命をかけたプロテストシンガー
Title:LETTRE OUVERTE AUX...(邦題 大統領閣下への公開状)
Musician:LOUNE MATOUB
以前にも何度かワールドミュージックのアルバムを取り上げた時に、チラッと書いたのですが、ここ最近、この非欧米音楽に興味を持ち始め、いろいろと聴きはじめています。
手始めに、「ミュージックマガジン」の「ワールドミュージック」の年間ベストとかを参考に、いろいろと聴いているのですが、その中で興味を持った1枚。2009年の年間ベストで9位にランクインされていました。
彼、ルネース・マトゥーブは、アルジェリアのプロテストシンガー。アルジェリアではマイノリティーという、カビール人出身ということ。カビール人は、アルジェリアの中で、長年、抑圧されてきたそうで、彼は、そんなカビール人を抑圧してきた政府や、イスラム過激派を強烈に批判しています。
その彼の意見を凝縮したのが、このアルバムの核となる「Tavrats I L'hekam(公開状)」で、21分にも及ぶこの作品は、アルジェリアの大統領への批判、ひいては、カビール人差別を続ける勢力への批判が淡々と、そして怒りを混めながら語られています。前半は、彼の「語り」が続く内容になっており、彼のメッセージが、あまりにもダイレクトにこめられていました。
しかし彼は、1998年、何者かによって暗殺されました。この「公開状」がきっかけになり、政府に暗殺された・・・とも言われていますが、詳しいことはわかっていないそうです。
自分がこの作品に興味を持ったのは、最近、「ミュージックマガジン誌」で盛んに推しているアラブポップを聴いてみたかったから・・・というのもあったのですが、この「音楽を通じて、命がけで、世の中を変えようとする」スタイルに興味を持ったから。音楽の持つ力を信じ、ミュージシャンとして音楽を通じて何かを成し遂げようとするスタイルには、音楽ファンとして、とても尊敬できるものがあります。
ただ、その結末が暗殺という最悪の事態という点については、悲しさと怒りを感じざるを得ません。それと同時に、アルジェリアという、日本から遠く離れた国で起きた社会情勢について、音楽を通じて、ほんの少しとはいえ触れることが出来る、というのもまた、音楽の持つ力なのではないでしょうか?
楽曲は、基本的に、歌い方にしても比較的端整だし、メロディーにしても西洋音楽からの影響も受けているらしく、日本人の耳にもなじみがあります。ただ、使われている楽器や、また、こぶしの回し方など、実にアラビア的で、異国情緒を感じさせます。核になっている「公開状」をのぞけば、特に彼のストレートな怒りを感じるものはなく、アラブポップとして、楽しむことが出来ました。
これからも、いろいろと、非欧米の、ポップソングを楽しんでみたいです。ワールドミュージックの初心者中の初心者として、的外れの感想も書いてしまうかもしれないのですが、その点はご容赦を(^^;;また、聴いてみた作品については、ここでも紹介したいです。
評価:★★★★★
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