J-ROCKへの愛情あふれる
Title:BEST OF MCU
Musician:MCU
80年代後半から90年代への日本のロックシーン。イカ天、ホコ天を象徴とするバンドブームや、そんなメインストリームのアンチとしてはじまった渋谷系。その後のメガヒット連発時代に登場した、数々のミリオンセラーバンドたち・・・正直なところ、玉石混合な部分もあり、必ずしも、今のシーンと比べて「あの頃はよかった」みたいな言い方はできない部分もあるのものの、間違いなく、シーン全体として勢いがあった時代でした。
MCUは、以前から日本のロックからの影響を公言してはばかりませんが、彼の楽曲から感じられるのは、まさにそんな勢いのあった時代の、日本のロックからの強い影響です。
今回リリースされた、MCU初のベストアルバム。「STILL LOVE」では、GLAYのTERUが参加している他、「サーフライダー」「幸せであるように」では、彼が敬愛してやまないFLYING KIDSの浜崎貴司が、「ありがとう」では、同じく彼が敬愛するTHE BOOM宮沢和史が参加しています。
そして、ゲストが参加したどの曲も、ゲストミュージシャンへのリスペクトが感じられるのが、MCUの楽曲の大きな特徴になっています。
そのため、MCUの曲にゲストが参加している、というよりも、FLYING KIDSをはじめとするミュージシャンの曲に、MCUが「ゲスト」として参加しているような楽曲に仕上がっています。
それなので、ゲストがたくさん参加しているこのベストアルバム、正直、MCUとしての個性は、少々希薄にすら感じる部分もありました。もっとも、ゲストミュージシャンの曲に、まるで自分がゲストであるように参加しているMCUのスタイルこそが、彼の大きな個性、と言えるのかもしれませんが。
MCU単独の曲にしても、HIP HOPというよりも、J-POPという称号が似合いそうな、メロディアスで聴かせるタイプの曲が多いのが特徴的でした。ここにも、ジャパニーズ・ロックからの影響がチラホラ感じられます。
そんなゲストの色に染まった作品が多いだけに、楽曲の雰囲気はバラバラ。ただ、どの楽曲からも感じられる、MCUの、日本のロックをはじめとする音楽への素直な愛情が、アルバムをひとつにまとめあげ、微妙なバランスのもとに成り立っているベスト盤・・・のように感じました。
普段、ラップというスタイルをあまり好まない人にこそ聴いてほしいポップスアルバムだと思います。特に、30代後半の、MCUと同世代の、J-POPリスナーには壺にはまるアルバムかも。私も、80年代90年代のJ-POPを聴き親しんだ一人として、どこか懐かしさも感じられたベストアルバムでした。
評価:★★★★★
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