友人にお勧めしやすい1枚
Title:I Got Rhythm?
Musician:大橋トリオ
前作「A BIRD」の紹介のところでも書いたのですが、ちょうど1年前に発売されたアルバム「THIS IS MUSIC」が、第1回CDショップ大賞の準大賞を受賞した彼。大賞の相対性理論や、同じく準大賞を受賞したPerfumeに比べると、その注目度の面では一歩劣る感がします。ただ、「CDショップ店員が選んだ売りたい、聴かせたい作品」という意味では、一番、広い層に薦めやすいミュージシャンではないでしょうか。
例えば、好きな子に「普段、何聴いているの?」と聞かれた時に、一番、CDを貸しやすいミュージシャンとでもいうべきでしょうか(笑)。
相対性理論は、ある種の癖が強いミュージシャンですし、Perfumeはやはり世間一般的にはアイドル。「音楽性が評価されているんだよ」と熱弁したところで、思いっきり引かれかねません。
それに対して大橋トリオは、ジャズ、ボサノヴァ、シティーポップなどの要素を上手く取り入れ、かつ、あくまでもポップにまとめあげていて、無駄なスノッブ臭は感じません。
少なくとも、お勧めとして彼の音楽を聴かせたら、はまるはまらない、社交辞令か否かは別として、10人中10人「いい音楽だね」と感想を返してくれそうな、そんな作品を聴かせてくれます。
前作からわずか半年でリリースされた彼の新作「I Got Rhythm?」は、そんな彼のセンスの良さが、さらに光る作品に仕上がっていました。
明るく、爽やかなピアノのリズムが全編にちりばめられているポップなナンバー。ストリングスやアコースティックギターが、爽やかな音楽に彩りを与えています。ジャズの要素も強く、「Here To Stay」や「EMERALD」のピアノには、ちょっとジャジーな雰囲気も感じますが、ジャズはあくまでも彼の音楽性を底辺で支えている「出汁」のような存在。必要以上に主張することなく、ジャジーと言われるイメージは薄く、あくまでもポップミュージックとしてまとめあげています。
今回の作品は「ダンス」をテーマとしたそうです。確かに、「sing,sing」みたいに、軽快なピアノを聴かせてくれるナンバーも多く、「VOODOO」みたいな、ちょっとファンキーな雰囲気も感じられる曲もあり、ライブ栄えがしそうな曲も多く収録していました。
本人はインタビューなどで「大橋トリオとダンスというイメージのギャップがおもしろいかなと思って作った」といっているのですが、ただ、軽快なピアノを聴かせてくれる大橋トリオの楽曲とダンスの相性は意外と良いのでは?そうも感じることの出来るアルバムでした。
もちろん後半では「ここにあるから」や「僕と月のワルツ」のような、しっとり聴かせるナンバーも収録されています。ここらへんのバランス感覚の良さとポピュラーセンスをもってすれば、もっともっとヒットを飛ばせそうなミュージシャンなんだけどなぁ。
いい意味で、より垢抜けたような印象も受けた作品。前述の通り、「CDショップ大賞」の受賞組では、ちょっと遅れをとった彼ですが、これからの飛躍が期待できそうです。
評価:★★★★★
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