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2010年1月19日 (火)

もろともに あはれと思へ 山桜

Title:はなよりほかに
Musician:熊木杏里

はなよりほかに

もろともに あはれと思へ 山桜 花より外に 知る人もなし

百人一首第66番、前大僧正行尊の歌です。

熊木杏里の今回のアルバムタイトル「はなよりほかに」は、この歌から名づけられたタイトルだそうです。

この歌、その意味は

「(私がお前を愛しく思うように)一緒に愛しいと思っておくれ、山桜よ。この山奥では桜の花の他に知り合いもおらず、ただ独りなのだから。」

という意味だそうで、修行中のお坊さんが、その寂しさを詠んだ歌だそうです。

(以上、「小倉山荘発行『ちょっと差がつく百人一首講座』」参考)

ただ、見方によっては、ひとりの人を影から思う歌にも取れるこの歌のタイトルをつかった今回の作品は、ひとりの人を思う気持ち歌った曲が多く収録されていました。

例えば、インタビュー記事でも「君の名前」で相手を思う気持ちが歌われている点が指摘されていますし、「花言葉」では

「ねぇ いつだって いつだって
なんか迷ったら 一番星になってあげるよ
忘れずにいて下さい
あなたへのこの気持ちは 私の花言葉」

(「花言葉」より 作詞 熊木杏里)

おそらく結婚していく友達のことを思って歌った歌でしょうが、友人を素直に思う気持ちが、爽やかに歌われていますし、

「未来写真」でも

「未来写真 撮ってあげる
私がいるから
悲しみじゃなく 愛しさを
あなたにあげたいから ずっと」

(「未来写真」より 作詞 熊木杏里)

と、相手と一緒に未来へ歩んでいく気持ちを歌っています。

また、メロディーはバラードがメイン。アレンジもアコースティックのシンプルなアレンジがメインとなっています。

そのため、アルバム全体としてインパクトは薄め。ネガティヴに言ってしまえば、少々盛り上がりに乏しい、とも言えてしまうような内容でした。また、初期の作品であったような、フォークソングからの影響も薄め。まんま70年代フォークだよなぁ・・・という曲はあまりありませんでした。

ただ、それでも最後まで聴いていて、「飽きる」という印象は受けませんでした。逆にシンプルだったからこそ、歌詞が心に響いてきたともいえるでしょうし、また、シンプルでも最後まで聴かせることが出来るというのは、メロディーメイカーとしての彼女の実力と言えるかもしません。

CMソングやドラマの主題歌などにもたびたび使われている彼女の曲。このアルバムの出来の良さを聴くと、そろそろブレイクしそうな感じがするんだけどなぁ。いままで、要所要所に名曲はあったものの、アルバム全体で聴くと「もう一歩・・・」だった彼女ですが、本作はアルバム全体を通じて、聴き入ることの出来る作品になっていたと思います。それだけに、そろそろアルバム単位での根強いヒットが生まれそうな予感も・・・。

評価:★★★★★

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