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2010年2月22日 (月)

美里の歴史

Title:Song is Beautiful
Musician:渡辺美里

Song is Beautiful

渡辺美里デビュー25周年を記念してリリースされたのは、なんと豪華4枚組にも及ぶベストアルバム。それも、デビューシングル「I'm Free」から、現時点での最新シングル「始まりの詩、あなたへ」まで、全シングルをリリース順に収録した内容で、彼女の25年の歩みが、概観的にわかるアルバムになっています。

また、今回話題になったのは、1990年にリリースされた、佐野元春とのデゥエットシングル「Home Planet~地球こそ私の家~」がアルバムに初収録されたことでしょう。さらに、個人的には、1988年の、美里全盛期にリリースされながらも、いままでアルバム未収録だっただけに、いまひとつ影の薄かった「君の弱さ」(いい曲だと思うのですが・・・)が、初収録された点も、うれしかったです。

ただ、収録曲を見ると、Disc2までで十分だったかなぁ・・・なんてことも思ってしまったりもして・・・(^^;;

どうも初期、全盛期のシングルに比べると、90年代中盤以降のシングルって、勢いも落ちて、いまひとつ、という印象が否めないんですよね・・・。

そう思いながら、このアルバムを聴きすすんだのですが、こう並べて聴くと、最近のシングルも、80年代のシングルと比べて、メロディーという面では、極端に見劣りがするわけではないなぁ、ということを漠然と感じました。

例えば「My Love Your Love」あたりは純粋に名曲だと思いますし、大ブレイク直前のコブクロ小渕健太郎が提供した「YOU~新しい場所~」は、美里の大ファンらしい、往年の美里っぽいナンバーに仕上がっています。

まあ、もっとも、そこそこの水準レベルの曲が多く、小室哲哉の「ムーンライトダンス」「悲しいね」みたいなマイナーコード主体の切なく幻想的なナンバーや、岡村靖幸の「虹をみたかい」のような、ファンキーでロッキンなナンバーなどといった、ずばぬけた水準の名曲がほとんど産み出せていない、という点が、90年代以降の美里の凋落の原因のひとつかなぁ・・・なんてことも思ったりします。

ただ、それ以上に、全盛期の美里と最近の美里で差が大きいと感じられるのは、彼女が書く歌詞でした。

80年代の彼女が書く歌詞の世界は実に見事。思春期の微妙な恋愛感情や、それに伴う心理状況を、ドラマ性や風景描写をまじえながら、実に繊細に、かつ大胆に描ききっています。

「卒業できない恋もある」なんて、一言で胸がキュンとなってしまうキラーワードをいとも簡単に産み出してしまってますし、

「消し忘れたままでの伝言板
打ち水する若い駅員
まだ着いていないのにきみが見えるよ
逢えない淋しさのぶんだけ」

(「すき」より 作詞 渡辺美里)

のように、ふとした日常風景ともうすぐ恋人に逢えるワクワク感を見事にマッチさせ、夏の風景を鮮やかに描き出した作品は、かつては「夏といえば渡辺美里」といわれた理由が、歌詞の世界からもしっかりと裏づけられています。

ただ、これほど思春期の恋愛感情を見事に表現できた彼女が、90年代以降、大人の恋愛となると、かなり厳しく感じられます。ヘタに全盛期のイメージを引きずっているだけに、「夏灼きたまご」みたいな、ファンの間でも失笑を買うような曲までつくってしまったりして・・・。

ここ最近は、ようやく大人の雰囲気を作り出そうとする曲が増えてきたのですが、結局、童謡歌手だったり、ムード歌謡風だったり、いかにも「場末のキャバレーや田舎のイベントでどさ回りをする、昔の流行歌手」といった雰囲気になりつつあるのが、少々痛々しい・・・。

全盛期の美里よ、もう一度、とは思わないのですが、やはりファンとしては、もう一度、奮起してほしいなぁ、とも思ってしまいます。

全4枚組。ボリュームがありすぎる内容なので、ファン以外にはお勧めしがたい作品。かつてファンだった方で、ここ最近の動向も含めて、懐かしい彼女の作品に出会いたい、という方にはお勧めできる作品かな?渡辺美里というミュージシャンを知りたい!という方は、かつてのベスト盤「She loves you」か、「Lovin' You」「ribbon」あたりからどうぞ。

評価:★★★★

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