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2010年4月15日 (木)

HIP HOPとしては対極なれど。

TOKYO No.1 SOUL SETとスチャダラパー。ジャンル的には、「HIP HOP」にカテゴライズする2組ですが、楽曲の雰囲気は真逆といっていいかもしれません。TOKYO No.1 SOUL SETは、ラテンフレーバーなトラックがメインで、メロウなメロディーラインでしっかりと聴かせるタイプの楽曲がメイン。歌詞も、ある曲は映画のワンシーンのような、ある曲は1枚の絵画のような、雰囲気ある歌詞の曲を多く聴かせてくれます。

一方、スチャダラパーは、パーティーチューンがメイン。歌詞も、世の中を斜めから見たようなユニークな、時として、ちょっとふざけたような歌詞の曲が多いです。この一見真逆に見える両者、実は事務所とレコード会社が同じで、さらにデビューした年も同じ。以前、スチャダラパーが小沢健二と組んでヒットさせた名曲「今夜はブギー・バック」をTOKYO No.1 SOUL SETがHALCALIと組んでカバーしヒットするなどの接点はありましたが、このたび、両者が同時にベストアルバムをリリース。そしてその中に、両者がコラボした新曲が収録されています。

TOKYO No.1 SOUL SETの方がこちら

Title:Best Set
Musician:TOKYO No.1 SOUL SET

BEST SET

TOKYO No.1 SOUL SETについては、いい意味でかわらないなぁ・・・という印象を受けました。デビュー時から現在まで、一貫して哀愁あるメロディーに、1曲1曲がひとつひとつの物語のような歌詞。楽曲のパターンも、BIKKEのラップ、というよりもポエトリーリーディングのような「ラップ」の合間に、渡辺俊美の哀愁たっぷりの歌がのるというスタイルも、少々マンネリ気味な部分も否めないものの、ひとつの完成形として出来上がっています。

メロディーももちろんですが、なによりも歌詞が魅力的。良質な一編の映画のように情景が広がる「ロマンティック伝説」や、哲学的な要素すら感じる「黄昏'95~太陽の季節」。かなりストレートな失恋ソングながらも、メロディーとあいまって心をうつ「Innocent Love」など、1曲1曲実に魅力的な歌詞の世界を聴かせてくれます。

冒頭「HIP HOP」という言葉をつかってジャンル付けしましたが、そんな単純なジャンル付けではなく、TOKYO No.1 SOUL SETというひとつのジャンルを確立してしまったかのように感じる彼ら。聴けば聴くほどその世界に入り込む、実に魅力的なベスト盤でした。

評価:★★★★★

で、こちらがスチャダラパーのベスト。

Title:THE BEST OF スチャダラパー 1990~2010
Musician:スチャダラパー

THE BEST OF スチャダラパー1990~2010

個人的にうれしかったのは、以前発売したコラボレートのベスト盤には収録されていなかった、「今夜はブギー・バック」が小沢健二とのフューチャリングのバージョンでしっかり収録されていること!やはりこの曲は、今聴いても名曲だなぁ~。オザケンは、久しぶりのライブを行うなど話題になっていますが、オザケンのアルバムも、早く聴きたい!!

ちょっと話がそれてしまいましたが・・・

いい意味で変わらないTOKYO No.1 SOUL SETに比べて、こちらはいい意味で変わっています(笑)。というか、90年代あたりの曲に関しては、かなり時代を感じさせます。

TOKYO No.1 SOUL SETが、ひとつのスタイルを完成させていたのに対して、彼らはどちらかというと、その時代に合った音を選び、自分たちのスタイルに取り入れていった、という感じなのでしょうか?

また、「ゲームボーイ」やら「カズダンス」やら、やけに時代を感じるキーワードを取り入れてきたり、歌詞も、どこかその時代の空気を反映したような曲が多く、初期の作品については、リアルタイムにスチャダラパーを聴いていたわけではないのですが、どこか懐かしさすら感じてしまいました。

曲は、初期に関しては、ウィットに富んだユーモアたっぷりの、時として「おふざけ」すら感じられるような曲すらあるのに対して、最近の作品は、ウィットの富んだユーモアたっぷり・・・というのは変わらないものの、「おふざけ」的な要素はちょっとひかえめ。全体的に初期の悪ガキ的な雰囲気は薄れて、大人になったなぁ・・・という印象も。ここらへんは好き嫌いあるかも?

そんな対極的な彼ら。それにも関わらず、お互いのコラボ曲は、妙にマッチして、相性の良さすら感じるのが不思議。おそらく、どちらも音楽に対して真摯に取り組み、自分たちの世界を作り上げているからこそ、お互いの良さをいかしたコラボが出来上がったのではないでしょうか?

2枚組のフルボリュームながらも、ユーモアたっぷりの曲ばかりで、あっという間に聴き終わってしまうベスト盤でした。

評価:★★★★★

余談。

もう終わってしまいましたが、テレビドラマ「相棒」を見ていて、いたみんこと伊丹刑事が登場するたびに、BIKKEのことを思い出してしまいます(^^;;似てると思いません??

BIKKE

川原和久

(↑両者Googleの画像検索です)

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