前作を超えて
Title:CONTRA
Musician:VAMPIRE WEEKEND
新人ミュージシャンが、1作目で傑作をリリースした場合、2作目の出来というのが大きな問題となってきます。
1作目というのは、いわばデビュー前の活動の集大成。1作目の出来がよければよいほど、2作目がそれを超えられなければ、「終わったミュージシャン」という扱いにされてしまいます。
じゃあ、ということで1作目と似た作品をつくれば「マンネリ」扱いされ、1作目と大きく異なる作品をつくれば、「問題作」とされ、場合によってはファン離れを招いてしまう・・・。1作目の出来が素晴らしければ素晴らしいほど、2作目は、今後の彼らにとっての大きな勝負作になってきます。
しかし、そんな難しい条件を軽々とクリアし、1作目を超える傑作をリリースしてきたのが、彼ら、VAMPIRE WEEKENDでした。
スカスカなアフロビートにポップなメロディーをあわせたパンキッシュな作風が印象的だったデビュー作は、2008年を代表する傑作アルバムでした。
今回の作品も、そんな音数を絞ったアレンジに、アフロビートのリズムが印象的な作風・・・という意味では前作とかわりありません。
ところが、打ち込みを導入した「HORCHATA」や同じくミニマルなリズムが印象的なエレクトロの「White Sky」など、エレクトロサウンドを本作では積極的に導入してきます。
かと思えば、「California English」ではバロック調のストリングスサウンドを取り入れてきたり、「Taxi Cab」ではミニマルなピアノを入れてきたりと、実に多彩な音楽性を繰り広げてきています。
しかし、全体としてバラバラといった感覚は受けません。VAMPIRE WEEKENDらしさは全体に貫かれており、アルバムとしての一体性はしっかりと感じられます。
一方で「Holiday」のような、前作から続くパンキッシュでポップな楽曲もしっかりと収録されており、前作で感じたVAMPIRE WEEKENDの魅力は本作でも健在。あくまでも、前作の延長線上にある作品ということを感じます。
前作で確立された、VAMPIRE WEEKENDらしさを生かしつつも、前作から大きな成長を遂げた傑作。今回の作品は、なんとビルボードチャートでも1位を記録したそうですが、それも納得の作品だったと思います。
最後の「I Think Up A Contra」は、幻想的な作風がスケール感も感じられ、大きな成長を遂げた彼らの、新作の最後を飾るにふさわしい作品。この曲のように、一回りも二周りも大きくなった彼ら。ひょっとしたら、彼ら、はじまった2010年代を代表するミュージシャンに・・・なるかも??
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Freedom/AKON
サウンドは今風のエレクトロ路線。テンポのよいR&Bが心地よいのですが、どこかリズムが独特。ちょっとアフリカ風だったり、ちょっとレゲエ風な部分を感じたりと、癖のあるリズムについつい惹きこまれます。彼の高音を生かした、独特なボーカルも、好き嫌いはわかれそうですが、インパクト十分でした。評価:★★★★★
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