろんポップといっても、単純なメロディーを奏でている、とかいった話ではないのですが、テンポよく、ミニマル的に刻むリズムが、耳にも心地よく、サンプリングした音にしても、「廃墟」からイメージするような不気味さはなく、Joseph Nothingが奏でる音世界の一部として、しっかりと機能していました。
それだけに、いい意味でも悪い意味でも思ったよりも「いつも通り」(笑)。もちろん、いつもに増して、音はシンプルで、ちょっと無機質な中にも暖かみみたいなものを感じるなど、それなりに普段の電子音と違う部分も感じられたのですが。
ただ、試みとしてはとてもおもしろいですね。世の中にある様々なものが楽器として通用する・・・もちろん、そういう試みを行ったミュージシャンは少なくないのですが、それがまたひとつ、新たな音楽として形となった作品でした。
評価:★★★★
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